2023年9月

ポジティブ・インパクト評価(要約)

インフロニア・ホールディングス株式会社(以下、「インフロニア」)は2021年10月に前田建設工業株式会社(以下、「前田建設」)、前田道路株式会社(以下、「前田道路」)、株式会社前田製作所(以下、「前田製作所」)が経営統合し設立された持株会社である。インフロニアは主に建設・土木・舗装・機械・インフラ運営といった多岐にわたる事業を行う「総合インフラサービス企業」であり、インフラの企画提案といった上流から計画設計・建設といった中流、運営・維持管理といった下流に至るまで、ワンストップでのマネジメントを戦略として掲げている。

2021年10月の設立に際し、Vision(目指す未来)「どこまでも、インフラサービスの自由が広がる世界」、Mission(私たちの使命)「インフラストラクチャー・ビジネスの既成概念に挑み、イノベーティブなアイデアで、世界中に最適なサービスを提供する」、Value(私たちが約束する価値)「社会・地域の安全安心とサステナビリティ」を経営理念(図表①)として策定、その理念に基づくサステナビリティ方針として、「インフラサービスを取り巻く社会課題の解決に取り組み、自社の成長と企業価値向上に努め、良質なインフラサービスの提供とその社会的価値向上を図り、社会に貢献する企業」を掲げている。同方針を実現する体制として2022年度に、同社執行役及び各事業会社のCSR・環境担当役員にて構成される「サステナビリティ委員会」を設立し、ESGに係る取組を推進している(図表②)。

またインフロニアは、グループの持続的な成長と社会の持続的な発展の両立を目指し、インフラサービス事業を通じた社会課題への取組として3つ、事業基盤の強化として3つ、計6つをマテリアリティとして特定の上、それぞれにKPI(2030年度目標)を設定し、サステナビリティ委員会のもとグループ各社と共に取り組みを進めている(図表③)。

本評価では、インフロニアの事業活動全体に対する包括的分析を行った。同社のサステナビリティ活動も踏まえ、インパクト領域につき特定のうえ「環境配慮社会の実現」、「安全安心とより快適な社会の創造」、「価値創造人材と相互尊重」、「バリューチェーンの強化」の4項目のインパクトを選定した。これら4項目のインパクトはいずれも同社のマテリアリティに係るものであり、それぞれ設定したKPI(図表④)に基づき、今後モニタリングを実施する予定である。

図表①:経営理念

図表②:サステナビリティ推進体制

図表③:マテリアリティとサブ課題、中長期目標・KPIについて

マテリアリティ サブ課題 2030中長期目標(達成ビジョン) KPI(2030年度目標)

安全安心とより快適な社会の創造

インフラ運営事業の拡大(コンセッション事業を通じた社会課題解決への貢献)

ポートフォリオの充実と収益性拡大

請負と脱請負の営業利益比50:50

攻めの環境配慮社会の実現

再生可能エネルギーによる発電及び発電施設の建設・運営

再生可能エネルギー関連事業の拡大

開発した累積総発電量:100万MWh/年

バリューチェーンの強化

協力会社との連携強化/供給能力強化と生産性向上

協力会社の供給能力向上と担い手育成

建設キャリアアップシステム現場登録率:2023年度100%

守りの環境配慮社会の実現

バリューチェーン全体の温室効果ガス排出の削減

バリューチェーン全体の温室効果ガス排出量削減を実現する

  • スコープ1・2
    2030年度40%削減(2018年度比)2050年度排出実質ゼロ
  • スコープ2
    再生可能エネルギー(電力)利用率
    2030年度RE60
    2050年度RE100
  • スコープ3
    2030年度までに40%削減(2018年度比)

価値創造人財と相互尊重

グループ人財戦略の推進教育(研修の充実と推進)

それぞれの社員にとって必要な研修の完全受講を実現する

必要とされる研修への参加率100%

ガバナンスの強化

実効性あるガバナンス体制の構築

ステークホルダーから信頼されるガバナンス体制であること

  • 社外取締役比率:50%
  • 取締役会議長及び指名・報酬・監査委員長への独立社外取締役起用

図表④:ポジティブ・インパクト評価で設定した目標と指標(KPI)

テーマ 主な内容 主なKPI(指標と目標) SDGs
環境配慮社会の実現
  • 温室効果ガスの削減
  • 循環経済実現への貢献
  • 生物多様性の保全
  • (a)

    再生可能エネルギー事業の拡大

    目標

    2030年度までに開発した累計総発電量100万MWh/年

    指標(KPI)

    開発した再エネ発電所の累計総発電量(MWh/年)

  • (b)

    環境負荷低減に繋がる設備・商品の設計・施工・製造の推進

    目標
    • ア.

      2030年度までの木造・木質化建築における炭素固定量 2,000t-CO2/年

    • イ.

      2030年度までに設計施工非住宅案件のZEB採用率40%

    指標(KPI)
    • ア.

      木造・木質化建築における炭素固定量

    • イ.

      設計施工非住宅案件のZEB採用率

  • (c)

    バリューチェーン全体の温室効果ガス排出量の削減

    目標
    • ア.

      グループ全体の温室効果ガス排出量について、スコープ1,2排出量を2030年度までに40%削減、2050年度までに排出実質ゼロを実現。スコープ3排出量について、2030年度までに40%削減(2018年度比)

    • イ.

      再生可能エネルギー(電力)利用率を、2030年度にRE60、2050年度までにRE100を実現

    指標(KPI)
    • ア.
      • CO2排出削減量(スコープ1、2)
      • CO2排出削減量(スコープ3(カテゴリ1及びカテゴリ11))
    • イ.

      再生可能エネルギー(電力)利用率

  • (d)

    廃棄物ゼロに向けた取り組みと再生材の利用率向上

    目標
    • ア.

      新設工事における廃棄物の削減(前年度比改善/総量ベース)

    • イ.

      新設工事における再生材利用率向上(前年度比改善/総量ベース)

    指標(KPI)
    • ア.

      新設工事における廃棄物排出量

    • イ.

      新設工事における再生材利用率

  • (e)

    生物多様性の保全

    目標

    生物多様性と生態系サービスの維持に資する「地球への配当」の取組金額増(前年度比)

    指標(KPI)

    生物多様性と生態系サービスの維持に資する「地球への配当」の金額

7 エネルギーをみんなに。そしてクリーンに
9 産業と技術革新の基盤を作ろう
12 つくる責任、つかう責任
13 気候変動に具体的な対策を
15 陸の豊かさも守ろう
安全安心とより快適な社会の創造

安全安心・快適なインフラの提供

目標

顧客からの高評価獲得(具体的に以下)

  • 建築:顧客満足度調査:100点中80点以上
  • 土木:工事成績評点:100点中80点以上
  • 舗装:顧客満足度調査:100点中80点以上
  • 機械:顧客満足度調査:5段階中4以上
指標(KPI)

顧客評価

  • 建築:顧客満足度調査
  • 土木:工事成績評点
  • 舗装:顧客満足度調査
  • 機械:顧客満足度調査
9 産業と技術革新の基盤を作ろう
11 住み続けられるまちづくりを
価値創造人材と相互尊重

人材開発の推進

  • (a)

    グループ人材戦略の推進教育

    目標

    人事部主催研修の参加率100%

    指標(KPI)

    人事部主催研修の参加率

  • (b)

    労働者の就労環境・条件の改善/安全衛生の推進

    目標
    • ア.

      2030年度まで継続して、度数率0.6以下を維持(対象は前田建設)

    • イ.

      重大災害件数ゼロ

    指標(KPI)
    • ア.

      度数率(対象は前田建設)

    • イ.

      重大災害件数

  • (c)

    人材の多様性の受入れと活躍の場の拡大

    目標

    女性社員雇用率の向上(前年度比増)

    指標(KPI)

    女性社員雇用率

8 働きがいも経済成長も
バリューチェーンの強化

バリューチェーンの強化

  • (a)

    協力会社の供給能力向上と担い手育成

    目標

    前田建設において2023年度に建設

    キャリアアップシステム現場登録率を100%とする

    指標(KPI)

    前田建設における建設キャリアアップ

    システム現場登録率(建設キャリアアップシステムに登録している現場数/全現場数)

  • (b)

    建設現場の省力化、効率化、及びそれらに貢献する認定技術/商品の開発の推進

    目標
    • ア.

      2030年度までに、前田建設における一人当たり完工高を1.37億円/人(土木)、1.53億円/人(建築)とする。

    • イ.

      「認定技術」の定義について2024年9月末までに策定する。

    指標(KPI)
    • ア.

      前田建設における一人当たり完工高

    • イ.

      「認定技術」の定義策定

8 働きがいも経済成長も
9 産業と技術革新の基盤を作ろう

上記KPIのモニタリング状況

目標と指標(KPI) 2023年度実績 2024年度実績 2025年度実績
1 環境配慮社会の実現
  • (a)

    再生可能エネルギー事業の拡大

    目標

    2030年度までに開発した累計総発電量100万MWh/年

    指標(KPI)

    開発した再エネ発電所の累計総発電量(MWh/年)

54.6万MWh/年

  • (b)

    環境負荷低減に繋がる設備・商品の設計・施工・製造の推進

    目標
    • ア.

      2030年度までの木造・木質化建築における炭素固定量 2,000t-CO2/年

    • イ.

      2030年度までに設計施工非住宅案件のZEB採用率40%

    指標(KPI)
    • ア.

      木造・木質化建築における炭素固定量

    • イ.

      設計施工非住宅案件のZEB採用率

  • ア.
    炭素固定量:496t-CO2/年
  • イ.
    ZEB採用率:29%
  • (c)

    バリューチェーン全体の温室効果ガス排出量の削減

    目標
    • ア.

      グループ全体の温室効果ガス排出量について、スコープ1、2排出量を2030年度までに40%削減、2050年度までに排出実質ゼロを実現。スコープ3排出量について、2030年度までに40%削減(2018年度比)

    • イ.

      再生可能エネルギー(電力)利用率を、2030年度にRE60、2050年度までにRE100を実現

    指標(KPI)
    • ア.
      • CO2排出削減量(スコープ1、2)
      • CO2排出削減量(スコープ3(カテゴリ1及びカテゴリ11))
    • イ.

      再生可能エネルギー(電力)利用率

  • ア.

    CO2排出削減量

    • スコープ1,2:△29%
    • スコープ3:△47%
  • イ.
    再生可能エネルギー利用率:62%
  • (d)

    廃棄物ゼロに向けた取り組みと再生材の利用率向上

    目標
    • ア.

      新設工事における廃棄物の削減(前年度比改善/総量ベース)

    • イ.

      新設工事における再生材利用率向上(前年度比改善/総量ベース)

    指標(KPI)
    • ア.

      新設工事における廃棄物排出量

    • イ.

      新設工事における再生材利用率

  • ア.

    廃棄物排出量

    • 合計:83万t(前年度比△19万t)
    • 前田建設:51万t(前年度比△16万t)
    • 前田道路:31万t(前年度比△2万t)
    • 前田製作所:0.07万t(前年度比+0.03万t)
  • イ.

    再生材利用率

    • アスファルト:78%(前年度比+2%)
    • コンクリート:32%(前年度比+10%)
    • スチール:58%(前年度比+10%)
  • (e)

    生物多様性の保全

    目標

    生物多様性と生態系サービスの維持に資する「地球への配当」の取組金額増(前年度比)

    指標(KPI)

    生物多様性と生態系サービスの維持に資する「地球への配当」の金額

8百万円(前年度比+3百万円)

2 安全安心とより快適な社会の創造
目標

顧客からの高評価獲得(具体的に以下)

  • 建築:顧客満足度調査:100点中80点以上
  • 土木:工事成績評点:100点中80点以上
  • 舗装:顧客満足度調査:100点中80点以上
  • 機械:顧客満足度調査:5段階中4以上
指標(KPI)

顧客評価

  • 建築:顧客満足度調査
  • 土木:工事成績評点
  • 舗装:顧客満足度調査
  • 機械:顧客満足度調査
  • 建築:87点
  • 土木:81.2点
  • 舗装:工事部門89.1点、製品部門85.2点
  • 機械:3.9
3 価値創造人材と相互尊重
  • (a)

    グループ人材戦略の推進教育

    目標

    人事部主催研修の参加率100%

    指標(KPI)

    人事部主催研修の参加率

94.6%

  • (b)

    労働者の就労環境・条件の改善/安全衛生の推進

    目標
    • ア.

      2030年度まで継続して、度数率0.6以下を維持(対象は前田建設)

    • イ.

      重大災害件数ゼロ

    指標(KPI)
    • ア.

      度数率(対象は前田建設)

    • イ.

      重大災害件数

  • ア.
    度数率:0.5
  • イ.
    重大災害件数ゼロ
  • (c)

    人材の多様性の受入れと活躍の場の拡大

    目標

    女性社員雇用率の向上(前年度比増)

    指標(KPI)

    女性社員雇用率

16.0%(前年度比△1.3%)

4 バリューチェーンの強化
  • (a)

    協力会社の供給能力向上と担い手育成

    目標

    前田建設において2023年度に建設キャリアアップシステム現場登録率を100%とする

    指標(KPI)

    前田建設における建設キャリアアップシステム現場登録率(建設キャリアアップシステムに登録している現場数/全現場数)

100%

  • (b)

    建設現場の省力化、効率化、及びそれらに貢献する認定技術/商品の開発の推進

    目標
    • ア.

      2030年度までに、前田建設における一人当たり完工高を1.37億円/人(土木)、1.53億円/人(建築)とする

    • イ.

      「認定技術」の定義について2024年9月末までに策定する

    指標(KPI)
    • ア.

      前田建設における一人当たり完工高

    • イ.

      「認定技術」の定義策定

  • ア.

    一人当たり完工高

    • 土木:1.07億円/人
    • 建築:1.25億円/人
  • イ.
    「認定技術」の定義:検討中

プレスリリース

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