農的生活の第一歩を踏み出す

都会で会社勤めの生活を送って来た人たちの中には、将来田舎暮らしをしてみたい、という憧れを持つ方も多いと思います。しかし、いざ、田舎暮らしをしようと思っても、慣れない環境に飛び込んで一から地域の方との関係を作り上げることを考えると、躊躇してしまうこともあるでしょう。そんな方に向けて、気軽に土に触れられる市民農園が人気を集めています。

農林水産省の分類によると、市民農園には大きく2種類のパターンがあります。1つは都市住民が自宅から通って利用する日帰り型市民農園。2つめはクラインガルデンと呼ばれる滞在型市民農園です。

市民農園は2014年3月現在で全国4,113カ所、18万6,732区画が存在し、利用者数は200万人とも言われています。そのうち、クラインガルデンは農水省のwebサイトに掲載されているものだけで日本全国で2014年3月現在、70カ所あります。特に、クラインガルデンは空きが出るとすぐ埋まってしまうほどの人気なのだそうです。

(農林水産省調べ)

農林水産省 全国市民農園リスト(平成26年3月末現在)新規ウィンドウで開く(外部のウェブサイトに遷移します)

クラインガルデンとは?

クラインガルデンにはラウベと呼ばれる小屋がついており、その場所に宿泊しながら野菜などの栽培が楽しめるということが日常型の市民農園との大きな違いです。また、日常型の市民農園の広さが10㎡程度であるに対し、クラインガルデンは50~300㎡と広い農地がついていることが多く、滞在しながらじっくりと畑作りを楽しむことができ、セカンドライフでじっくり農的な生活を楽しみたい、でも生活拠点を田舎に移すにはハードルが高いという方にはぴったりな環境です。

クラインガルデンの発祥

クラインガルデンは1800年代にドイツで生まれました。当時のドイツは工業化が進み、大気汚染などで都市の環境が劣悪であったため、ライプチヒのシュレーバー医師が子どもたちに遊び場を作ることの必要性を訴えて最初の「クラインガルデン協会」ができ、その後全国に広まっていきました。そのためシュレーバーガーデンとも呼ばれています。ドイツのクラインガルデンでは小屋への宿泊は原則として不可とされており、小屋は農機具の保管や、休憩、食事、パーティなどに使われています。農園では野菜だけではなく、果樹や花も植えられて個人の庭のようになっています。

市民農園は、イギリスで産業革命の頃に貧しい農民や工場労働者が自給作物を栽培して生活を支えるために生まれたのが始まりといわれています。今ではヨーロッパの多くの国に広まり、農園ごとに利用者組織の協会を作って管理・運営をしています。クラインガルデンや市民農園では、コミュニティの場所や余暇を過ごす場所として、多くの人々が野菜作りやガーデニングを楽しんでいます。

日本のクラインガルデン

宿泊利用を想定した農園では、小屋にシャワーや風呂、キッチンなどの施設を併設しているところも多く快適な滞在が可能です。また、農園には農機具を保管できる場所があり、手ぶらで行くことが可能なことが多く、場所によってはバーベキュー設備やピザ釜などを共同設備として設置しているところもあり、さまざまな楽しみ方が可能です。

また、利用者同士が交流できるイベントも定期的に行われているため、新しい人とのつながりも生まれます。また、地元の農家の方が農作業の指導をしてくれるところもあり、地元の方とのつながりも生まれます。

日本のクラインガルデンは都市からは少し離れた地域にあることが多いため、行き帰りに少し時間が必要ですが、その分自然豊かな土地に好きなだけ滞在できて、別荘のような暮らしを楽しむことができます。

クラインガルデンの利用料は年におおむね25万~70万円と幅があります。ちょっと高いとも思えますが、田舎暮らしに比べるとハードルが低く、別荘を購入することを考えると割安なので、毎年数十万円で農場付別荘を好きなだけ利用することができると考えれば、決して高い利用料金とは言えないのではないのでしょうか。

日本のクラインガルデン(イメージ) 日本のクラインガルデン(イメージ)
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