先月、日本銀行が長く続いたマイナス金利解除を発表したこともあり、住宅ローン関連では「金利」に関する報道を目にする機会が特に多くなっています。住宅ローンを研究テーマの一つとして掲げるミライ研としては見逃せませんが、最近では「借入期間」についても注目しておきたい動向があります。それは、従来よりも借入期間を長く設定できる金融機関が増えてきている点です。以前は、一般的に30年もしくは35年が最長の借入期間であったのに対し、現在では、一定の条件はあるものの、最長50年の貸出を行う金融機関も登場しています。

では実際に、世の中の人はどれくらいの期間で住宅ローンを借りているのでしょうか。ミライ研が本年1月に実施したアンケート調査で、住宅ローンを利用しているもしくは利用していた人に対して、「住宅ローンを借り入れた際、返済期間を何年に設定したか」についてお伺いしたところ、最も多かったのが「(30年以上)35年未満」の38.4%でした。また、30年以上の借入期間を設定された方は46.2%と、全体の半数弱という結果でした(図表1)。

図表1 住宅ローン借入時の設定返済期間

住宅ローン借入時の設定返済期間のイメージ図

*回答者:住宅ローンを利用している(住宅ローンがある:返済中)方もしくは住宅ローンを利用していた(住宅ローンで住宅を購入したが、返済完了した)方2,739名
(出所)三井住友トラスト・資産のミライ研究所「住まいと資産形成に関する意識と実態調査」(2024年)より作成

では、過去から現在において住宅ローン借入時の設定返済期間に変化はあるのでしょうか。同様の設問を、住宅を購入した時期(=住宅ローン借入時期とみなす)毎に確認したものが、(図表2)です。

図表2 住宅ローン借入時の設定返済期間(住宅購入年代別)

住宅ローン借入時の設定返済期間(住宅購入年代別)のイメージ図

*回答者:住宅ローンを利用している(住宅ローンがある:返済中)方もしくは住宅ローンを利用していた(住宅ローンで住宅を購入したが、返済完了した)方2,739名
*購入年代については、現在お住いの住宅を購入した年齢=住宅ローンの借入れ年齢と仮置きし、現在の年齢と照らし合わせて算出。また、購入時年齢については、5歳幅の選択肢で回答しているため、算出に当たっては各選択肢の中央年齢を採用
*グラフ内5.0%未満の値は記載省略
(出所)三井住友トラスト・資産のミライ研究所「住まいと資産形成に関する意識と実態調査」(2024年)より作成

1993年以前では、借入期間を30年以上に設定された方は21.7%であったのに対し、その割合は徐々に増加し、直近10年間(2014年~2023年)では60.9%と、およそ3倍に増えていました。返済比率(年収に占めるローン年間返済額の割合)はいずれの年代においても大きな差がみられないことから(図表3)、所得の伸び悩み、継続的な不動産価格の高騰を背景に借入金額は大きくしたい、しかし毎月の返済は一定額に抑えたいので長期で借りたい、というニーズが徐々に増加していたという点が見て取れます。

図表3 住宅ローン返済比率(住宅購入年代別)

住宅ローン返済比率(住宅購入年代別)のイメージ図

(出所)「住まいと資産形成に関する意識と実態調査」(2023年)
*定期・不定期を問わず取り組んでいること
*回答者数11,190名

では、借入期間の長さによって、返済はどのように変わってくるのでしょうか。借入金額・金利が同じ条件であれば、借入期間が長い方が月々の返済額は少なくなる半面、総支払い利息は多くなります(図表4)。

図表4 借入期間の長さによって変わってくるポイント

借入期間の長さによって変わってくるポイントのイメージ図

(出所)三井住友トラスト・資産のミライ研究所作成

少し前の第23回のコラムでは、「住宅ローンの負担感」や「住宅ローンの返済と資産形成との両立」について、返済比率別の状況をお伝えしました。ご覧いただいた通り、返済比率が低いほど、負担感は小さくなり資産形成との両立もしやすくなる傾向が見て取れました。とはいえ“返済期間を長期にすることで”返済比率を下げるのは、慎重な検討が必要です。

総支払い利息が多くなることはもちろんのこと、将来的な住まいの形(現在の住まいに住み続けるか、利便性や年齢に応じた住まいに住み替えるか/住み続けるとしたらリフォーム計画をどうするか/住み替えるとしたらその資金はどう準備するか)やその他のライフイベントを考えると、「おおよそ何歳頃までに住宅ローンを返済しておきたいか」という目安が見えてくるかと思います。

借入期間は、「毎月の返済額」と「完済しておきたい年齢」を踏まえたうえで検討することがポイントとなります。

《本資料は執筆者の見解を記したものであり、当社としての見通しとは必ずしも一致しません。本資料のデータは各種の情報源から入手したものですが、正確性、完全性を全面的に保証するものではありません。また、作成時点で入手可能なデータに基づき経済・金融情報を提供するものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。投資に関する最終決定はお客さまご自身の判断でなさるようにお願い申し上げます。》

「三井住友トラスト・資産のミライ研究所」は、人生100年時代に適応した資産形成や資産活用に関する調査・研究を中立的な立場で発信することを目的として、2019年に三井住友信託銀行内に設置した組織です。人生100年時代を安心して明るく過ごすために、資産形成・資産活用に関する情報をホームページや書籍を通してお届けしています。

今週の執筆者矢野 礼菜やの あやな

三井住友トラスト・資産のミライ研究所 研究員
2014年に三井住友信託銀行入社。堺支店、八王子支店にて、個人顧客の資産運用・資産承継に関わるコンサルティングおよび個人顧客向けの賃貸用不動産建築、購入に係る資金の融資業務に従事。2021年より現職。主な著作として、『安心ミライへの「金融教育」ガイドブックQ&A』(金融財政事情研究会、2023)がある。ウェルビーイング学会会員。三井住友信託銀行公式YouTubeチャンネル【篠原光×ミライ研スペシャル対談】『安心ミライへの「金融教育」ガイドブックQ&A』(※外部サイトへ遷移します。)にて書籍の読みどころや執筆の裏話を余すことなくお伝えしております!ぜひ、ご覧ください。

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