2020年9月

ポジティブ・インパクト評価(要約)

DICは、「サステナビリティ基本方針」のもと、「基幹的なテーマ」、「基幹~差別化テーマ」、「独自性を発揮するテーマ」からなる11の「サステナビリティ・テーマ」(※1)に係る「中期方針」と、年度ごとの「DICグループサステナビリティ活動計画」を作成し、テーマごとにPDCAを回しながら取り組みを進めている。また、中期経営計画「DIC111」において、事業の質的転換により事業体質を強化する「Value Transformation」と、社会課題や社会変革に対応した新事業を創出する「New Pillar Creation」という2つの基本戦略によって、「社会的価値」と「経済的価値」が両立する領域への事業ポートフォリオの転換を図っている(図表①)(※2)

加えて、社長が委員長を務める「サステナビリティ委員会」では、定期的に各サステナビリティ・テーマの進捗報告が行われているほか、サステナビリティ活動の推進に関する方針・計画の立案をはじめ、サステナビリティに関する重要事項の審議が行われており、当該審議内容及び結果は取締役会に報告されている(図表②)。また、サステナビリティ推進のための具体的戦略の策定とその展開を目的として、「サステナビリティ戦略ワーキンググループ」が組織された(※3)

更に、中長期で会社のパフォーマンスに大きな影響を与える「重要課題(マテリアリティ)」(図表③)(※4)を特定し、その中でも「最重要課題」である4テーマについて目標を設定した。

本評価では、「最重要課題」である4テーマを含む「1.化学物質情報管理体制整備」、「2.サステナビリティ指標の運用化」、「3.気候変動への対応」、「4.新製品開発力強化・新事業創出」、「5.労働安全衛生と保安防災」、「6.人材マネジメント」の6項目のインパクトを特定し、各インパクトについて目標及びインパクト指標(KPI)を設定した(図表④)。

※12022年度より13のサステナビリティ・テーマへ更新。

※22021年度に中期経営計画の最終年度を迎え、「Value Transformation」と「New Pillar Creation」という2つの基本戦略に関して、着実に推進し一定の成果を収めた。2022年度からは、「進化したColor & Comfortの価値提供を通じて、株主利益を包摂する社会的利益を追求し、長期的企業価値の向上を目指す」を基本方針に長期経営計画「DIC Vision 2030」を策定。

※32022年度時点では、指標検討分科会・気候変動対応分科会・海プラ廃プラ対策分科会・情報管理分科会の4つのワーキンググループが活動。

※42022年度より、長期経営計画「DIC Vision 2030」の実現に向けて重要課題(マテリアリティ)の見直しを実施。

図表①:サステナビリティ基本方針及びDIC Vision 2030

サステナビリティ基本方針

DICグループは、地球環境への配慮と、グローバルなビジネス・ルールに基づき、

1)安全と健康の確保、2)リスクマネジメント、3)公正な事業慣行・人権と多様性の尊重、4)環境との調和・環境保全、5)イノベーションによる社会的価値の創出と持続的な成長の実現、

を強く意識した事業活動を推進します。

社員一人ひとりは、自主性と責任感を持って自らの業務に取り組み、ステークホルダー(顧客、取引先、地域社会、株主・投資家、社員など)から期待される価値の提供に努めます。

企業体としてDICグループは、社会の持続的な発展と地球環境の維持・向上に貢献する企業であり続けるために、事業活動を通じてたゆまず成長し、自身のサステナビリティを高めていきます。

DIC Vision 2030

「社会の持続的繁栄に貢献する事業ポートフォリオの構築」と、「地球環境と社会のサステナビリティ実現への貢献」を目指す企業像を設定

(2022年度更新)

図表②:サステナビリティ推進体制

(2022年度更新)

図表③:マテリアリティ

(2022年度更新)

図表④:ポジティブ・インパクト・ファイナンスで設定した目標と指標(KPI)

テーマ 内容 目標と指標(KPI) SDGs
化学物質情報管理体制整備 新グローバル化学物質情報管理システムと運用体制の構築
目標
  • 2021年新グローバル化学物質管理システムの日本国内グループ各社への運用を開始
  • 2024年DICグループ(米国サンケミカル社を除く)へのシステム展開を完了
指標(KPI)
  • 新グローバル化学物質情報管理プロジェクトの進捗状況
3 すべての人に健康と福祉を
12 つくる責任 つかう責任
サステナビリティ指標の運用化 サステナビリティ指標を全ての事業を対象にした「環境負荷の低減」と「社会への貢献」を測るものさしとして活用
目標
  • 2020年DICでのサステナビリティ指標の試験運用開始
  • 2021年DICグループでの本格運用開始
指標(KPI)
  • サステナビリティ指標の運用状況
2 飢餓をゼロに
9 産業と技術革新の基盤をつくろう
12 つくる責任 つかう責任
14 海の豊かさを守ろう
気候変動への対応 省エネルギーと低炭素化の推進
目標
  • 2030年に2013年度比で30%のCO2排出量削減
指標(KPI)
  • CO2排出削減量
7 エネルギーをみんなに そしてクリーンに
13 気候変動に具体的な対策を
新製品開発力強化・新事業創出 新たな社会価値の創出に貢献する新製品開発・新事業創出
目標
  • 新製品開発力強化
指標(KPI)
  • 新製品・新事業創出状況
2 飢餓をゼロに
3 すべての人に健康と福祉を
9 産業と技術革新の基盤をつくろう
11 住み続けられるまちづくりを
12 つくる責任 つかう責任
13 気候変動に具体的な対策を
14 海の豊かさを守ろう
労働安全衛生と保安防災 無事故無災害の達成及び労働安全衛生水準の向上
目標
  • 無事故無災害の達成
指標(KPI)
  • 総労働災害発生率
8 働きがいも 産業成長も
人材マネジメント 多様な個性を活かす働き方の実現
目標
  • 女性社員の活躍推進
指標(KPI)
  • 女性管理職比率
5 ジェンダー平等を実現しよう
8 働きがいも 経済成長も

上記KPIのモニタリング状況

目標と指標(KPI) 2020年度実績 2021年度実績 2023年3月付「ポジティブ・インパクト評価」再実施(※)に伴う見直し
1 化学物質情報管理体制整備

2021年に新グローバル化学物質情報管理システムの日本国内グループ各社への運用を開始。2024年にDICグループ(米国サンケミカル社を除く)へのシステム展開を完了。

業務プロセスの見直し結果を反映した新グローバル化学物質情報管理システム(CIGNAS)の稼働前テストを開始。

  • CIGNASを日本で先行稼働を開始。
  • 2023年春に中国稼働に向けて、中国各社でマネジメントシステム整備を実行中。2024年までにアジアパシフィック地区のグループ各社で順次稼働を予定。
テーマ

既存のテーマである「テーマ1:化学物質情報管理体制整備」及び「テーマ5:労働安全衛生と保安防災」を、新テーマ「保安防災と労働安全衛生及び化学品・製品安全の推進」に集約。

目標と指標(KPI)

CIGNASシステムは稼働を開始しているため、目標と指標(KPI)を以下の通り更新。新テーマで設定する3つの目標のうちの1つとしてモニタリングを継続。

目標

2024年度、CIGNASシステムのグローバル(日本地区・中国地区・アジアパシフィック地区)運用開始

KPI

CIGNASシステムの運用状況

2 サステナビリティ指標の運用化

2020年にDICでのサステナビリティ指標の試験運用開始。2021年にDICグループでの本格運用開始。

  • 試行運用による課題抽出を行い、最終形を確定。
  • 「自社の強み」と「重要な社会課題」という2つのキーワードを新たに導入し、評価方法を修正、製品群の最終評価を行い、目指すポートフォリオ転換の方向性を明確化。
  • 特にGHG排出量削減に向けて、サステナビリティ指標で各製品の単位でのモノ作りの過程で生じるGHG排出量把握に利用。
  • グリーン社会、デジタル社会、およびQOL社会を中心に同社の強みを発揮しながら貢献していくことを「DIC VISION 2030」に織り込み。
  • サステナビリティ指標を用いて、「DIC VISION 2030」の目標である、サステナブル製品の比率60%の達成を目指す方針。
テーマ

既存のテーマである「テーマ2:サステナビリティ指標の運用化」及び「テーマ4:新製品開発力強化・新事業創出」は、いずれも環境負荷の低減及び社会への貢献にかかる内容であり、新テーマ「社会の持続的繁栄に貢献する価値の創出」に集約。

目標と指標(KPI)

サステナブル製品※1を拡大させることで「持続可能な社会への貢献」に取り組む方針であり、目標及び指標(KPI)を以下の通り集約。

目標

2030年度、DICグループにおけるサステナブル製品※1の売上高比率60%

指標(KPI)

DICグループにおけるサステナブル製品の売上高比率

(※1)DICグループのすべての製品のうち、社会への貢献と環境負荷の2つの軸を基準とした独自の指標である「サステナビリティ指標」に基づき、DICの強みを発揮し社会課題の解決に貢献できるカテゴリーに分類された製品をいう。

3 気候変動への対応

2050年カーボンニュートラルの実現
2030年CO2排出量を50%削減(2013年比)

2021年に「2030年に2013年度比で30%のCO2排出量削減」から上記目標に見直しております。

グローバル:23.6%削減、日本:20.5%削減、海外25.2%削減

  • グローバル:24.4%削減(722,955 t-CO2⇒ 546,304t-CO2
  • 日本:17.6%削減(244,377t-CO2⇒201,373t-CO2
  • 海外:29.5%削減(488,578t-CO2⇒344,931t-CO2
テーマ

従前より気候変動への対応を最重要課題の一つとしているが、その対応策として2050年度カーボンネットゼロの達成を目指していることを背景に、テーマを「カーボンニュートラル社会の実現」に更新。

目標と指標(KPI)

カーボンニュートラルを実現するため、対象スコープ毎に目標設定したことを背景に、目標・指標(KPI)を以下の通り更新。

  • (a)

    事業所におけるCO2排出量削減

    目標

    2030年度、グローバルの事業所におけるCO2排出量(Scope1&2)50%削減(2013年度比)

    指標(KPI)

    DICグループのグローバルの事業所におけるCO2排出量削減率(Scope1&2)(2013年度比)

  • (b)

    サプライチェーンにおける温室効果ガス排出量削減

    目標
    • 2027年度、DICグループのScope3カテゴリー1はサプライヤーエンゲージメントを購入金額80%相当を対象に実施
    • 2030年度、DICグループのScope3カテゴリー2,3,4,5,12における温室効果ガス排出量13.5%削減(2019年度比)
    指標(KPI)
    • Scope3カテゴリー1について、DICグループの購入金額に対するサプライヤーエンゲージメント実施割合
    • DICグループのScope3カテゴリー2,3,4,5,12における温室効果ガス排出量
4 新製品開発力強化・新事業創出

新製品開発力強化

  • DICが保有する有機材料の化学構造設計技術を応用し、デンタル用途の光造形型3Dプリンタ用材料を上市。
  • 電子機器等の放熱用途で用いられる特殊形状アルミナフィラーを開発し、無機材料で新たな領域に事業を拡大するための足がかりを構築。
  • 6Gを見据えた研究開発を開始。
  • 3Dプリンティング材料・やわらか無線センサー・新型CFR P・高放熱フィラーなど、社会課題解決に貢献する製品を上市するとともに、パッケージング用プラスチック資源循環の社会実装に向けた取り組みを進展
  • 廃棄軟包装フィルムへの脱インキ処理を加えたマテリアルリサイクルの検証開始
  • 藻類由来材料による植物性DHAの取り扱い開始

上述の「テーマ2:サステナビリティ指標の運用化」のコメントをご参照ください。

5 労働安全衛生と保安防災

無事故無災害の達成

DIC:1.44人、国内DICグループ:2.51人、DICグループ(海外含む):3.56人

  • 国内DICグループ:3.60人
  • DICグループ(海外含む):3.69人
テーマ

既存のテーマである「テーマ1:化学物質情報管理体制整備」及び「テーマ5:労働安全衛生と保安防災」を、新テーマ「保安防災と労働安全衛生及び化学品・製品安全の推進」に集約。

目標と指標(KPI)

目標・指標(KPI)の対象スコープを「DICグループ」に更新。新テーマで設定する3つの目標のうちの1つとしてモニタリングを継続。

目標

DICグループにおける無事故無災害の達成

指標(KPI)

DICグループにおける総労働災害度数率

6 人材マネジメント

女性社員の活躍推進

5.9%(2021年1月時点)

  • 6.3%(2022年1月実績)
  • 女性活躍推進企業として「なでしこ銘柄」に4年連続で選定された。
  • 社員のエンゲージメント状況の可視化を目的に、エンゲージメントサーベイを実施。結果の分析を実施し、2022年度始動の「ダイバーシティ活動計画」に課題を反映。
テーマ

長期経営計画「DIC Vision 2030」において、「人的資本価値を最大化する戦略的人材ポートフォリオ構築」を掲げていることから、テーマを「人的資本価値の最大化」に更新。

目標と指標(KPI)

目標・指標(KPI)の対象スコープを「DIC単体」に明確化したこと、ダイバーシティを従前以上に推進する方針であることから、目標と指標(KPI)を以下の通り更新。

目標
  • 2026年度1月時点、DIC単体における女性管理職比率8%
  • 2025年度、DIC単体における男性社員育児休業取得率30%
指標(KPI)
  • DIC単体における女性管理職比率
  • DIC単体における男性社員育児休業取得率
7 - - - -
テーマ

サーキュラーエコノミーへの対応をサステナビリティ戦略として重点施策に掲げたことを背景に、新テーマとして「資源循環型社会の創出」を追加。

目標と指標(KPI)
  • (a)

    産業廃棄物の削減

    目標

    2023年度、国内DICグループにおける廃棄物の有効利用率80%以上

    指標(KPI)

    国内DICグループにおける廃棄物の有効利用率

  • (b)

    水資源の管理

    目標

    2030年度、DICグループのグローバルの生産拠点における中リスク拠点と抽出した水リスク先への管理実施率100%

    指標(KPI)

    DICグループのグローバルの生産拠点における水の中リスク拠点のリスク管理実施率

  • (c)

    バリューチェーン横断での資源循環に資する活動

    目標

    バリューチェーン横断での資源循環に資する製品の開発・提供推進

    指標(KPI)

    バリューチェーン横断での資源循環に資する活動推進状況

8 - - - -
テーマ

上述の通り、既存のテーマである「テーマ1:化学物質情報管理体制整備」及び「テーマ5:労働安全衛生と保安防災」を、新テーマ「保安防災と労働安全衛生及び化学品・製品安全の推進」に集約。

目標と指標(KPI)

上述している以下2つの目標・指標(KPI)に加え、安全・環境・健康の確保を経営基盤として徹底する方針であることから、新たな目標・指標(KPI)を新設。

目標
  • DICグループにおける無事故無災害の達成
  • 2024年度、CIGNASシステムのグローバル(日本地区・中国地区・アジアパシフィック地区)運用開始
  • レスポンシブル・ケア活動※2を通じて人の安全・健康、環境の保護がより一層確保される社会の実現
指標(KPI)
  • DICグループにおける総労働災害度数率
  • CIGNASシステムの運用状況
  • レスポンシブル・ケア活動の推進状況

(※2)化学物質を製造し、または取り扱う事業者が、自己決定・自己責任の原則に基づき、化学物質の開発から製造、流通、使用、最終消費を経て廃棄に至る全ライフサイクルにわたって、環境・安全・健康を確保することを経営方針において公約し、環境・安全・健康面の対策を実施し、改善を図っていく自主管理活動をいう。

(※)DIC向け最新のポジティブ・インパクト評価については、以下をご確認ください。

ポジティブ・インパクト・ファイナンスの取組み事例(DIC株式会社)(2023年3月)

ポジティブ・インパクト評価の再実施に伴い、本件PIFの2022年度以降のモニタリング実績は、上記ページに集約して開示してまいります。

プレスリリース

ページ最上部へ戻る