ポジティブ・インパクト・ファイナンスの取組み事例(三菱重工業株式会社)
2024年3月
ポジティブ・インパクト評価(要約)
三菱重工業は、三綱領に基づき制定された「社是」の精神にのっとり、社業を通じて社会の進歩に貢献するものづくり企業として、社会・産業インフラを支える製品・技術を世界に提供している。環境問題をはじめとする地球規模の課題解決に向けて、同社の製品・技術による貢献のみならず、事業プロセス全体における各種活動を通じてさまざまな社会的課題の解決に取り組み、事業と連動したCSR(企業の社会的責任)を推進している。また、多様なステークホルダーに配慮した事業活動を展開し、得られた利益をすべてのステークホルダーへ最適に還元するとともに、卓越した製品・技術の提供を通じて、人と地球の確かな未来、「サステナブル(持続可能)な社会」を実現することを基本としている。
三菱重工グループ社員の共通の心構えとなる「CSR行動指針」は、「社業を通じて社会の進歩に貢献する」とCSRの理念が謳われている同社社是を、社員が常に念頭に行動する上で、具体的にイメージしやすい形にしたものである。その他、サステナビリティ・CSRに関する方針として、多様な経歴、国籍、文化を持つ同社グループ社員にとっての共通の行動規範としての「三菱重工グループグローバル行動基準」、環境についての「環境基本方針」および「行動指針」、人権についての、「三菱重工グループ人権方針」等を策定している(図表①)。
三菱重工業は、国際社会や機関投資家等から企業に対して求められる環境・社会・経済の持続可能性に配慮するとともに、現代社会が抱える課題や価値観を軸としたサステナビリティ経営体制をより一層強化するため、2021年10月1日付で、従来のCSR委員会を「サステナビリティ委員会」に発展、改組するとともに、新たに「マテリアリティ推進会議」を設置した。サステナビリティ委員会は、CSO(サステナビリティ担当役員)を委員長とし、副社長、GC、CFO、CTO、HR担当役員、グループ戦略推進室長を委員として構成され(議題に応じてドメイン・セグメントの担当役員がメンバーとして招集される)、ESG・サステナビリティ推進体制の確立に向けて、ESGの取り組みに関する基本方針等、サステナビリティを巡る課題への対応についての審議・決定並びにその関連諸活動を推進している。また、マテリアリティ推進会議は、CEOを議長とし、マテリアリティの目標実現に向けた事業活動を推進しており、社会課題の解決を通じて企業価値を向上させ、中長期的に成長していくため、三菱重工業が特定した5つのマテリアリティごとに責任者と取りまとめ部門を持つ分科会を設置し、マテリアリティの目標実現に向けた事業活動をフォローするとともに、事業部門へ必要な対応を指示しており、具体的な事業活動とマテリアリティの連関性を高めている(図表②)。
三菱重工業は、社会課題の解決を通じて企業価値を向上させ中長期的に成長していくために、2020年度に同社が取り組んでいくべきマテリアリティの特定を行い、「脱炭素社会に向けたエネルギー課題の解決」、「AI・デジタル化による社会の変革」、「安全・安心な社会の構築」、「ダイバーシティ推進とエンゲージメントの向上」、「コーポレート・ガバナンスの高度化」の5項目に絞り込んだ(図表③)。特定したマテリアリティは、中期経営計画(2021事業計画)に反映しており、各マテリアリティは、進捗モニタリング指標(KPI)で進捗を管理し、着実なPDCAを実践している。
本評価では、三菱重工業の事業活動全体に対する包括的分析を行った。同社のサステナビリティ活動も踏まえ、インパクト領域につき特定のうえ「脱炭素社会実現への貢献」、「無人化・省人化への貢献」、「ダイバーシティの推進」の3項目のインパクトを特定した。これら3項目のインパクトはいずれも同社のマテリアリティに係るものであり、それぞれ設定したKPI(図表④)に基づき、今後モニタリングを実施する予定である。
図表①:サステナビリティ方針

図表②:サステナビリティ推進体制

図表③:マテリアリティ

図表④:ポジティブ・インパクト評価で設定した目標と指標(KPI)
テーマ | 本テーマが創出するインパクト | 目標と指標(KPI) | SDGs |
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脱炭素社会実現への貢献 | GHG排出量の削減 |
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無人化・省人化への貢献 | 無人化・省人化 |
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ダイバーシティの推進 | 多様な人材による新たな価値創出 |
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上記KPIのモニタリング状況
テーマ | 目標と指標(KPI) | 2023年度実績 | 2024年度実績 | 2025年度実績 | ||
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1 | 脱炭素社会実現への貢献 |
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(a)CO2排出削減 |
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44%削減(2014年比)
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(b)バリューチェーン全体を通じたCO2排出削減 |
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38%削減(2019年比)
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2 | 無人化・省人化への貢献 |
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(a)製品・事業/インフラの無人化・省人化 |
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3 | ダイバーシティの推進 |
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(a)多様な人材による新たな価値創出 |
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