少しずつ春の気配を感じる今日この頃、皆さまいかがお過ごしでしょうか。「一月は行く、二月は逃げる、三月は去る」の言葉通り、ついこの間、新年を迎えた気分でしたが、あっという間に新年度目前。年初に「今年こそは始めよう!」と誓った目標は、そろそろスタートしておきたい、そんな季節ではないでしょうか。
ところで、このあっという間の3ヵ月間、お金周りのテーマは、とにかく「新NISA!新NISA!新NISA!」だったのではないでしょうか。ミライ研のこちらのコラムでも、3回連続でNISAについてお伝えしてまいりました。(第26回新NISAの個性を考える ~パン作りと一緒?~)(第27回令和で初めての「辰年」に願うことは。。。)(第28回資産形成の必須道具! NISAの知識をインストール!)それらのコラムを読んで、「今年こそはNISAを始めよう!」と思われた方(がいらっしゃると、とても嬉しいです)は、もしかすると「投資信託」というワードにぶつかっているかもしれません。
といいますのも、NISAの中の「つみたて投資枠」で投資することのできる金融商品は、「長期の積立・分散投資に適した一定の投資信託」に限られています(図表1)。そもそも投資信託とはどのような金融商品なのでしょうか。また、どうして投資信託に限定されているのでしょうか。
図表1 NISAの投資対象商品
※ ①整理・監理銘柄 ②信託期間20年未満、毎月分配型の投資信託およびデリバティブ取引を用いた一定の投資信託等を除外
(出所)金融庁「NISA特設ウェブサイト」より
投資信託=「投資をするのに便利な器」
投資信託とは、多くの投資家からお金を集め、ひとつにまとめて運用の専門家が株式や債券などに投資・運用する仕組みの金融商品です(図表2)。国内外の株式や債券などに投資をしますので、それらの相場の変動によって、投資信託自体の価額も上下します。
図表2 投資信託の仕組み
(出所)三井住友トラスト・資産のミライ研究所作成
投資信託のメリットとしては、大きく2点挙げられます。
1点目は、「少額から分散投資が可能」な点です。分散投資は、皆さまのマネープランの中で投資を活用していくうえでは外せない大きなポイントです。しかし、実際に個人で投資対象を複数の地域・資産に分けるには、それなりの資金や手間が必要となります。その点、投資信託であれば1つの商品の中で複数の資産や地域に分散投資をすることが可能です。なおかつ、少額(一般的には10,000円程度から購入できますが、最近では、最低購入金額を100円としている金融機関もあります)から取り組むことができるため、非常に手軽です。
2点目は、「資産の運用・管理を専門家に託すことができる」点です。個人で運用を行うよりも、より幅広い情報収集と分析を期待できますし、その情報に基づいて適宜、投資信託の中で売り買いを行ってくれます。3ヵ月があっという間…と感じたお忙しい皆さまには、まさにぴったりの商品といえるかと思います。
実際にミライ研のアンケート調査においても、資産形成への取組みとして、預貯金等を除けば投資信託が最も取り組んでいる人が多い結果となりました(図表3)。投資信託のメリットを感じている人が、少なからずいらっしゃるのではないでしょうか。
図表3 資産形成に向けて現在取り組んでいること(複数回答可)
(出所)「住まいと資産形成に関する意識と実態調査」(2023年)
*定期・不定期を問わず取り組んでいること
*回答者数11,190名
でもコストがかかるのでしょう・・・?
一方で、投資信託のデメリットとしてよく挙げられるのが、費用がかかる点です。投資信託にかかる費用としては、①購入時にかかるもの、②保有期間中にかかるもの(=信託報酬)、③解約時にかかるがものあり、それぞれ商品ごとにかかる・かからないが定められています。
ただし、NISAのつみたて投資枠で購入できる「長期の積立・分散投資に適した一定の投資信託」の場合は、①購入時にかかる手数料はゼロ(ノーロード)、②保有期間中にかかる手数料は一定水準以下であることが、要件として定められています(図表4)。
図表4 つみたて投資枠で投資対象となる投資信託※の要件
※公募株式投資信託の指定インデックスファンドの場合
金融庁「非課税口座に受け入れることができる上場株式等の範囲に関する基準」より三井住友トラスト・資産のミライ研究所作成
これまで投資をしたことのない方や、長期の目線で資産形成をしていきたいと考えている方に配慮した設計になっているかと思われます。また、実際の信託報酬については、要件に定められている上限よりもかなり低い水準になっており、この水準で専門家に運用をお任せできるなんでお得!とも言えるのではないでしょうか。
さて4月からスタートは、何かと区切りがよいものです。これを機にスタートしてみるのはいかがでしょうか。
《本資料は執筆者の見解を記したものであり、当社としての見通しとは必ずしも一致しません。本資料のデータは各種の情報源から入手したものですが、正確性、完全性を全面的に保証するものではありません。また、作成時点で入手可能なデータに基づき経済・金融情報を提供するものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。投資に関する最終決定はお客さまご自身の判断でなさるようにお願い申し上げます。》
「三井住友トラスト・資産のミライ研究所」は、人生100年時代に適応した資産形成や資産活用に関する調査・研究を中立的な立場で発信することを目的として、2019年に三井住友信託銀行内に設置した組織です。人生100年時代を安心して明るく過ごすために、資産形成・資産活用に関する情報をホームページや書籍を通してお届けしています。
今週の執筆者矢野 礼菜やの あやな
三井住友トラスト・資産のミライ研究所 研究員
2014年に三井住友信託銀行入社。堺支店、八王子支店にて、個人顧客の資産運用・資産承継に関わるコンサルティングおよび個人顧客向けの賃貸用不動産建築、購入に係る資金の融資業務に従事。2021年より現職。主な著作として、『安心ミライへの「金融教育」ガイドブックQ&A』(金融財政事情研究会、2023)がある。ウェルビーイング学会会員。三井住友信託銀行公式YouTubeチャンネル【篠原光×ミライ研スペシャル対談】『安心ミライへの「金融教育」ガイドブックQ&A』(※外部サイトへ遷移します。)にて書籍の読みどころや執筆の裏話を余すことなくお伝えしております!ぜひ、ご覧ください。