高齢の方の心と言葉

世界でもトップクラスの高齢化が進んでいる日本では、高齢者の認知症対策や孤立させないための取り組みとして幅広い世代との交流やコミュニケーションの大切さが指摘されています。そこでまず、高齢者のこころや気持ち、言葉や表現の傾向について知っておきましょう。専門家の研究などによると年齢とともに認知機能は全般として遅延していくものの、それまで蓄えてきた知識や理念は保たれていて「印象」や「直感」による判断が増えていくことがわかっています。

相手の心に寄りそった会話

こうした心の動きに寄りそって、理屈や理論で説明するよりも具体的なできごとやエピソードをまじえて話をしたほうが相手も興味をもって会話がはずみやすいのです。また、流暢さが低下し、いつのまにか違う話になっていたり、関係のない話題になる「迂遠」という状態にもなりがちです。こんなときは急かして話のつづきをうながすことなく、ゆるやかに話をもとへ戻すなどの配慮も必要でしょう。話をじっくり聞いて、1度に話す内容はひとつにするといった意識をもつことも大切です。会話をうまくキャッチボールのように受けとったり、投げかけたりできるようになれば、相手が好んで口にする言葉をこちらも使ってみるといった配慮もできるようになるでしょう。

“高齢”という偏見をもたない

思っていることを言葉として口に出す「換語能力」は40代から低下しはじめますが、黙読する能力は70代になっても衰えません。逆に語彙の数は、年齢を重ねるとともに増えていくことがわかっています。言語能力のなかには、低下するもの、保たれていくもの、向上していくものなどがあって、専門家のあいだでもまだ把握されていない能力が秘められています。言葉をうまく口に出したり、聞きとったりすることが難しくなったからといって言語能力のすべてが衰えているわけではないのです。私たちは、高齢者に対して必要以上に先入観や偏見をもって接しがちです。まずは相手の心に寄りそって、じっくり話を聞くこと。そこを出発点にして、偏見や先入観をもたずに誠意をもって会話のキャッチボールを楽しむこと。そこから心が通じるコミュニケーションが生まれていくのではないでしょうか。

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