ポジティブ・インパクト・ファイナンスの取組み事例(東京建物株式会社)
2024年5月
ポジティブ・インパクト評価(要約)
東京建物株式会社(以下「東京建物」)は、1896年(明治29年)に安田善次郎氏により設立された旧安田財閥系の総合不動産会社であり、東京都心部でオフィスビル賃貸を展開するビル事業と分譲住宅や賃貸住宅を展開する住宅事業が収益の柱となっている。さらに不動産流通事業や駐車場事業等のアセットサービス事業、ホテル・ゴルフ場・温浴施設などのリゾート事業に加え、保育事業、ファンド事業、海外事業なども展開している。
東京建物は、企業理念「信頼を未来へ」のもと、長期ビジョンとして「次世代デベロッパーへ」(図表①)を発表し、サステナブルな社会の実現に向けた様々な課題解決のために、デベロッパーが果たす役割も大きく変わるべきだと考え、事業を通じて「社会課題の解決」と「企業としての成長」をより高い次元で両立することで、すべてのステークホルダーにとっての「いい会社」を目指している。
長期ビジョンの達成に向けて、14のマテリアリティ(事業との関連性が高い重要課題)(図表②)を特定し、関連するSDGsへ貢献をしながら、自社の企業価値向上とサステナブルな社会の実現を図るとしている。各マテリアリティは、進捗モニタリング指標(KPI)で進捗を管理し、サステナビリティ委員会で目標実現に向けた事業活動をフォローと適切な指示をし、着実なPDCAを実践している(図表③)。
本PI評価では、東京建物の事業活動全体に対する包括的分析を行い、サステナビリティ活動も踏まえ、インパクト領域につき特定のうえ「(1)「場の価値」と「体験価値」の創出」、「(2)地球環境との共生」、「(3)価値を創造する人材、サステナリビリティ経営の実現」の3項目のインパクトを特定し、各インパクトについて目標及び指標(KPI)を設定した(図表④)。
図表①:同社グループ長期ビジョン
図表②:マテリアリティ
図表③:ESG経営体制
図表④:ポジティブ・インパクト・ファイナンスで設定した目標と指標(KPI)
| テーマ | 内容 | 目標と指標(KPI) | SDGs |
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| 「場の価値」と「体験価値」の創出 |
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| 地球環境との共生 |
脱炭素社会と循環型社会の構築
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| 価値を創造する人材、サステナビリティ経営の実現 |
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上記KPIのモニタリング状況
| テーマ | 目標と指標(KPI) | 2023年度実績 | 2024年度実績 | 2025年度実績 | ||
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| 1 | 「場の価値」と「体験価値」の創出 |
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| (a)東京の競争力強化に貢献するまちづくりの推進 |
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| (b)安全・安心な暮らしと地域コミュニティの再生・活性化の実現 |
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3,148戸 |
3,148戸 |
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| 2 | 地球環境との共生 |
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| (a)環境先進技術の採用と再生可能エネルギーの導入 |
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| (b)廃棄物の排出量削減及びリサイクル推進 |
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| (c)水使用量の削減 |
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0.79㎥/㎡(前年度対比0.3㎥/㎡増加) |
0.84㎥/㎡(前年度対比0.5㎥/㎡増加) |
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| 3 | 価値を創造する人材、サステナビリティ経営の実現 |
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| (a)働きがいのある職場の実現 |
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課題:階層間の結節強化 施策内容:「従業員同士のコミュニケーションのきっかけを増やし、交流機会を創出する」・「相互理解の深化」を目的として、昨年度から引き続いて社内懇親の支援・360°サーベイを実施 |
課題:階層間の意思疎通の希薄化 施策内容:結節点となるマネジメント層を強化し、階層間での戦略・意識の共有を図ることを目的として、360°サーベイの実施とグループリーダー向け研修の拡充を図る。 |
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| (b)人権デュー・デリジェンスを通じたサプライチェーンにおける人権尊重 |
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建設会社47社を対象にアンケートを実施。 アンケートを通じて顕在化している課題は特段なし。 |
223社より回答を受領(建設会社等283社を対象)、アンケートに回答いただいた会社より10社を選定のうえ面談実施(対話のテーマは主に人権の尊重とGHG排出削減の取組みについて)。 |
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