ポジティブ・インパクト・ファイナンスの取組み事例(東洋紡株式会社)
2023年9月
ポジティブ・インパクト評価(要約)
東洋紡は、フィルム事業、ライフサイエンス事業、環境・機能材事業、機能繊維・商事事業などを手掛ける高機能製品メーカーである。同社は、創業者の渋沢栄一が座右の銘の一つとした「順理則裕」の精神を原点としており、「順理則裕」は東洋紡の企業理念となっている。「順理則裕」とはすなわち、時代の変化とともに生じるさまざまな社会課題を解決し、世の中をゆたかにしていくこと、そして自らの成長も実現していくことであり、現代のCSV(Creating Shared Value:共有価値の創造)の考え方を先取りしたものと言える。同社は、創立140周年を迎えた2022年に、長期ビジョン「サステナブル・ビジョン2030」(図表②)および「2025中期経営計画」を策定した。長期ビジョン「サステナブル・ビジョン2030」は、企業理念「順理則裕」を基軸として、今後の事業環境の変化を想定した東洋紡グループの「2030年のありたい姿」と、サステナビリティ指標およびアクションプランを示すものである。同社は、サステナビリティに関する取り組みを推進するための会議体としてサステナビリティ委員会を設置している。サステナビリティ委員会は、社長を委員長とし、事業本部長、スタッフ部門担当役員が構成委員となっている。サステナビリティ委員会では、主に全社のサステナビリティ活動の進捗を確認するとともに、新たに取り組むべき課題について議論しており、討議内容や進捗状況について定期的に取締役会へ報告を行っている(図表③)。
本PI評価では、東洋紡の事業活動全体に対する包括的分析を行った。同社のサステナビリティ活動も踏まえ、インパクト領域につき特定のうえ「(1)従業員のウェルビーイング&サプライチェーンの人権」、「(2)健康な生活&ヘルスケア」、「(3)スマートコミュニティ&快適な空間」、「(4)脱炭素社会&循環型社会」の4項目のインパクトテーマを選定。そして、各インパクトに対してKPIを設定した。インパクト(1)~(4)および各KPIは、いずれも同社のマテリアリティ(図表④)に係るものであり、インパクト(1)のKPIは重大災害数・製品事故件数・CSR調達アンケートの回収率等、インパクト(2)のKPIは感染症診断薬等の提供による検査回数等、インパクト(3)のKPIはDXを支える商品群の販売量、インパクト(4)のKPIはGHG排出量等である(図表⑤)。今後、これら4項目のインパクトに係る上記KPI等に対して、モニタリングを実施していく予定である。
図表①:サステナビリティ方針

図表②:サステナブル・ビジョン2030の概要

図表③:サステナビリティ推進体制

図表④:マテリアリティ

図表⑤:ポジティブ・インパクト評価で設定した目標と指標(KPI)
テーマ | 主な内容 | 主なKPI(指標と目標) | SDGs |
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従業員のウェルビーイング&サプライチェーンの人権 |
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健康な生活&ヘルスケア | 感染症疾患の減少、透析患者のQOL向上 |
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スマートコミュニティ&快適な空間 | デジタル社会実現への貢献 |
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脱炭素社会&循環型社会 | 事業活動を通じた脱炭素社会及び循環型社会の実現 |
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上記KPIのモニタリング状況
目標と指標(KPI) | 2023年度実績 | 2024年度実績 | 2025年度実績 | ||
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1 | 従業員のウェルビーイング&サプライチェーンの人権 |
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2 | 健康な生活&ヘルスケア |
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400万回/年 |
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|
25万人/年 |
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3 | スマートコミュニティ&快適な空間 |
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1.51倍 |
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4 | 脱炭素社会&循環型社会 |
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13% |