ポジティブ・インパクト・ファイナンスの取組み事例(株式会社大和証券グループ本社)
2022年9月
ポジティブ・インパクト評価(要約)
大和証券グループは、残あり顧客口座数、預り資産残高ベースで業界2位の水準にある大和証券株式会社を傘下に有し、有価証券関連事業を中核とする投資・金融サービス業を営む金融グループの持株会社である。
大和証券グループは、2021年春、2030年に目指すべき姿を示した「2030Vision」および新中期経営計画”Passion for the Best” 2023を掲げた。『2030Vision』では、「貯蓄からSDGsへ」をコアコンセプトに、資金循環の仕組みづくりを通じたSDGsの実現を目指している(図表①)。なお、「中期経営計画“Passion for the Best”2023」は、『2030Vision』の実現に向けた当初3年間の戦略と位置付けている。経営戦略の根底にSDGsの観点を取り入れ、「クライアントファーストとクオリティ No.1の実現」と「ハイブリッド戦略による新たな資金循環の確立」という基本方針を継承し、さらに強化していく方針である。そして、DX推進が重要性を増していることから、「デジタルとリアルのベストミックスの追求」を3本目の柱に掲げている。これら3点を基本方針とし、お客様に寄り添い、「未来を共に創るベストパートナー~Be with you~」、となることをスローガンとしている(図表②)。
本PI評価では、大和証券グループの事業活動全体に対する包括的分析が行われた。同社のサステナビリティ活動も踏まえ、インパクト領域につき特定のうえ「①人生100年時代を誰もが豊かに過ごせる社会の実現」、「②社会を豊かにするイノベーションの促進」、「③脱炭素社会への移行の促進」、「④レジリエントな社会の実現」、「⑤ダイバーシティ&インクルージョン」の5項目のインパクトが選定された。そして、各インパクトに対してKPIが設定された(図表③)。
図表①:2030Vision

図表②:中期経営計画“Passion for the Best”2023

図表③:ポジティブ・インパクト・ファイナンスで設定した目標と指標(KPI)
テーマ | 内容 | 目標と指標(KPI) | SDGs |
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人生100年時代を誰もが豊かに過ごせる社会の実現 |
豊かな人生100年時代の実現に向けた家計の資産形成・保全のサポート
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社会を豊かにするイノベーションの促進 |
金融・資本市場を活用した新しい価値=イノベーションの提供
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脱炭素社会への移行の促進 |
カーボンニュートラル社会の早期の実現
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レジリエントな社会の実現 |
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ダイバーシティ& インクルージョン |
多様な人材の育成と働き方の実現 |
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上記KPIのモニタリング状況
目標と指標(KPI) | 2022年実績 | 2023年実績 | 2024年実績 | |||
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1 | 人生100年時代を誰もが豊かに過ごせる社会の実現 |
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2022年度(4Q)残高ベース収益比率:51.2% |
2023年度(4Q)残高ベース収益比率:43.0% |
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2 | 社会を豊かにするイノベーションの促進 |
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(a)デジタルとリアルのベストミックスの追求 |
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(b)ハイブリッド戦略による新たな資金循環の確立 |
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大和エナジーインフラ:新たな金融商品の組成を視野に入れ国内外の再生エネルギーPJへ新規投資融資を実行。 大和リアル・エステート・アセットマネジメント:大和証券グループ系列REITの運用資産を着実に積み上げ。 |
大和エナジーインフラ:(再生可能エネルギー分野でのキャピタル・リサイクリングモデルの推進)国内の太陽光発電投資案件、欧州のインフラストラクチャー投資案件の売却などを通じて、キャピタル・リサイクリングを推進。 大和リアル・エステート・アセットマネジメント:大和証券グループ系列REITの運用資産を着実に積み上げ。(24/3期1.459兆円) |
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3 | 脱炭素社会への移行の促進 |
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(a)事業活動に関わるネットゼロ推進 |
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中間目標としてまずは、グループの投融資ポートフォリオの排出量のなかで最も大きな割合を占める電力セクターのプロジェクトファイナンスにおける目標値を設定。 |
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(b)投融資ポートフォリオの脱炭素化に向けた取組み推進 |
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脱炭素に関する投融資先とのエンゲージメント強化に向けた取組みにつき、2023年度中の開示を予定。 |
電力セクターのプロジェクトファイナンスにおいて排出量が最も大きい事業は、北海道にある石炭火力発電事業であり定期的なエンゲージメントを実施。 |
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4 | レジリエントな社会の実現 |
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(a)脱炭素社会への移行等に貢献する新産業・企業への投資拡大 |
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(b)社会課題の解決に資する投資機会の提供 |
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5 | ダイバーシティ&インクルージョン |
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(a)女性の活躍推進 |
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2022年度の女性管理職比率:16.9% |
2023年度の女性管理職比率:18.4% |
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(b)デジタルIT人材の育成 |
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2022年度デジタルIT人材:92名 |
2023年度デジタルIT人材:204名 |
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(c)社員の「生産性」「活躍度」「働きがい」の最大化 |
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2022年度従業員満足度:95% |
2023年度従業員満足度:94% |
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