数字が教えてくれる「人生100年時代」のライフデザイン
コロナ禍における意識・行動調査 ~資産形成と社会貢献活動~

三井住友トラスト・資産のミライ研究所(以下、ミライ研)は、「人生100年時代」における安心・安全な資産の形成/活用を、中立的な立場で調査・研究する目的で三井住友信託銀行内に設置された組織です。

ミライ研では2020年度より、20歳~64歳の1万人への独自アンケート調査を実施しています。今号から4回にわたり、アンケート結果を基に皆さまのお役に立つ情報とより豊かな生活に向けたヒントをご提案します。

三井住友トラスト・資産のミライ研究所 所長
丸岡 知夫

「新しい生活様式」の確立

「人生100年時代」という言葉は、私たちの生活の中ですっかり定着してきた感があります。

厚生労働省が公表している統計の1つに「最頻死亡年齢」があります。1年間の死亡者数が最も多かった年齢のことですが、2019年は男性が87歳、女性が93歳でした。この数字を見る限りでは、現在は「人生90年時代」といったところです。ただし、当然この年齢よりも長生きされる方々も沢山いらっしゃいますので、家計でライフプラニングを考える上では「人生100年」で計画していくのが相応しいと考えます。

昨年より新型コロナウイルス感染拡大という人類にとって大きな問題が発生しました。今も全世界で新しい生活様式確立のための取り組みが進められていますが、日本はこのコロナ禍で「オンライン社会への秒速転換」が進みました。今後も、さまざまなニューノーマルが築かれていくと思いますが、ここで「今、変化しつつある我々の生活行動」について考察をしてみましょう。

コロナ禍における社会貢献活動に対する意識・行動調査

ミライ研の実施している独自アンケートは、家計における資産形成や生活行動についての意識と実態を伺う内容です。2021年3月に実施した第2回目の調査結果から、コロナ禍における各家庭での意識や行動の特徴をよく表しているトピック「社会貢献活動」について紹介します。

今回、「社会貢献活動であなたが行っているもの(複数回答可)」を尋ねたところ、「何も行っていない」は全体の77%、社会貢献を行っている方の1位は「社会貢献につながる消費」、ほぼ同率の2位が「寄付、募金」であることがわかりました。

図表1で世代別の回答結果も見てみましょう。若い世代の「社会貢献活動未実施」は8割ですが、世代が上がるにつれて減少し、60歳代は7割となり、3割の世帯が「何かしら取り組んでいる」ことがわかります。

図表1 社会貢献活動で行っているもの

1位となった取り組み「社会貢献活動につながる消費」には、フェアトレード商品(生産者から消費者に至るまで搾取などがない公正<フェア>な取引であることが確認されている商品:衣料品やアクセサリー、コーヒー、バナナなどの商品が多い)の購入やフードロスの削減、地産地消、リユース/リサイクルなどを意識した買い物などが含まれます。近年、社会貢献への意識向上と合わせて「消費面での具体的な取り組み方」が世の中に浸透してきたことが背景の1つとして考えられます。

伝統的な社会貢献活動である「寄付・募金」は僅差で2位ですが、日本での寄付文化は着実に醸成されてきているようです。日本の個人による寄付額は、2010年から2016年にかけて2,882億円から7,756億円に、個人による寄付率も33.7%から45.4%に増加しています。

出典:認定特定非営利活動法人 日本ファンドレイジング協会「寄付白書2017」

また、今回の調査では寄付先や募金先についても調査しています。図表2にある通り、1位は「災害復興」、ほぼ同率の2位が「社会福祉」、3位が「医療」となっています。ここ10年を振り返ると国内に限ってもいくつもの大きな災害が発生しており、こういった出来事に対する個々人の想いが社会貢献活動の浸透につながっていると考えられます。

一方、最近の寄付や募金をされた方に対する調べでは、「何に寄付・募金するか」も行動の判断基準になってきているようで、アンケート結果で「医療」が高順位である背景としてうなずけます。

今後、寄付する側、募金する側の「想い」は変化・多様化していくと考えられます。「オンライン社会への転換」と合わせて寄付方法も拡張・高度化され、「モバイルで簡単募金」などが実現し「スマート・ファンドレイジング(さっとできる寄付・募金)」が家庭に定着していくものと思います。政府や自治体、金融機関などにおける社会課題の解決の1つとして「受付スキームの高度化」への取り組みが一層望まれるところです。

図表2 寄付先・募金先の分野(種別) ※回答は複数回答可

人のためならもっと頑張れる

「人生100年時代」の浸透にあわせて、シニアライフを活き活きと過ごすための「資産形成」の重要性が広く認識されてきていますが、形成した資産をどう活用していくか、も大事なことです。「資産活用」というと安全・安心な生活の費用に充てるイメージがあると思いますが、ご自身のためだけでなく、他の生活者の方々や次世代のために「活用」することも含まれると思います。日々の生活の中で社会貢献活動に参加する、また、活動している方々を応援する、これを資産形成の目的の1つに加えていただくことで「よりスマートな資産形成」につながるのではないでしょうか。

~「自分のために頑張る、しかし、人のためならもっと頑張れる」

「新型コロナショックは資産形成に逆風?それとも追い風?」

新型コロナウイルスの感染拡大で私たちの生活は一変しました。資産形成や金融行動でも「密回避」でオンラインでのセミナーや相談などが一般化。給付金10万円は家計口座に積んだままという方も多かったかもしれません。コロナショックが家計行動や、とりわけ資産形成にどんな影響を与えたのかを考察しました。

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