ポジティブ・インパクト・ファイナンスの取組み事例(株式会社ニッスイ)
2023年3月
ポジティブ・インパクト評価(要約)
ニッスイは世界26ヶ国にグループ会社89社を構え、漁業、養殖や加工食品の製造販売、水産物由来の化成品(EPA等)を用いた医薬品原料の生産供給、健康食品の開発・製造・販売など、水産資源をコアとするグローバルなバリューチェーンを通じた“食”を提供する総合食品企業である。
ニッスイは2022年4月に2022年度から2024年度の3年間を対象とした中期経営計画を公表すると同時に、新経営理念体系と2030年長期ビジョン(Good Foods 2030)を掲げている(図表①)。同社は、2030年長期ビジョンの中で掲げた「人にも地球にもやさしい食を世界にお届けするリーディングカンパニー」の実現に向け、社長を委員長、執行役員と社外取締役を委員、事務局をサステナビリティ推進部とする社長直轄のサステナビリティ委員会を設置している(図表②)。また、2016年にサステナビリティに関するマテリアリティを特定し、2022年には2030年長期ビジョンの公表と同時に、マテリアリティの中でも特に重視している項目を「重点テーマ」として特定し、2030年度における定量目標について見直しを実施するなどサステナビリティ活動を加速させている(図表③)。
本PI評価では、ニッスイの事業活動全体に対する包括的分析を行った。ニッスイのサステナビリティ活動も踏まえ、インパクト領域につき特定のうえ「①健康課題の解決」、「②持続可能な調達」、「③気候変動への対応と海洋環境の保全」、「④多様な人財の活躍」の4項目のインパクトを選定し、各インパクトに対してKPIを設定した(図表④)。インパクト4項目はいずれもニッスイのマテリアリティに係るものであり、インパクト①は健康領域商品の拡大を通じた健康的な生活への貢献、インパクト②は持続可能な調達、サプライヤーアセスメントを通じた持続可能な水産資源の利用及び調達の推進、インパクト③はCO2排出量、プラスチック、フードロスの削減を通じた気候変動への対応と環境保全、インパクト④は従業員エンゲージメント向上、ダイバーシティ&インクルージョン推進を通じた多様な人財の活躍に係るインパクトである。今後、これら4項目のインパクトに係る上記KPI等に対して、モニタリングを実施する予定である。
図表①:2030年長期ビジョン(Good Foods 2030)

図表②:サステナビリティ推進体制

図表③:重点テーマ及びサステナビリティ中長期目標

図表④:ポジティブ・インパクト評価で設定した目標と指標(KPI)
テーマ | 内容 | 目標と指標(KPI) | SDGs |
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健康課題の解決 | 安全・安心で健康的な生活に貢献する |
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持続可能な調達 | 豊かな海を守り、持続可能な水産資源の利用と調達を推進する |
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気候変動への対応と海洋環境の保全 | 豊かな海を守り、持続可能な水産資源の利用と調達を推進する |
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多様な人財の活躍 | 社会課題に取り組む多様な人財が活躍できる企業を目指す |
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上記KPIのモニタリング状況
目標と指標(KPI) | 2022年度実績 | 2023年度実績 | 2024年度実績 | |||
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1 | 健康課題の解決 |
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健康課題の解決 |
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1.0倍 | 1.0倍 | |||
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2 | 持続可能な調達 |
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(a)水産資源の持続可能な利用 |
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(b)サプライヤーにおける人権尊重への対応 |
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ニッスイ個別の1次サプライヤーアセスメント比率22%。2024年度目標としてニッスイ個別の1次サプライヤーアセスメント比率100%を掲げている。 |
ニッスイ個別の1次サプライヤーアセスメント比率92% |
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3 | 気候変動への対応と海洋環境の保全 |
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(a)2050年カーボンニュートラル実現 |
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▲12.1%削減 | ▲6.3%削減。グループ会社の経営統合等による、事業拡大が主な要因。 | |||
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(b)プラスチック使用量の削減 |
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(c)フードロスの削減 |
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4 | 多様な人財の活躍 |
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(a)個人と組織の成長のためのエンゲージメント |
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従業員エンゲージメントスコア1%向上 | 従業員エンゲージメントスコア11.6%向上 | |||
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(b)ダイバーシティ&インクルージョンの推進 |
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女性幹部職比率6.8% | 女性幹部職比率6.6% | |||
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