2021年3月

ポジティブ・インパクト評価(要約)

東急不動産ホールディングス(以下「東急不動産HD」)は、ありたい姿として「価値を創造し続ける企業グループへ―ハコやモノを超えてライフスタイルを創造・提案する―」を掲げており、「事業活動を通じて社会課題を解決し、ステークホルダーとともに、サステナブルな社会と成長を実現します」というサステナビリティビジョンのもと、サステナビリティ方針を策定している(図表①)。都市事業、住宅事業、管理事業、仲介事業、ウェルネス事業、ハンズ事業、次世代・関連事業の7事業により、国内を中心にハード面のみならずソフト面も含めた多様なサービスを幅広い顧客へ提供している。

東急不動産HDは、事業活動を通じて向き合うべき社会課題として、取り組むべきSDGsを定め、7つのマテリアリティを特定している(図表②)。当該マテリアリティを踏まえ、中期経営計画「Value Frontier 2020」を策定し、サステナビリティに配慮した事業活動を推進している。東急不動産HDは、グループの幅広い事業ポートフォリオ、多様なアセットと多彩な顧客基盤、専門知識を有した人材などの強みを活かして、アウトプットとしての施設およびサービスを提供することでマテリアリティの解決を目指している。

東急不動産HDは、代表取締役社長直轄の「東急不動産ホールディングスサステナビリティ委員会」の下でサステナビリティ活動推進のための全体方針の策定が行われ、環境問題・社会問題に関するグループ横断的なマネジメントが行われる体制となっている(図表③)。

本評価では、東急不動産HDの事業活動全体に対する包括的な分析を行い、「生活の質の向上/コミュニティの形成」、「災害に強い街づくり」、「環境負荷の低減」の3項目のインパクトを特定し、各インパクトについて目標及び指標(KPI)を設定した(図表④)。

図表①:サステナビリティビジョン及びサステナビリティ方針

サステナビリティビジョン

私たちは、事業活動を通じて社会課題を解決し、ステークホルダーとともに、サステナブルな社会と成長を実現します。

サステナビリティ方針

  • 事業活動を通じて環境と経済の調和に取り組みます。
  • ステークホルダーとの適切な協働に努め、関係性を維持・強化します。
  • 健全かつ透明性の高い経営を行い、情報の開示に積極的に取り組みます。

図表②:マテリアリティ

東急不動産ホールディングスグループのマテリアリティ(重要な社会課題)

1 経済・政治・規制の変動

日本政府の社会保障課題や民営化推進、世界経済の不確実性などが事業機会や資金調達に大きく影響

2 生活の多様化/グローバル化

街づくり企業として、ライフスタイルや消費者ニーズの多様化、地域コミュニティの活性化などが事業機会に大きく影響

3 地域社会/都市の安心・安全

不動産デベロッパーとして、既存ストックの増加・老朽化、災害対応の必要性増加が事業機会に大きく影響

4 少子高齢社会の進行

住まいやシニア住宅事業を展開する企業グループとして、国内の少子高齢化・人口減少などが事業機会に大きく影響

5 IoT/イノベーション

モノ・コトどちらも提供する企業として、IoT技術の進展がイノベーションやビジネスモデル変化に大きく影響

6 自然環境の変化

街づくりを担う企業として、気候変動の深刻化に伴うインフラ整備や投資家の関心事の変化が事業機会・継続に大きく影響

7 社会的要請の厳格化

消費者からの多面的な対応要請、コーポレートガバナンスなど多様なファクターが経営体制に大きく影響

図表③:CSR推進体制

サステナビリティ推進体制

図表④:ポジティブ・インパクト・ファイナンスで設定した目標と指標(KPI)

テーマ 内容 目標と指標(KPI) SDGs
生活の質の向上/コミュニティの形成 「ライフストーリータウン」、「ライフスタイル創造3.0」等の取り組みにより、時代とともに変化する社会課題を解決する
目標

街づくりにおける時間軸・空間軸での価値創造により、生活の質向上、コミュニティの形成、ならびに地域経済に貢献する

指標(KPI)

新しいライフスタイルの創造と幅広いビジネス領域での価値創出、地域の価値向上への取り組みの状況

3 すべての人に健康と福祉を
8 働きがいも 経済成長も
9 産業と技術革新の基盤をつくろう
11 住み続けられるまちづくりを
17 パートナーシップで目標を達成しよう
災害に強い街づくり 災害に強い都市機能の整備
目標

地域社会/都市の安心・安全に貢献する

指標(KPI)

「安心安全な住まい」の提供に関する取り組み状況

11 住み続けられるまちづくりを
17 パートナーシップで目標を達成しよう
環境負荷の低減 環境と共生した街づくり
  • a)

    CO2削減への取り組み

    目標
    • CO2排出量削減に関する、2050年を目途とする長期目標の早期設定と、SBTi認定の早期取得
    • 上記で設定した長期目標の達成
    指標(KPI)
    • CO2排出量削減に関する長期目標の早期設定とSBTi認定の取得
    • CO2排出量(スコープ1・2・3)
  • b)

    再生可能エネルギー利用の拡大

    目標

    東急不動産ホールディングス全体の事業活動で消費する電力を2050年までに100%再生可能エネルギーとする。マイルストーン目標として、2030年までに60%、2040年までに90%を目指す

    指標(KPI)

    東急不動産ホールディングス全体の事業活動で消費する電力に占める再生可能エネルギーの割合

  • c)

    環境不動産認証の取得推進

    目標

    新築の大型オフィスビル・商業施設における環境不動産認証取得率100%(CASBEE:A以上、DBJ:4つ星以上、BELS:4つ星以上)

    指標(KPI)

    環境不動産認証取得率

  • d)

    水資源の適切な管理と利用

    目標

    水使用量削減に関する長期目標の早期設定

    指標(KPI)
    • 水使用量削減に関する長期目標の早期設定
    • 事業拠点及び保有する不動産ポートフォリオにおける床面積あたりの水使用量
  • e)

    廃棄物排出量の削減

    目標

    廃棄物排出量削減に関する長期目標の早期設定

    指標(KPI)
    • 廃棄物排出量削減に関する長期目標の早期設定
    • 事業拠点及び保有する不動産ポートフォリオにおける床面積あたりの廃棄物排出量
6 安全な水とトイレを世界中に
7 エネルギーをみんなに そしてクリーンに
12 つくる責任 つかう責任
13 気候変動に具体的な対策を

上記KPIのモニタリング状況

開示資料

目標と指標(KPI) 2020年度実績 2022年8月「ポジティブ・インパクト評価」再実施(※1)に伴う更新
1 生活の質の向上/コミュニティの形成
目標

街づくりにおける時間軸・空間軸での価値創造により、生活の質向上、コミュニティの形成、ならびに地域経済に貢献する

KPI

新しいライフスタイルの創造と幅広いビジネス領域での価値創出、地域の価値向上への取り組みの状況

「ライフストーリータウン」に基づく街づくり

「ブランズシティ本郷台」(横浜市栄区、2021年11月より引渡し開始)において、「コミュニティサポートプログラム」を導入。共用部を活用したイベント開催や居住者組織の運営支援により、居住者間の交流とともに地域との交流を生み出す仕掛けづくりを推進。また業界初となるインターホンとスマホによる共用部予約システムと電気錠管理の導入や、分譲マンション初となる供用施設の混雑状況把握システムの導入など、IoT技術の活用による利便性の向上を実現。

(その他参考指標)

  • 高齢者向け住宅物件居室供給数:1931戸
  • 認知症の予防とケアに対応した高齢者向け住宅物件数:15施設
  • 学生向け賃貸物件居室供給数:48,000戸
「広域渋谷圏構想」に基づく街づくり
  • 広域渋谷圏のオフィスビル・商業施設の計14施設で使用電力を再生可能エネルギーに切替え(2021/4月)
  • 広域渋谷圏での起業やコミュニティ連携を促す「未来シェアリング」の戦略コンセプトを公表。取組第一弾として、再開発中の桜丘地区にさまざまな企業と連携した起業支援・新規事業開発のプラットフォームである「ニュートラル・イノベーション・ベース」をコンソーシアム方式で開始(2021/4月)。
  • 東急㈱と東急不動産で「Greater SHIBUYA 2.0」を策定(2021/7月)。「Greater SHIBUYA 1.0」(=「エンターテイメントシティSHIBUYA」+「広域渋谷圏構想」)を継続しつつ、「働く」「遊ぶ」「暮らす」の3要素の融合と、その基盤となる「デジタル」「サステナブル」への取り組みに注力し、「渋谷型都市ライフ」の実現を目指す。

(その他参考指標)

  • 会員制シェアオフィス物件供給数:19施設
  • 会員制シェアオフィス事業での東京都インキュベーション施設認定取得件数:14施設
  • スタートアップ支援・共創事業施設数:8施設
  • スタートアップ支援・共創事業において開催された交流イベント回数:リアルイベント計9回開催

タイトルを「くらしの質の向上・共助コミュニティの形成」に更新。

本テーマの目標・KPIを以下のとおり更新。

目標
  • ア.
    街づくりにおける時間軸・空間軸での価値創造により、生活の質向上、コミュニティの形成、ならびに地域経済に貢献する
  • イ.
    東急こすもす会アンケートによる、お客さま満足度を2030年度に90%以上とする
  • ウ.
    コミュニティ活性化施策を2021年度以降年間10件以上、2030年度に100件以上実施する
  • エ.
    「ライフスタイル創造3.0」に資する商品・サービスを2021年度以降年間10件以上、2030年度に100件以上提供する
指標(KPI)
  • ア.
    新しいライフスタイルの創造と幅広いビジネス領域での価値創出、地域の価値向上への取り組みの状況
  • イ.
    東急こすもす会アンケートによる、お客さま満足度を2030年度に90%以上とする
  • ウ.
    コミュニティ活性化施策実施件数
  • エ.
    「ライフスタイル創造3.0」に資する商品・サービスの提供件数
2 災害に強い街づくり
目標

地域社会/都市の安心・安全に貢献する

KPI

「安心安全な住まい」の提供に関する取り組み状況

  • キャンパスビレッジ西宮(学生寮)において、共用部を災害時一時避難場所として地元自治会に解放する等、住宅分野における地域防災貢献の取組みを開始

(その他参考指標)

  • オフィスビル・商業施設の新築大型物件(10,000㎡以上)における災害時滞在スペースの確保状況:100%
  • 新築マンションにおける防災備品設置率100%
  • リフォーム事業における「耐震システム」の導入件数:125棟

タイトルを「都市のレジリエンス」に更新。

本テーマのKPIを以下のとおり更新。

指標(KPI)

建築物の安心安全対策強化(大型・非住宅建築物の災害時帰宅困難者対応など)に関する取り組み状況

3 環境負荷の低減
  • a)

    CO2削減への取り組み

    目標
    • CO2排出量削減に関する、2050年を目途とする長期目標の早期設定と、SBTi認定の早期取得
    • 上記で設定した長期目標の達成
    KPI
    • CO2排出量削減に関する長期目標の早期設定とSBTi認定の取得
    • CO2排出量(スコープ1・2・3)
  • 以下の目標を設定。また、SBTi認定(1.5℃水準)取得済。

    • 2050年CO₂排出量(スコープ1・2・3)ネットゼロ
    • 2030年度CO₂排出量(スコープ1・2・3)46.2%削減(2019年度比)
    • 2025年度に、CO₂排出量(スコープ1・2)が、再生可能
    • エネルギー発電量(持ち分比率換算)と森林保全クレジットを合計した「CO₂削減貢献量」を下回る
  • スコープ1:58.0千t-CO2

    • スコープ2:198.1千t-CO2(スコープ1・2合計:2019年度比▲9.6%)
    • スコープ3:1,618.8千t-CO2(2019年度比▲15.4%)

タイトルを「地球環境の保全」に更新。

本テーマの目標・KPIを以下のとおり更新。

目標

2050年CO2排出量(スコープ1・2・3)ネットゼロ
2030年度CO2排出量(スコープ1・2・3)46.2%削減(2019年度比)
2025年度に、CO2排出量(スコープ1・2)が、再生可能エネルギー発電量(持ち分比率換算)と森林保全クレジットを合計した「CO2削減貢献量」を下回る

指標(KPI)

CO2排出量(スコープ1・2・3)
CO2削減貢献量

  • b)

    再生可能エネルギー利用の拡大

    目標

    事業活動で消費する電力を2050年までに100%再生可能エネルギーとする。マイルストーン目標として、2030年までに60%、2040年までに90%を目指す。

    KPI

    事業活動で消費する電力に占める再生可能エネルギーの割合

0.06%

目標・KPIは左記を継続。

  • c)

    環境不動産認証の取得推進

    目標

    新築の大型オフィスビル・商業施設における環境不動産認証取得率100%(CASBEE:A以上、DBJ:4つ星以上、BELS:4つ星以上)

    KPI

    環境不動産認証取得率

100%

本テーマの目標・KPIを以下のとおり更新。

目標
  • ア.
    大型オフィスビル・商業施設における環境不動産認証取得率(CASBEE:A以上、DBJ:4つ星以上、BELS:4つ星以上)を、2030年度までに100%、2025年度までに約70%とする
  • イ.
    ZEB/ZEH導入率(ZEB/ZEH Oriented相当またはそれを超える建物性能を有する東急不動産の分譲マンション・オフィス等の施設件数割合(着工ベース)を、2030年度までに100%、2025年度までに約50%とする
指標(KPI)
  • ア.
    環境不動産認証取得率
  • イ.
    ZEB/ZEH認証取得率
  • d)

    水資源の適切な管理と利用

    目標

    水使用量削減に関する長期目標の早期設定

    KPI
    • 水使用量削減に関する長期目標の早期設定
    • 事業拠点及び保有する不動産ポートフォリオにおける床面積あたりの水使用量
  • 以下の目標を設定。

    • 2030年度まで毎年、水利用量を前年度比低減
  • 1.3㎥/㎡(前年度比▲0.5㎥/㎡)

本テーマの目標・KPIを以下のとおり更新。

目標

2030年度まで毎年、水利用量を前年度比低減

指標(KPI)

事業拠点及び保有する不動産ポートフォリオにおける床面積あたりの水利用量

  • e)

    廃棄物排出量の削減

    目標

    廃棄物排出量削減に関する長期目標の早期設定

    KPI
    • 廃棄物排出量削減に関する長期目標の早期設定
    • 事業拠点及び保有する不動産ポートフォリオにおける床面積あたりの廃棄物排出量
  • 以下の目標を設定。

    • 2030年度廃棄物量11%削減(2019年度比)
  • 8.3kg/㎡(2019年度比▲13.5%)

本テーマの目標・KPIを以下のとおり更新。

目標

2030年度廃棄物量11%削減(2019年度比)

指標(KPI)

事業拠点及び保有する不動産ポートフォリオにおける床面積あたりの廃棄物量

(※1)東急不動産ホールディングス向け最新のポジティブ・インパクト評価については、以下をご確認ください。

ポジティブ・インパクト・ファイナンスの取組み事例(東急不動産ホールディングス株式会社)(2022年8月)

ポジティブ・インパクト評価の再実施に伴い、本件PIFの2021年度以降のモニタリング実績は、上記ページに集約して開示してまいります。

プレスリリース

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