ポジティブ・インパクト・ファイナンスの取組み事例(三菱地所株式会社)
2021年11月
ポジティブ・インパクト評価(要約)
三菱地所は、コマーシャル不動産事業、住宅事業、海外事業、投資マネジメント事業、設計監理・不動産サービス事業等を展開する総合不動産大手である。同社は、2020年に「長期経営計画2030」を策定し、同社グループの基本使命である「まちづくりを通じた真に価値ある社会の実現」と持続的成長の実現に向け、「社会価値向上」と「株主価値向上」の戦略を両輪に据えた経営を実践している。そこでは、「Sustainability(“時代が抱える”社会課題への解決策の提供)」と「Quality of Life(“時代の先を行く”サービスや体験の提供)」が価値提供の視点に据えられ、事業を通じた持続的な社会の実現が図られている。
三菱地所は「長期経営計画2030」において、同社の特定した7つのマテリアリティ(サステナビリティ経営上の重要課題)の内容を踏まえ、サステナブルな社会の実現に向けて4つの重要テーマを定めた「三菱地所グループのSustainable Development Goals 2030」を策定している(図表①)。同社はこれを、2050年のありたい姿を示した「三菱地所グループのSustainability Vision 2050」を達成するためのマイルストーンと位置づけ、各重要テーマについて機会・リスクを整理のうえ目標を設定している。三菱地所は上記目標の達成に向けて、各重要テーマに関する年度目標と取り組みを各事業グループ・機能グループごとの年次計画に盛り込み、同社執行役社長を委員長とする「サステナビリティ委員会」において、グループ全体の活動をPDCAサイクルでマネジメントしている(図表②)。また、目標内容や進捗状況に関しては、第三者機関による定期的なモニタリングが行われている。
本ファイナンスでは、三菱地所の事業活動全体に対する包括的分析が行われた。同社のサステナビリティ活動も踏まえ、インパクト領域につき特定のうえ「Environment-気候変動や環境課題に積極的に取り組むまちづくり」、「Diversity & Inclusion-暮らし方の変化と人材の変化に対応しあらゆる方々が活躍できるまちづくり」、「Innovation-新たな世界を生み出し続ける革新的なまちづくり」、「Resilience-安全安心に配慮し災害に対応する強靭でしなやかなまちづくり」の4項目のインパクトが選定された(図表③)。そして、各インパクトに対してKPIが設定された。
図表①:サステナビリティへの取り組み

図表②:サステナビリティ推進体制

図表③:ポジティブ・インパクト・ファインスで設定した目標と指標(KPI)
テーマ | 内容 | 目標と指標(KPI) | SDGs |
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Environment 気候変動や環境課題に積極的に取り組むまちづくり |
気候変動、廃棄物、エネルギーについてマネジメントされたまちづくり |
目標
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Diversity & Inclusion 暮らし方の変化と人材の変化に対応しあらゆる方々が活躍できるまちづくり |
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目標
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Innovation 新たな世界を生み出し続ける革新的なまちづくり |
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Resilience 安全安心に配慮し災害に対応する強靭でしなやかなまちづくり |
持続可能かつ強靭(レジリエント)で安心・安全なまちづくり |
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上記KPIのモニタリング状況
テーマ | 目標と指標(KPI) | 2021年度実績 | 2022年度実績 | 2023年度実績 | |
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1 | Environment 気候変動や環境課題に積極的に取り組むまちづくり |
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2017年度比▲24.0%(2,534,820t-CO2) (参考:新目標対比)
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2017年度比▲24.0%(2,534,820t-CO2) (参考:新目標対比)
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2019年度比▲48.0%(2,099,270t-CO2) |
2019年度比▲43.6%(2,277,376t-CO2) |
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30.8% |
51.4% |
55.4% |
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30.8% |
- |
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58.4% |
59.1% |
59.5% |
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▲28.2%(5.1kg/㎡) |
▲21.1%(5.6kg/㎡) |
▲9.8%(6.4kg/㎡) |
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2 | Diversity & Inclusion 暮らし方の変化と人材の変化対応しあらゆる方々が活躍できるまちづくり |
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要件を満たす木材利用比率100%を達成するため、三菱地所㈱が発注する新築工事に関し、施工者宛に本件木材の利用を見積要項書等で順守頂くよう依頼している。 |
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6.6% |
7.2% |
7.3% |
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- |
- |
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75.5% |
110.6% |
82.4% |
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98.7% ※特殊事情により1名が未取得となったもの。 |
100% |
100% |
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3 | Innovation 新たな世界を生み出し続ける革新的なまちづくり |
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ACT1(サステナブル・フード):「SUSTABLE~未来を変えるひとくち~」を2021年9月より全6回のプログラムで開催。 ACT2(気候変動と資源循環):服から服をつくるプロジェクト「BRING」(大丸有エリア内の複数拠点に不要になった衣類回収ボックスを設置し6ヶ月間で約500kgの衣類を回収し再資源化)、ソーラーシェアリングにみる未来のエネルギーの可能性を学ぶオンラインセミナー・視察会、九十九里浜でのプロギング等各種活動を実施。 ACT3(WELL-BEING):ACT5歩数チャレンジ(「毎日の歩数」と「SDGsの取り組みへの参加」をスコア化した個人戦を開催。延べ373名が参加。)、慶應義塾大学大学院前野教授と連携し「暮らす街の幸福度調査」を実施。 ACT4(ダイバーシティ&インクルージョン):2021年11月にD&Iの取組を一歩進めるためのAllyコミュニティ「E&Jラボ」設立。 ACT5(コミュニケーション):「大丸有SDGs映画祭2021」開催、国際芸術祭「東京ビエンナーレ2020/2021」アートプロジェクトと連携したSDGs啓発の取り組み。 |
ACT1(サステナブル・フード):昨年に引き続き「SUSTABLE2022~未来を変えるひとくち~」を全6回のプログラムで開催。 ACT2(気候変動と資源循環):衣類の回収活動「Re;POST」により、延べ約2,500名から総重量約1,350kgの衣類を回収。約88%が国内外でリユースし、焼却処分した場合のCO2排出量1,000kgの削減効果。 ACT3(ひとと社会のWELL):2022年5月から11月(8月を除く)の毎月計6回のプロギングイベントを開催。近隣エリアに拠点を持つ企業との連携を企画したことや平日夕方に開催したこと、三菱地所プロパティマネジメントが企画するエリアを訪れる方々へのおもてなしの取り組み「丸の内アンバサダー」と連携したこと等により取り組みは広がり、毎回約25名が参加し、毎回10㎏を超えるごみを収集。 ACT4(ダイバーシティ&インクルージョン):LGBTQの権利啓発の活動が行われる6月のPRIDE月間にちなみ、オリジナルのレインボーフラッグによる街の装飾と、LGBTQについて楽しみながら“丸の内”で「知る」イベントを開催。LGBTQについて分かりやすく解説したパネル展示や、期間限定「丸の内二丁目BAR」、DJイベント等を実施。トークセッションでは、セクシュアリティも生き方も多様なゲストから、過去から現在に至るまでの心境や体験をお話しいただき、みんなで「多様性とは何か」を楽しく知り、考える機会を提供。 ACT5(コミュニケーション):開催3年目となる「日経SDGsフェス大丸有2022」を対面・非対面のハイブリッドで開催。過去最高となる、257人もの講演者を迎え、5月と9月の12日間にわたり20のイベントを日経ホールと丸ビルホールで実施すると同時に日経チャンネルで配信。全体で4万人が参加・視聴。また、前年度に引き続き「大丸有SDGs映画祭2022」を開催し、初の屋外上映にも挑戦した。 |
ACT1(サステナブル・フード):昨年に引き続き「SUSTABLE2023~未来を変えるひとくち~」を全5回のプログラムで開催。 ACT2(気候変動と資源循環):衣類の回収活動「PASSTO」により、延べ約10,590名から総重量約2,400kgの衣類を回収。約90%が国内外でリユースし、焼却処分した場合のCO2排出量1,666kgの削減効果。 ACT3(ひとと社会のWELL):2023年6月から11月まで毎月計6回のプロギングイベントを開催。今年で3年目となるこのイベントは、徐々に認知度が高まり、1回あたりの参加人数が増えたことに加え、職場の仲間によるグループで参加する事例がふえたことが特色。全6回で、計225名が参加し、53.5㎏のごみを拾った。 ACT4(ダイバーシティ&インクルージョン):未来の多様性について考える イベント「E&Jフェス」を2日間にわたり開催。1日目にはトークイベントを開催。(当事者や有識者、先進的取り組みを進める企業、社会的発信に取り組む方などを招き、多様な働き方・生き方の実践のお話、企業の取り組み事例、「誤解の多いダイバーシティ経営」についてイベントを開催)2日目は、都内で初となるダイバーシティパレードを開催。大丸有エリアの就業者や来街者等にD&Iについて広く知っていただくことを目的に、ビジネスパーソンの“働き方”の歴史を「過去」「未来」に分けて表現。「過去パート」では明治から現代までの働き方の変遷をパネルや当時の服装等で紹介し、「未来パート」では、障がい者やLGBTQ等当事者団体、農福連携、パラアスリート、アライなど多様な人々が一堂に会し、多様な人が活躍できる社会“未来のアタリマエ”を表現。 ACT5(コミュニケーション):「日経SDGsフェス大丸有2023」を対面・非対面のハイブリッドで開催。211人の講演者を迎え、16のイベントを日経ホールと丸ビルホールで実施すると同時に日経チャンネルで配信。全体で1.8万人が参加・視聴。また、「大丸有SDGs映画祭2023」開催。全回満席を達成し(雨天による屋外から屋内への振替回を除く)計700名超が参加。 |
4 | Resilience 安全安心に配慮し災害に対応する強靭でしなやかなまちづくり |
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