秋の夜長に「ミライ」を考える?

今年の夏は、予報通り厳しい暑さの続く夏でしたね。残暑が厳しい日でも、爽やかな秋の風を感じると、「芸術の秋」「読書の秋」「スポーツの秋」…など少し腰を据えて何かに取り組み始めるのにはうってつけの季節だと感じます。今年の秋は「マネーの秋」も取り入れていただき、みなさまの家計がより実りあるものになるよう改めて考えてみませんか…?

そもそも家計管理をしているのは…?

「マネーの秋」を始めるにあたって、まず確認したいのは足元の家計の状況がどうなっているかの確認です。みなさまの家計の状況はいかがでしょうか?そもそも家計管理の担い手はどなたでしょうか?ミライ研が今年1月に実施したアンケート調査で、「世帯の家計管理の担い手」についてお伺いしました【図表1】。すると、27.2%(①+②)が夫主体、46.3%(④+⑤)が妻主体とメインの管理者を置いて管理、15.0%(③)は夫婦で共同して管理、10.8%(⑦)はそれぞれ個別管理といった結果になりました。

【図表1】世帯の家計管理の担い手(n=5,954/全年代平均)

(出所)「住まいと資産形成に関する意識と実態調査」(2022年)より三井住友トラスト・資産のミライ研究所作成
*「その他」の回答は除いた割合

みなさまの世帯はいかがでしょうか。取り組み方はそれぞれにせよ、今年度から「家計管理」は高校における金融教育でも必修の内容となっており、「“取り組まない”という選択肢だけはなしでお願いします!」と言いたいところです。

世界を見渡してみると…?

さて、家計管理を盤石にしていただいたうえで、一足飛びに資産形成に取り組むのではなく、「資産形成の計画」を立てることが重要だという点は、前回の清永研究員のコラムでお伝えの通りです。ただ、やはり「みんなは実際どんな感じなの…?」が気になるのが人間の性というものではないでしょうか。ここでは、日・米・欧それぞれの国において、家計のお金を様々な資産にどのような割合で置いているかについての調査をご紹介します【図表2】。

【図表2】家計の金融資産構成

(出所)日本銀行調査統計局「資金循環の日米欧比較」(2022年)
*「その他計」は、金融資産合計から「現金・預金」、「債務証券」、「投資信託」、「株式等」、「保険・年金・定型保証」を控除した残差。

日本の金融資産の構成は、現金・預金が54.3%、投資信託が4.5%、株式が10.2%となっています。米国は現金・預金13.7%、投資信託12.6%、株式39.8%、ユーロエリアは現金・預金34.5%、投資信託10.4%、株式19.5%という構成比ですので、日本の構成は現金・預金に大きく偏っていることがお判りいただけるかと思います(日本と諸外国の資産形成への取組み差については、こちらのミライコラムも是非ご覧ください)。

金融資産の構成の違いで何が変わってくる・・・?

それぞれの人によって「資産形成計画」は異なってくるため、家計の金融資産構成に「こうであれば正しい」という正解があるわけではありません。ただし、割合の違いによって、家計所得をどういった形で得ているかにも影響があります【図表3】。

【図表3】日米の家計所得の推移

(出所)金融庁「平成27事務年度金融レポート」
*勤労所得は被雇用者が実際に受け取る賃金・俸給(個人事業主が受け取る報酬は含まない)
*財産所得は金融資産による所得(利子・配当・保険)+不動産賃貸料(金融資産や不動産の譲渡益・含み益は含まない)
*赤線は、財産所得の勤労所得に対する比率(右軸)

米国の構成比であれば、結果的に家計の所得のうち、「働いて得られる所得(勤労所得)」と「金融資産から得られる利子・配当、および不動産賃貸料所得(財産所得)」がおよそ3:1で、一定程度はまさに「お金にも働いてもらっている」といえるかと思われます。しかし、日本においてはその比率は8:1程度になっており、勤労所得に偏りがあるといえます。
もちろん、この点に関してもいずれかが正解というわけではありませんが、少なくともみなさま自身がどういった割合が良いか考え、ご自身の「資産形成の計画」に合わせて選択しうることが大切かと思われます。秋の夜長、是非、実りある家計につながる「ミライ&マネー」について、じっくりと考えられることをおすすめいたします。

「三井住友トラスト・資産のミライ研究所」は、人生100年時代に適応した資産形成や資産活用に関する調査・研究を中立的な立場で発信することを目的として、2019年に三井住友信託銀行内に設置した組織です。人生100年時代を安心して明るく過ごすために、資産形成・資産活用に関する情報をホームページや書籍を通してお届けしています。

今週の執筆者矢野 礼菜やの あやな

三井住友トラスト・資産のミライ研究所 研究員
2014年に三井住友信託銀行入社。堺支店、八王子支店にて、個人顧客の資産運用・資産承継に関わるコンサルティングおよび個人顧客向けの賃貸用不動産建築、購入に係る資金の融資業務に従事。2021年より現職。

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