ネイチャー・インパクトファイナンスの取組み事例(ワタミ株式会社)
2026年3月
ネイチャー・インパクトファイナンス評価(要約)
ワタミグループ(以下、ワタミ)は「地球上で一番たくさんのありがとうを集めるグループになろう」というスローガンのもと「地球人類の人間性向上のためのよりよい環境をつくり、よりよいきっかけを提供すること」というミッションを掲げ、各事業で戦略を立て、事業活動を展開している。ワタミでは、自社グループで栽培した農産物(1次産業)を自社グループで加工(2次産業)し、お客様に提供する(3次産業)ことに加えて、環境負荷を軽減するための取り組みや再生可能エネルギー事業にも取り組むことで、再生可能エネルギーを利用した循環型6次産業モデルである「ワタミモデル」を構築し、SDGsの実現及び事業活動を推進していくとしている。
ワタミは2019年に、前述の「ワタミモデル」を通じて外食事業、宅食事業、農業、環境事業、海外事業、人材サービス業の各分野において、経済的・社会的・環境的ニーズの充足、従業員の幸せ、地域貢献などの持続可能な企業活動で、SDGsを達成することを目的とした「ワタミサスティナブル方針」を策定しており、毎月、社内取締役が参加するSDGs会議で、各事業で策定したタスクフォースの進捗状況の把握や課題解決策を報告している。加えて、3カ月に1回、取締役会にてSDGs推進本部長が全取締役にタスクフォースの進捗報告を行っている。報告内容を踏まえ、サスティナビリティ活動の成果を年に1回、会長よりマネジメントレビューをもらうことで、環境・社会問題へ取り組む体制を構築している。
また、ワタミはSDGsマテリアリティを特定するにあたり、バリューチェーンにおけるSDGsマッピングを行い、外部専門家からの意見を基に各事業部の影響領域を特定し、その後SDGs会議内で経営層と協議を行うというプロセスを経ている。
以上より、ワタミは堅固なサスティナビリティ体制を確立しており、適切なインパクト・マネジメント運営がなされていると当社は評価している。
なお、本評価は環境省の「インパクトファイナンスの基本的考え方」に基づき作成され、イー・アール・エム日本株式会社による専門評価書は本評価の一部を構成している。本評価では、ワタミの自然に対するインパクト発現に向け以下の目標と指標(KPI)を設定した。
ネイチャー・インパクトファイナンス評価で設定した目標と指標(KPI)
当社は設定した目標と指標(KPI)に基づき、今後モニタリングを実施する予定である。
| 創出するインパクト | 目標と指標(KPI) | |
|---|---|---|
| 陸域生態系の利用と変化 | (a) |
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| (b) |
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| (c) |
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上記KPIのモニタリング状況
| 創出するインパクト | 目標と指標(KPI) | 2025年度実績 | 2026年度実績 | 2024年度実績 | |
|---|---|---|---|---|---|
| 陸域生態系の利用と変化 | (a) |
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| (b) |
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| (c) |
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専門評価書における「評価」と「提言」
イー・アール・エム日本株式会社は、専門評価書(2026年3月17日付)においてワタミへの評価と提言を行っている。以下に一部を抜粋して記載する。
| 現状取組みについての肯定的評価 | ENCOREやSBTN HICL等の国際的に信頼性のある情報ソースに加え、自社事業による自然への影響に関する社内での検討内容を活用して、主要事業である農業・畜産(直接操業領域)及び外食・宅食事業のバリューチェーン上流(原料調達段階)に関してマテリアルなインパクト・ドライバーを特定している |
|---|---|
農業・畜産における「陸域生態系の利用と変化」というマテリアルなインパクト・ドライバーがもたらすネガティブインパクトの低減に向けて、適切なKPI及び妥当な目標水準を設定しており、インパクト改善の測定やモニタリングができる状態にある。また、当該ネガティブインパクトの低減(=地球規模で見たネイチャーポジティブに対するポジティブな貢献)に関して実効性がある具体的な取組の推進が期待される |
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| 将来的な取組課題 | 主要事業セグメントである外食及び宅食事業のバリューチェーン最上流の原料調達段階についても、自然への依存・影響分析を進め、マテリアルなネガティブインパクトがある原材料に関してはロケーション分析などを通して自然関連リスクをより詳細に把握し、適切な対応策を採る |
外食及び宅食事業の原材料調達(農業・漁業関連)における「陸域生態系の利用と変化」と「その他生物資源の利用」というインパクト・ドライバーに関して、適切なKPIを設定し、目標と合わせてインパクト改善の測定やモニタリングを進めて行く |
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農業・畜産(直接操業)における管理農場に関するKPI・目標について、“追加的な森林破壊ゼロ”という要素を明示する |
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管理農場の中でも有機農場に関して、面積情報(Extent)だけでなく、「生態系の質(Ecosystem Condition)」や「生物種(Species)」との繋がりを捉えたKPIや目標を追加的に設定し、よりネイチャーポジティブに資する活動であることを対外的に分かり易く示す |