ポジティブ・インパクト・ファイナンスの取組み事例(株式会社竹中工務店)
2023年3月
ポジティブ・インパクト評価(要約)
株式会社竹中工務店(以下、「竹中工務店」)は、「建設事業(建築、土木)」、「開発事業」等を行う大手総合建設会社である。建築はそこで生を営む人たちを守る器であるとともに、社会の資産としてその時代の文化を後世に伝え継ぐものである、との思いを込め、竹中工務店は手掛けた建築物を「作品」と呼んでいる。
竹中工務店は、ステークホルダーとの対話を深め、社会課題を解決してサステナブル社会を実現することを示した「竹中グループCSRビジョン」と、同ビジョンを含む企業理念、品質経営基本方針の考え方を表現した「竹中グループメッセージ」を定めている。「品質経営」の推進と、CSRの行動指針である「企業行動規範」の実践を通じ、CSRビジョンの実現を図っている(図表①)。CSRビジョンを踏まえ、竹中工務店は企業活動を通じて取り組むべき課題として重要課題(マテリアリティ)を特定しており、2023年にはそのマテリアリティの見直しを行った(図表②)。マテリアリティは、5つのカテゴリーに分類され、それぞれ指標(KPI)と目標値(目標年)が設定されている。これらの取り組みを推進するため、副社長を委員長としたCSR推進中央委員会を設置しており、環境・気候変動に関わる事項、マテリアリティ、コーポレートレポートの内容など、地球環境を含むCSRに関する重要な方針及び計画を横断的に審議・立案している(図表③)。
本PI評価では、竹中工務店の事業活動全体に対する包括的分析が行われた。竹中工務店のサステナビリティ活動も踏まえ、インパクト領域につき特定のうえ「持続可能な建築・まちづくり」、「環境との調和」、「働き方・生産性改革」、「着実な生産プロセス」、「人権の尊重」の5項目のインパクトが選定された。そして、各インパクトに対してKPIが設定された(図表④)。今後、これら5項目のインパクトに係るKPIに対して、モニタリングが実施される予定である。
図表①:CSR方針体系

図表②:重要課題(マテリアリティ)の指標と目標

図表③:CSR推進体制

図表④:ポジティブ・インパクト・ファインスで設定した目標と指標(KPI)
テーマ | 主な内容 | 主なKPI(指標と目標) | SDGs |
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持続可能な建築・まちづくり | 感性を刺激する建築・まちづくりとサービス展開による文化醸成 |
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環境との調和 |
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働き方・生産性改革 |
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着実な生産プロセス |
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人権の尊重 | 人権の尊重 |
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上記KPIのモニタリング状況
目標と指標(KPI) | 2023年度実績 | 2024年度実績 | 2025年度実績 | |||
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1 | 持続可能な建築・まちづくり |
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(a)「日本の建築産業における最高峰」を目指す |
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(b)「まちづくり総合エンジニアリング企業」を目指す |
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10件 |
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2 | 環境との調和 |
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(a)脱炭素社会の実現 |
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39.2%増加 |
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(a)脱炭素社会の実現 |
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35.9%削減 |
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(b)生物多様性への配慮 |
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12件 |
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(c)資源循環と廃棄物削減 |
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94.9% |
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3 | 働き方・生産性改革 |
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(a)持続可能で生産性の高い建築プロセスの追求による、労働時間等の適切な労働条件の担保 |
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2.4%向上 |
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(a)持続可能で生産性の高い建築プロセスの追求による、労働時間等の適切な労働条件の担保 |
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3.2%向上 |
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(a)持続可能で生産性の高い建築プロセスの追求による、労働時間等の適切な労働条件の担保 |
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36.0% |
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(b)多様な人々の健やかで働きがいのある環境の実現を通じた、人材の確保と育成・定着(従業員) |
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36.4% |
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(b)多様な人々の健やかで働きがいのある環境の実現を通じた、人材の確保と育成・定着(従業員) |
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5.3% |
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4 | 着実な生産プロセス |
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(a)高品質で安全な建築の提供 |
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0件 |
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(a)高品質で安全な建築の提供 |
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98.5% |
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(b)公衆災害や労働災害のない作業所の実現 |
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0件 |
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(c)持続可能なサプライチェーンの実現 |
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100% |
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5 | 人権の尊重 |
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人権尊重の取り組みの推進 |
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2023年12月にLRQAサステナビリティ株式会社の冨田代表取締役を招き、同社活動に関するレビューを実施(1回)。 同社は、2022年度のレビューを踏まえ、特定したリスク課題に対する活動を推進(時間外労働の上限規制への対応に向けた周知活動、ハラスメント撲滅に向けた新たな研修等、海外工場労働・外国人労働者の実態調査等の実施)。 |
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