ポジティブ・インパクト・ファイナンスの取組み事例(ユナイテッド・アーバン投資法人)
2023年3月
2024年2月評価更新
2025年6月評価更新
ポジティブ・インパクト評価(要約)
ユナイテッド・アーバン投資法人(以下、「UUR」)は、中長期にわたり安定した収益性を確保しうる不動産を、「本源的価値」を有する不動産と定義しており、「用途」と「投資地域」を限定しない、分散が図られた総合型ポートフォリオを目指すという投資方針の総合型不動産投資信託として、幅広い投資対象の中から個別不動産の「本源的価値」を見極めつつ厳選した物件に投資することにより、中長期的に安定した収益の確保を図っている(図表①)。
丸紅リートアドバイザーズ株式会社(以下、「MRA」)※1は、不動産投資信託の資産運用会社として、UURの資産運用業務を行っている。同社株主は、丸紅株式会社100%となっており、丸紅の社是「正・新・和」の精神に則り、役職員一人ひとりが環境・社会・ガバナンス(ESG)に対して高い意識を持って資産運用業務に携わるとともに、それらを通じUURの持続的な成長並びに投資主価値の極大化を実現していく方針である。
- UURのサステナビリティ方針
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UUR及びMRAでは、気候変動に対する現状認識を踏まえ、2012年に策定した「環境方針」を改め、2022年に「サステナビリティ方針」を策定した。環境、社会及び経済における課題解決及び新しい価値の創造への取組みを実践するための指針として定めた「サステナビリティ方針」では、気候変動への対応、環境負荷の低減と循環型社会の実現、持続可能な都市の実現及び地域社会への貢献、人権の尊重のほか、ステークホルダーとの連携・協働や社内体制の構築等についての取組み方針も明記している。特に、気候変動への対応については、持続可能性及び資源効率性の観点から資源・エネルギーの効率的な利用を積極的に推進し、温室効果ガスの削減に努めるとともに、環境に配慮した技術やシステムの導入等により脱炭素社会の実現に努めていくことを掲げている。
- UURの組織体制とマテリアリティ
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MRAは、サステナビリティ推進活動に係る施策等の検討・審議・決定、評価分析を行う組織として、サステナビリティ委員会(図表②)を設置している。サステナビリティ執行責任者である代表取締役 社長執行役員が委員長を務め、代表取締役 社長執行役員、常勤取締役、各部部長等が委員として参加し、年4回以上開催している。
また、UURは、不動産投資信託(J-REIT)として検討すべきESG課題をUURの資産特性や運用方針、外部のESG評価や社会動向等を考慮した上で、MRAのサステナビリティ委員会が外部専門家の意見を踏まえ抽出している。これらの課題のうち、特に取組みを強化すべき課題を「重要課題(マテリアリティ)」(図表③)として特定し、それぞれについて行動計画・目標の設定、成果のモニタリングを行い、次年度の行動計画・目標を適宜見直している。
本PI評価では、UURの保有不動産全体について、サプライチェーン及びインベストメントチェーンに対する包括的分析が行われた。この結果、「(1)気候変動対策の推進」、「(2)環境負荷低減」、「(3)入居者・テナントへの安心・安全・快適な空間の提供」の3項目の個別インパクトが特定された(図表④)。そして、各インパクトに対してKPIが設定された。今後、これら3項目のインパクトに係る上記KPI等に対して、モニタリングが実施される予定である。
※12023年12月1日付でジャパン・リート・アドバイザーズ株式会社は、丸紅リートアドバイザーズ株式会社(MRA)に商号変更を実施
図表①:UURの運用戦略

図表②:MRAのサステナビリティ推進体制

注1サステナビリティ委員会には資産運用会社の全部署の部長が委員として指名され、参加しています。
注2MRA又はUURと直接的な利害関係を有する又は間接的な相互作用関係にある機関、団体、企業又は個人をいいます。
注3テナント・取引先業者(管理(PM・BM)会社・エンジニアリング会社・物品提供者、金融機関等)。
図表③:重要課題(マテリアリティ)とそれに対して設定した行動計画・目標

図表④:ポジティブ・インパクト・ファイナンスで設定した目標と指標(KPI)
テーマ | 主な内容 | 主なKPI(指標と目標) | SDGs |
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気候変動緩和への取組み | 資源・エネルギーの効率的な利用を積極的に推進し、温室効果ガスの削減に努めるとともに、環境に配慮した技術やシステムの導入等により脱炭素社会の実現に努める。
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環境負荷低減 | リデュース(廃棄物の発生抑制や節水)、リユース(資源の再利用)及びリサイクル(廃棄物や水資源の再資源化)を推進することで、循環型社会の実現に努める。
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入居者・テナントへの安心・安全・快適な空間の提供 | テナントとの対話を重視し、物件価値の維持・向上に取り組む。
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上記KPIのモニタリング状況
テーマ | 目標と指標(KPI) | 2022年度実績 | 2023年度実績 | 2024年度実績 | |||
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当初 | 2024年2月更新 ※2023年度実績よりモニタリングいたします。 |
2025年6月更新 ※2024年度実績よりモニタリングいたします。 |
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1 | 気候変動緩和への取組み |
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(a)変更なし
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23.1%削減 |
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(b)変更なし
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(b)変更なし
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最高位のSクラスを8年連続で取得 |
Bクラス |
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(c)変更なし
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73.3%
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80.1% |
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(d)変更なし
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(d)変更なし
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57.0%
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52.2% |
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2 | 環境負荷低減 |
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変更なし
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変更なし
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水使用量(原単位・延床面積ベース):12.5%増加 |
水使用量(原単位・延床面積ベース):23.9%増加 |
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廃棄物量(無害・有害):6,187t(前年度対比▲1,731t) |
廃棄物量(無害・有害):5,207t(前年度対比▲980t) |
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3 | 入居者・テナントへの安心・安全・快適な空間の提供 |
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変更なし
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変更なし
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住居以外のテナントに実施。2023年度より、ヒアリング対象に住居テナントを追加し、全テナントへと拡大予定。 |
全テナント(オフィス・住居・ホテル・レジ・物流等)に実施。 テナントの満足度向上に資する取組みとして、リーガロイヤルホテル小倉ではホテル従業員の職場環境改善の一環として従業員食堂兼休憩室の改修工事を実施。 |