ポジティブ・インパクト・ファイナンスの取組み事例(日本ハム株式会社)
2024年2月
ポジティブ・インパクト評価(要約)
日本ハム株式会社(以下、「日本ハム」とし、また、日本ハム及び日本ハムの連結子会社を総称して「ニッポンハムグループ」とする)は、1942年創業の「徳島食肉加工場」を前身とし、近時はグループ売上高が1兆円を超え、国内有数の事業規模を有する食品メーカーである。ニッポンハムグループの事業セグメントは、加工事業本部、食肉事業本部、海外事業本部、ボールパーク・その他事業から構成され、売上構成比では食肉事業本部がグループ全体のほぼ半分を占める。加工事業本部では、ハム、ソーセージ、加工食品、乳製品、水産品等の開発、製造、販売を行っている。食肉事業本部では、畜産物の生産飼育から、処理、加工、物流、販売まで一貫して行う、「バーティカル・インテグレーション・システム」を基盤として、国内外からの食肉調達網、フード会社による販売網を構築し、国内では食肉取扱シェアの約2割を占める。また、海外事業本部を中心に海外展開も進めており、アジアや欧州、米州、豪州等で、牛・鶏の飼育及び生産、各畜種のトレーディング、加工品の製造・販売等の事業を展開し、各国・地域の食文化や価値観・多様性に対応した製品・サービスを提供している。食品関連以外では、ボールパーク・その他事業において、プロ野球球団の経営の他、「エンタメ事業」「ウエルネス事業」「サステナブル事業」の3つの領域で、D2Cの新規事業を展開している。
ニッポンハムグループは企業理念の一つに「わが社は、『食べる喜び』を基本テーマとし、時代を画する文化を創造し、社会に貢献する。」を掲げており、かかる理念の実現に向けて、優先的に解決すべき社会課題を、2021年2月に「5つのマテリアリティ(重要課題)」として特定している(図表①)。特定にあたっては、社会からの要請、ニッポンハムグループの事業環境を踏まえつつ、ステークホルダーの視点と自社視点の両面から評価・検討を行っており、サステナビリティ委員会での議論を経て、取締役会にて決定されている(図表②)。また、各マテリアリティについて、それぞれ取り組み方針と施策・指標が策定されており、進捗評価・改善策の検討等、PDCAサイクルを回すことで実効性が確保されている。
また、上述のマテリアリティ特定と並行して、企業理念の実現に向けたマイルストーンとして、2021年3月に「Vision2030」“たんぱく質を、もっと自由に。”を策定している。これは2030年における「ありたい姿」を描いたもので、これまでの提供価値である「安全・安心」「おいしさ」に加え、常識にとらわれない自由な発想でたんぱく質の可能性を広げ、社会環境や人々のライフスタイルの変化に対応する多様な食シーンを創出し、毎日の幸せな食生活を支え続けたいという思いが込められたものである(図表③)。
本評価では、ニッポンハムグループの事業活動全体に対する包括的分析を行った。ニッポンハムグループのサステナビリティ活動も踏まえ、インパクト領域につき特定のうえ「(1)たんぱく質の安定調達・供給」、「(2)食の多様化と健康への対応」、「(3)持続可能な地球環境への貢献」の3項目のインパクトを選定した。これら3項目のインパクトは、いずれもニッポンハムグループのマテリアリティに係るものであり、それぞれ設定したKPI(図表④)に基づき、今後モニタリングを実施する予定である。
図表①:マテリアリティ

図表②:サステナビリティ推進体制

図表③:「Vision2030」と価値創造プロセス


図表④:ポジティブ・インパクト・ファイナンスで設定した目標と指標(KPI)
テーマ | 内容 | 目標と指標(KPI) | SDGs |
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たんぱく質の安定調達・供給 |
持続可能なたんぱく質の供給
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食の多様化と健康への対応 |
QOL向上と健康に資する食糧へのアクセス確保
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持続可能な地球環境への貢献 |
CO2排出量の削減、廃棄物排出量の削減、水使用量の削減、環境保全、人権の尊重
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上記KPIのモニタリング状況
テーマ | 目標と指標(KPI) | 2023年度実績 | 2024年度実績 | 2025年度実績 | ||
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1 | たんぱく質の安定調達・供給 |
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(a)アニマルウェルフェアに配慮した取り組みの推進 |
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9.5% | ||||
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(b)植物由来のたんぱく質商品の拡充拡販 |
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20.4億円 | ||||
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2 | 食の多様化と健康への対応 |
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(a)食物アレルギー関連商品の拡充 |
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14億円 | ||||
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(b)認知機能を改善する新たな素材の研究と商品化 |
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194万食 | ||||
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3 | 持続可能な地球環境への貢献 |
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(a)化石燃料由来のCO2排出量の削減 |
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(b)廃棄物排出量の削減、リサイクル率の向上 |
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(c)水使用量の削減 |
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(d)認証パーム油への切り替え |
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0% | ||||
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