2025年3月

ネイチャー・インパクトファイナンス評価(要約)

ニッスイは世界26ヶ国にグループ会社91社を構え、漁業に加え養殖や加工食品の製造販売、水産物由来の化成品(EPA等)を用いた医薬品原料の生産供給や健康食品を展開するなど、水産資源をコアとするグローバルなバリューチェーンを通じた“食”を提供する総合食品企業である。2022年4月に2022年度から2024年度の3年間を対象とした中期経営計画を公表すると同時に、新経営理念体系と2030年長期ビジョン(Good Foods 2030)を掲げ、サステナビリティ活動を加速させている。

同社は、2030年長期ビジョンの中で掲げた「人にも地球にもやさしい食を世界にお届けするリーディングカンパニー」の実現に向け、社長を委員長、執行役員と社外取締役を委員、事務局をサステナビリティ推進部とする社長直轄のサステナビリティ委員会を設置し、年6回開催する等推進体制を構築している。

また、2016年度に特定したマテリアリティについて2023年度に見直しを実施した。見直しにあたっては、マテリアリティの位置づけを「ニッスイグループの持続的な成長と中長期的な企業価値向上(ミッションの体現・ビジョンの実現)に向けて優先的に取り組むべき経営上の重要課題」とし、それぞれ対応する推進組織を設置し、執行役員以上が責任者を務め経営視点で取り組むことで、持続可能な社会に向けて価値を創造するサステナビリティ経営を推進している。以上より、ニッスイは堅固なサステナビリティ体制を確立しており、適切なインパクト・マネジメント運営がなされていると当社は評価している。

なお、本評価は環境省の「インパクトファイナンスの基本的考え方」に基づき作成され、イー・アール・エム日本株式会社による専門評価書は本評価の一部を構成している。本評価では、ニッスイの自然に対するインパクト発現に向け以下の目標と指標(KPI)を設定した。

ネイチャー・インパクトファイナンス評価で設定した目標と指標(KPI)

当社は設定した目標と指標(KPI)に基づき、今後モニタリングを実施する予定である。

創出するインパクト 目標と指標(KPI)
持続可能な水産資源の確保 (a)
目標

2030年までに持続可能な調達比率100%

指標(KPI)

水産物の持続可能な調達比率

(b)
目標

特に絶滅の危険度の高い水産物に関しては、2030年までに資源回復への科学的かつ具体的な対策が取られない場合には調達を停止

指標(KPI)

絶滅危惧種(水産物)の調達量(トン)

上記KPIのモニタリング状況

創出するインパクト 目標と指標(KPI) 2024年度実績 2025年度実績 2026年度実績
持続可能な水産資源の確保 (a)
目標

2030年までに持続可能な調達比率100%

指標(KPI)

水産物の持続可能な調達比率

     
(b)
目標

特に絶滅の危険度の高い水産物に関しては、2030年までに資源回復への科学的かつ具体的な対策が取られない場合には調達を停止

指標(KPI)

絶滅危惧種(水産物)の調達量(トン)

     

専門評価書における「評価」と「提言」

イー・アール・エム日本株式会社は、専門評価書(2025年3月5日付)においてニッスイへの評価と提言を行っている。以下に一部を抜粋して記載する。

現状取組みについての肯定的評価

ENCOREやSBTNの各種ツール等の国際的に信頼性のある情報ソースに加え、自社事業による自然への影響に関するこれまでの検討内容を活用して、主要事業である漁業と養殖に関してマテリアルなインパクト・ドライバーを包括的に特定している

漁業における「資源利用(天然水産資源の直接採取)」というマテリアルなインパクト・ドライバーがもたらすネガティブ・インパクトの低減に向けて、適切なKPI及び妥当な目標水準を設定しており、インパクト改善の測定やモニタリングができる状態にある。また、当該ネガティブ・インパクトの低減(=地球規模で見たネイチャーポジティブに対するポジティブな貢献)に関して実効性がある具体的な取組の推進が期待される

将来的な取組課題

養殖における「水質汚染(残餌の沈殿・拡散、魚病の伝染・抗菌剤の使用)」や漁業における「海鳥・海獣類の混獲」等について、TNFDのセクターガイダンス等を参考にしたKPIを設定し、目標と合わせてインパクト改善の測定やモニタリングを進めて行く。それにより漁業(及び養殖の餌・種苗の確保)でみた「天然資源の直接採取」を含めて、マテリアルなインパクトをより包括的にカバーした形で改善取組状況を示すことができる

適宜ロケーション分析を実施し、特定された優先地域におけるインパクトの改善の方向性をより詳細な形で検討する

プレスリリース等

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