2022年8月

ポジティブ・インパクト評価(要約)

東急不動産ホールディングス(以下「東急不動産HD」)は、ありたい姿として「価値を創造し続ける企業グループへ」を掲げており、「私たちは、事業活動を通じて社会課題を解決し、ステークホルダーとともに、サステナブルな社会と成長を実現します」というサステナビリティビジョンのもと、サステナビリティ方針を策定し、価値創造を目指している(図表①)。

持株会社である東急不動産HDの下、東急不動産、東急コミュニティー、東急リバブル、東急住宅リース、学生情報センターの主要5社を中心に、①都市開発、②戦略投資、③管理運営、④不動産流通の4事業を展開している。
幅広い事業展開と長期持続的な顧客接点により、顧客のライフステージに合わせた商品・サービスをグループ全体で提供できることが強みとなっており、東急不動産HDはこれらのグループの強みに、「環境経営」(脱炭素社会、循環型社会、生物多様性への取り組みを通じた、環境を起点とした事業の拡大)と「DX」(省力化推進による創造的業務への転換、顧客接点の高度化による感動体験の創出、知的資産活用による新しい価値創造)を組み合わせ、多種多様な商品・サービスをハードとソフト一体の価値として提供していくことで、「価値を創造し続ける企業グループへ」というありたい姿の実現を図っている。

東急不動産HDは、2021年度にスタートした長期ビジョン「GROUP VISION 2030」で価値創造への取り組みテーマとして、6つのマテリアリティを特定している(図表②)。当該マテリアリティはありたい姿を実現するための価値創造への取り組みテーマとされており、東急不動産HDは、グループの幅広い事業ポートフォリオ、多様なアセットと多彩な顧客基盤、専門知識を有した人材などの強みを活かして、アウトプット(事業を通じた提供価値)として施設及びサービスを提供することで、インパクト(社会的価値)をもたらし、マテリアリティの実現を目指している。

東急不動産HDは、代表取締役社長直轄の「東急不動産ホールディングスサステナビリティ委員会」の下でサステナビリティ活動推進のための全体方針の策定が行われ、環境問題・社会問題に関するグループ横断的なマネジメントが行われる体制となっている(図表③)。

本PI評価では、東急不動産HDの事業活動全体に対する包括的な分析を行い、「暮らしの質の向上・共助コミュニティの形成」、「都市のレジリエンス」、「地球環境の保全」の3項目のインパクトを特定し、各インパクトについて目標及び指標(KPI)を設定した(図表④)。特定された3項目のインパクトの骨子は2021年3月及び2021年9月に取り組んだポジティブ・インパクト・ファイナンスから実質的に変更はないが、中期経営計画2025の策定等を踏まえ、目標及びKPIの一部が更新されている。

図表①:サステナビリティビジョン及びサステナビリティ方針

図表②:マテリアリティ

図表③:サステナビリティ推進体制

体制図

図表④:ポジティブ・インパクト・ファイナンスで設定した目標と指標(KPI)

テーマ 内容 目標と指標(KPI) SDGs
くらしの質の向上・共助コミュニティの形成

「ライフストーリータウン」、「ライフスタイル創造3.0」等の取り組みにより、時代とともに変化する社会課題を解決する

目標
  • ア.
    街づくりにおける時間軸・空間軸での価値創造により、生活の質向上、コミュニティの形成、ならびに地域経済に貢献する
  • イ.
    東急こすもす会アンケートによる、お客さま満足度を2030年度に90%以上とする
  • ウ.
    コミュニティ活性化施策を2021年度以降年間10件以上、2030年度に100件以上実施する
  • エ.
    「ライフスタイル創造3.0」に資する商品・サービスを2021年度以降年間10件以上、2030年度に100件以上提供する
指標(KPI)
  • ア.
    新しいライフスタイルの創造と幅広いビジネス領域での価値創出、地域の価値向上への取り組みの状況
  • イ.
    東急こすもす会アンケートお客さま満足度
  • ウ.
    コミュニティ活性化施策実施件数
  • エ.
    「ライフスタイル創造3.0」に資する商品・サービスの提供件数
3 すべての人に健康と福祉を
8 働きがいも経済成長も
9 産業と技術革新の基盤を作ろう
11 住み続けられるまちづくりを
17 パートナーシップで目標を達成しよう
都市のレジリエンス

災害に強い都市機能の整備

目標

地域社会/都市の安心・安全に貢献する

指標(KPI)

建築物の安心安全対策強化(大型・非住宅建築物の災害時帰宅困難者対応など)に関する取り組み状況

3 すべての人に健康と福祉を
11 住み続けられるまちづくりを
17 パートナーシップで目標を達成しよう
地球環境の保全

環境と共生した街づくりを実践する

  • (a)

    CO2削減への取り組み

    目標
    • 2050年CO2排出量(スコープ1・2・3)ネットゼロ
    • 2030年度CO2排出量(スコープ1・2・3)46.2%削減(2019年度比)
    • 2025年度に、CO2排出量(スコープ1・2)が、再生可能エネルギー発電量(持ち分比率換算)と森林保全クレジットを合計した「CO2削減貢献量」を下回る
    指標(KPI)
    • CO2排出量(スコープ1・2・3)
    • CO2減貢献量
  • (b)

    再生可能エネルギー利用の拡大

    目標

    東急不動産ホールディングス全体の事業活動で消費する電力を2050年までに100%再生可能エネルギーとする。マイルストーン目標として、2030年までに60%、2040年までに90%を目指す

    指標(KPI)

    東急不動産ホールディングス全体の事業活動で消費する電力に占める再生可能エネルギーの割合

  • (c)

    環境不動産認証の取得推進

    目標
    • 大型オフィスビル・商業施設における環境不動産認証取得率(CASBEE:A以上、DBJ:4つ星以上、BELS:4つ星以上)を、2030年度までに100%、2025年度までに約70%とする
    • ZEB/ZEH導入率(ZEB/ZEH Oriented相当またはそれを超える建物性能を有する東急不動産の分譲マンション・オフィス等の施設件数割合(着工ベース))を、2030年度までに100%、2025年度までに約50%とする
    指標(KPI)
    • 環境不動産認証取得率
    • ZEB/ZEH認証取得率
  • (d)

    水資源の適切な管理と利用

    目標

    2030年度まで毎年、水利用量を前年度比低減

    指標(KPI)

    事業拠点及び保有する不動産ポートフォリオにおける床面積あたりの水利用量

  • (e)

    廃棄物排出量の削減

    目標

    2030年度廃棄物量11%削減2019年度比

    指標(KPI)

    事業拠点及び保有する不動産ポートフォリオにおける床面積あたりの廃棄物量

  • (f)

    生物多様性の保全

    目標

    2030年森林保全面積3,000ha

    指標(KPI)

    森林保全面積

6 安全な水とトイレを世界中に
7 エネルギーをみんなに。そしてクリーンに
12 つくる責任、つかう責任
13 気候変動に具体的な対策を
15 陸の豊かさも守ろう

上記KPIのモニタリング状況

テーマ 目標と指標(KPI) 2021年度実績 2022年度実績 2023年度実績
1 くらしの質の向上・共助コミュニティの形成
目標

街づくりにおける時間軸・空間軸での価値創造により、生活の質向上、コミュニティの形成、ならびに地域経済に貢献する

広域渋谷圏の多様性を活かした価値創造として、現在推進している再開発事業において、以下取組を実施。東急プラザ表参道原宿もリニューアルを進めており、多様なヒト・モノ・コトが集うハイブリッド型の施設運営を推進。

  • 神宮前六丁目:自然と人工の共存
  • 渋谷駅桜丘口:国際都市渋谷を代表する複合施設
  • 代官山町:緑でつながる新たな「住・働・遊」

広域渋谷圏の魅力を高める取組として、「創造・発信・集積」の循環、エリアマネジメント、デジタル基盤構築がある。特に、現在推進している再開発事業においては、以下特徴的な取組が見られる。

  • Shibuya Sakura Stage:世界初のIOWN(Innovative Optical and Wireless Network)サービスを導入した街づくり。渋谷発のベンチャーを育成する企業支援施設も整備。
  • Forestgate Daikanyama:職・住・遊 近接のライフスタイルの提案。サステナブルな生活体験を提供するための活動拠点も整備。
  • 東急プラザ原宿「ハラカド」:ハラカド町内会と称して、入居予定のクリエイター等がイベントやコンテンツを配信する枠組みを構築予定。

広域渋谷圏における街づくりは、大型物件の竣工・開業に伴い運営フェーズが拡大。エリアや施設の継続的な価値向上を図るため、以下のようなハードとソフトの両輪で街づくりに取り組んでいる。

  • ハード面:Shibuya Sakura Stage(2023年11月竣工)は「働・遊・住」を兼ね備えた渋谷の新たなランドマークとして国際競争力の強化に資する都市機能を導入したほか、防災性向上、環境負荷低減、周辺地区との回遊性向上も実現する。ハラカド(2024年4月オープン)における新たなカルチャー発信、Forestgate Daikanyama(2023年10月にオープン)における新たなライフスタイルの提供も進めている。
  • ソフト面:創造・発信・集積の好循環を創出するべく、「価値創造力」…体験型コンテンツ開発やスタートアップ共創、「発信力」…運営施設を活用したメディア広告、「多様性」…ハラカド町内会や渋谷SAUNASによる共創・交流の場創出、など街の成長につながる基盤づくりを進めている。
指標(KPI)

新しいライフスタイルの創造と幅広いビジネス領域での価値創出、地域の価値向上への取り組みの状況

目標

東急こすもす会アンケートによる、お客さま満足度を2030年度に90%以上とする

94.7%
94.3%
92.8%
指標(KPI)

東急こすもす会アンケートお客さま満足度

目標

コミュニティ活性化施策を2021年度以降年間10件以上、2030年度に100件以上実施する

21件

17件(年間)

38件(累計)

26件(年間)

64件(累計)

指標(KPI)

コミュニティ活性化施策実施件数

目標

「ライフスタイル創造3.0」に資する商品・サービスを2021年度以降年間10件以上、2030年度に100件以上提供する

20件

15件(年間)

35件(累計)

25件(年間)

60件(累計)

指標(KPI)

「ライフスタイル創造3.0」に資する商品・サービスの提供件数

2 都市のレジリエンス
目標

地域社会/都市の安心・安全に貢献する

延床10,000㎡以上の物件については全件、BCP対応・避難訓練等の対策に取り組んでいる。

延床10,000㎡以上の物件については全件、BCP対応・避難訓練等の対策に取り組んでいる。

延床10,000㎡以上の物件については全件、BCP対応・避難訓練等の対策に取り組んでいる。

指標(KPI)

建築物の安心安全対策強化(大型・非住宅建築物の災害時帰宅困難者対応など)に関する取り組み状況

3 地球環境の保全
  • (a)

    CO2削減への取り組み

(a)CO2削減への取り組み
目標
  • 2050年CO2排出量(スコープ1・2・3)ネットゼロ
  • 2030年度CO2排出量(スコープ1・2・3)46.2%削減(2019年度比)
  • 2025年度に、CO2排出量(スコープ1・2)が、再生可能エネルギー発電量(持ち分比率換算)と森林保全クレジットを合計した「CO2削減貢献量」を下回る

スコープ1・2:257.9千t-CO2(2019年度比△9.0%)

スコープ3:1,667千t-CO2(2019年度比△16.0%)

CO2削減貢献量:268千t-CO2

スコープ1・2:139.9千t-CO2(2019年度比△50.6%)

スコープ3:1,597.1千t-CO2(2019年度比△10.9%)

CO2削減貢献量:236千t-CO2

スコープ1・2:
85.9千t-CO2
(2019年度比△69.7%)

スコープ3カテゴリー1・2・11:1,791.2千t-CO2(2019年度比△0.1%)

CO2削減貢献量:337千t-CO2

指標(KPI)
  • CO2排出量(スコープ1・2・3)
  • CO2削減貢献量
  • (b)

    再生可能エネルギー利用の拡大

(b)再生可能エネルギー利用の拡大
目標

東急不動産ホールディングス全体の事業活動で消費する電力を2050年までに100%再生可能エネルギーとする。マイルストーン目標として、2030年までに60%、2040年までに90%を目指す

4.0%
52.9%
84.1%
指標(KPI)

東急不動産ホールディングス全体の事業活動で消費する電力に占める再生可能エネルギーの割合

  • (c)

    環境不動産認証の取得推進

(c)環境不動産認証の取得推進
目標
  • 1

    大型オフィスビル・商業施設における環境不動産認証取得率(CASBEE:A以上、DBJ:4つ星以上、BELS:4つ星以上)を、2030年度までに100%、2025年度までに約70%とする

  • 2

    ZEB/ZEH導入率(ZEB/ZEH Oriented相当またはそれを超える建物性能を有する東急不動産の分譲マンション・オフィス等の施設件数割合(着工ベース))を、2030年度までに100%、2025年度までに約50%とする

  • 1

    35.0%

  • 2

    ZEB認証取得率:未集計 ZEH認証取得率:0%

  • 1

    48.7%

  • 2

    25.0%

  • 1

    65.0%

  • 2

    87.0%

指標(KPI)
  • 1

    環境不動産認証取得率

  • 2

    ZEB/ZEH認証取得率

  • (d)

    水資源の適切な管理と利用

(d)水資源の適切な管理と利用
目標

2030年度まで毎年、水利用量を前年度比低減

4,867千㎥(前年度比+7.3%)

5,087千㎥(前年度比+18.7%)

5,309千㎥(前年度比+7.5%)

指標(KPI)

事業拠点及び保有する不動産ポートフォリオにおける床面積あたりの水利用量

  • (e)

    廃棄物排出量の削減

(e)廃棄物排出量の削減
目標

2030年度廃棄物量11%削減(2019年度比)

原単位8.5kg/㎡(2019年度比△11.2%)

原単位7.4kg/㎡(2019年度比△22.5%)

原単位8.0kg/㎡(2019年度比△16.6%)

指標(KPI)

事業拠点及び保有する不動産ポートフォリオにおける床面積あたりの廃棄物量

  • (f)

    生物多様性の保全

(f)生物多様性の保全
目標

2030年森林保全面積3,000ha

2,031ha
2,086ha
2,145ha
指標(KPI)

森林保全面積

プレスリリース

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