「時間もあるから何か社会に貢献できるようなことがしたい」。

そんな思いでボランティア活動を始めるアクティブシニアが増えています。

健康で、暮らしの質が高いだけでは、幸せな老後とはいえません。有償・無償を問わず社会の役に立っている高齢者は人生や生活の質に満足している人が相対的に多いといえます。

自主的な活動に参加している人のほうが、生きがいを感じている

   Q.あなたは、現在、どの程度生きがい(喜びや楽しみ)を感じていますか。

自主的な活動:趣味、健康・スポーツ、生産・就業、教育関連・文化啓発活動、生活環境改善、安全管理、高齢者の支援、子育て支援、地域行事、その他の活動

ボランティア活動には、高齢世代を支える福祉や介護、子育て支援や食育などの教育関連、まちづくりなどの地域貢献、学術・文化・芸術の振興、環境保全、災害時の支援、地域の安全、国際協力などさまざまなものがあります。年を重ねたからこそ持つ知恵を授けるようなボランティアや、長い仕事生活で培った経験を活かせる活動など、若い人にはできないことも数多くあります。

地域の社会福祉協議会やWEBサイトなどで、さまざまなボランティア活動の情報が手に入ります。興味がある方は、まずはどのようなボランティアがあるか、情報収集を始めてみてはいかがでしょうか。

実際に一歩踏み出した方のボランティア体験談をご紹介します。

体験談1絵本の読み聞かせ(60代 女性)

Aさんは、60代以上で構成する子ども向けの絵本の読み聞かせサークルで精力的にボランティア活動を行っている。Aさんのサークルはグループ単位で活動を行っており、読み聞かせの活動日は、朝の15分の時間で小学校や幼稚園で読み聞かせを行い、終了後にその日の反省会をして、さらに次回に向けての練習を行い、その後希望者はお茶や食事をして帰るというスケジュールで半日ほどを外で過ごしている。1回の読み聞かせをするためには、図書館に出かけて絵本を選び、教室の後ろまで声が届くように発声練習をしておくなど準備も体力も必要になる。また、子どもとの交流だけでなく、同じ目的を持つ仲間ができ、外に出て人に会うので身ぎれいにするようになり、自分の都合では簡単に休めないから日ごろから健康に気を遣うようになる―と、読み聞かせは高齢者にとって非常に良い効果のあるボランティアなのだという。

反省会の後のティータイムも楽しみの一つ。同じ目的を持った仲間と交流するとき、雑談のなかで体調の話などをすることがあり、「遠くの親戚よりも近くのボランティア仲間」で、何かあったときに気軽に声をかけ合うことができるという。

Aさんは、ボランティアの心構えをこう語る。「ボランティアを続けるには、最低限暮らしていけるだけのお金と、自分のことは自分でできる体力がまず必要」。また、「ボランティアは人のためばかり考えると続きませんね。まず自分のためになることがないと」とも。

絵本の読み聞かせを始めてから、子どもが街でAさんを見つけると「この前のお話とっても面白かった」「今度は何を読んでくれるの?」と声をかけてくれることが何より嬉しい。ボランティアの参加者は、考え方も境遇もさまざまな人がいるため難しいこともあるが、個人のプライバシーを尊重しながら、自然体に構えることなく続けていきたいと考えている。

(取材協力・リプリント中央区)

体験談2観光案内(70代 男性)

桜の有名な観光名所で、Bさんは春になると毎年1カ月ほど駐車場アルバイトのかたわら簡単な観光案内を続けている。観光案内を始めたきっかけは、定年退職後に、長年住んでいても余り知らない地元のことを知りたいと、ふとした興味から受けた自治体の観光ガイドの講座だった。講座に通い続け、ボランティアのガイド講座の終了証をもらった。

ガイドの団体に加入する道もあったが、Bさんは、以前訪れた美術館での面白くわかりやすい説明に感銘を受け、自分も「面白く、楽しく、わかりやすく」をモットーに地元のよさを伝えることがしたいと考えていた。そんな折、たまたま名所のある公園の駐車場の交通整理のアルバイトを頼まれ、車を止めに来たお客さんにできるだけひと声かけるようにして、ユーモアやシャレを交えた独自の語り口調で、ひと言、見所などを紹介しはじめた。また、休憩時間などに駐車場のスタッフ用のジャンパーを着て散策をしていると、お客さんに質問をされることもあり、そのときは名所や歴史についての紹介をしたり、現場を少し案内するようになり、お客さんに大変喜ばれた。

このような観光案内を何年か続けているうちに、Bさんの話を聞きたくてお客さんが毎年わざわざ遠方からやって来たり、一度来たお客さんが友人に紹介したりするようになったという。Bさんの話に喜んだお客さんからお土産にお酒をもらったこともある。自分の住む町のよさを伝えて、お客さんが喜んでくれ、「また来るよ」「友達にも紹介したい」などと言ってくれる人がいるのがBさんの喜びだ。

Bさんはこのほかにも地域のさまざまな活動に携わっており、桜の季節が終わっても毎日忙しい日々を送っている。これらの活動はすべてお金にはならないボランティアだが、人や社会の役に立つだけではなく、これまで知らなかった人や世代の違う人と出会い、関わった人たちから「楽しかった」、「勉強になった」と言われることは、お金に変えられない楽しさがあると思っている。

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