生涯医療費の半分は高齢期?
生涯医療費の約半分は70歳以上
ひとりの人が生まれてから亡くなるまでにかかる医療費を「生涯医療費」と呼びますが、2011年の厚生労働省の推計によりますと日本人の生涯医療費の平均は2,500万円(男性2,400万円、女性2,600万円)となっています。特に70歳以上が大きく、生涯の医療費の約半分はこの時期に占めているという計算です。
現在の医療保険制度における医療費の自己負担は、年齢や収入などの条件により1~3割程度(下表)ですので、この割合をグラフに当てはめると、生涯の平均自己負担額は500万円前後という計算になります。
では、高齢者にはどのような病気が多いのでしょうか。厚生労働省の2011年「患者調査」によると65歳以上の人で入院の多い3大疾病は「脳血管疾患」「がん」「心疾患」です。このうち、入院期間が長く治療費がかさむ脳梗塞は、平均入院日数が100日以上、入院費は治療内容などによって異なりますが300万円前後という報告もあります。
但し、医療保険から7~9割が支払われ、さらに自己負担についても限度額を超えた分は「高額医療費」として保険から給付されるため、実際に支払う医療費はそれほど高額にはなりません。
とはいえ、入院しないにこしたことはありません。バランスの良い食事、日頃の運動など生活習慣に気を配り、健康第一で老後を過ごしたいものです。
生涯医療費(男女計)
公的医療保険加入者の医療費 自己負担割合
未就学児 | 小学校入学~69歳 | 70歳~74歳 | 75歳以上 |
---|---|---|---|
2割 | 3割 | 2割※(一定所得以上3割) | 1割(一定所得以上3割) |
※平成26年4月1日以前に70歳の誕生日を迎えた人は1割。
「元気百歳百科」
(資料:厚生労働省保険局調査課「医療保険に関する基礎資料~平成23年度の医療費等の状況~」(平成25年12月)、厚生労働省ウェブサイト「我が国の医療保険について」)」
日本は平均在院日数が長い
病院に入院した患者の入院日数の平均値を平均在院日数と呼びます。グラフは、急性期と呼ばれる緊急で重篤な病状の患者に高度な医療を提供する病院の平均在院日数の国際比較ですが、日本は約18日間と飛び抜けて高く、歯止めのかからない国民医療費増大の要因の一つと指摘されてきました。
医療水準が高い日本で治療期間が長引く背景には、さまざまな事情があります。できる限り良くなってから退院したいというのは患者の本音でしょうし、1961年の国民皆保険制度の導入以降、福祉サービスの肩代わりを病院医療が担い、高齢になり生活に支障をきたすと入院するという、外国にはない「文化」が形成されてきたことも、理由の一つとして考えられます。しかし、国の医療費抑制策に基づき、病院は早く退院を求める姿勢を強めてきています。
他方、退院した患者が自宅に戻ったものの、ケアが不十分で寝たきりになり、病院に戻ってしまったら元も子もありません。回復期のリハビリテーションや退院後の在宅での医療や介護プランについては、医療・介護関係者とよく相談して決めることが重要です。
平均在院日数(急性期)
※急性期とは、緊急で重篤な病状のこと。
急性期病床は、傷害の治療、外科手術、非精神疾患や障害の応急処置、産科医療など。
精神疾患治療、リハビリ、長期療養、終末期緩和ケア等は含まない。