数字が教えてくれる「人生100年時代」のライフデザイン
資産継承のバトンリレー ~親子のコミュニケーションの変化と「令和の贈与・相続」~

三井住友トラスト・資産のミライ研究所(以下、ミライ研)は、「人生100年時代」における安心・安全な資産の形成/活用を、中立的な立場で調査・研究する目的で三井住友信託銀行内に設置された組織です。

ミライ研では20歳~64歳の1万人への独自アンケート調査を実施しています。アンケート結果を基に皆さまのお役に立つ情報とより豊かな生活に向けたヒントをご提案します。

三井住友トラスト・資産のミライ研究所 所長
丸岡 知夫

コロナ禍における親子のコミュニケーションは?

2019年末に、中国武漢市から報告された原因不明の肺炎が、新型のコロナウィルスが原因であることが判明し、世界各地に感染が拡大、WHO(世界保健機構)が2020年3月に「パンデミック」を宣言してから2年が経過しようとしています。今後も国民全体での感染防止への取り組みや、ワクチン接種の継続など、コロナ禍を乗り越えていくための行動は続くものと思われます。

本コラムでも過去3回にわたり、コロナ禍の下での新しい生活様式や金融行動の変化について、ミライ研の独自アンケートの結果を基にお伝えいたしました。
今回は、「親子のコミュニケーション」への影響を、「資産継承」の視点を交えて考えてみます。

ミライ研では、2021年3月にした独自アンケート調査において、「コロナ禍になる前と比べて、父母(義父母)とのコンタクト(会話・やりとりなど)は、増えましたか」と尋ねています(図1)

図1【コロナ前との比較】父母(義父母)とのコンタクト頻度の変化

結果は、「コンタクト頻度が増えた」が約2割、6割の方が「変わらない」、一方で「コンタクト頻度が減った」も約2割ありました。

世代別の回答結果を見てみますと、若い世代(20歳代、30歳代)では、「増えた」の回答率が全体平均よりも高く、逆に、50歳代~60歳代では、「減った」の回答率が全体平均よりも高くなりました。

20歳代、30歳代で親と同居している方ですと、「三密回避」のための在宅勤務や巣ごもり時間の増加などが背景となって、家庭内での親子のコミュニケーション機会が増えたのではないかと考えられます。また、同居されていない場合でも、この世代の親世代は、スマートフォンを日常的に利用している50歳代、60歳代と思われますので、スマートフォンの機能(電話・ZOOM・LINEなど)を活用したコンタクト増加も要因と思われます。

一方、50歳代~60歳代の親世代は80歳代~90歳代と想定されますので、主なコミュニケーション手段は「会いに行く」だと思われますが、コロナ禍で高齢者との接触が制限された状況で、「実家への帰省」「療養中の親御さんへの見舞い・看護」「高齢者用施設の入居者への訪問」などの機会が減ってしまったことが、背景として想定できます。

コンタクト機会が「増えた」と回答された1,730人には、さらに、「どのようなことについてお話ししていますか(複数回答可)」と伺いましたが、結果は、「世間話」「日常生活の様子」「健康状態」が各70%台と高い回答率となりました。一方で、「足元の経済面(仕送り)」「相続や贈与」は各7~8%台の回答率となっています。親世帯のコロナ禍における暮らしぶりや、体調管理についての気遣いがうかがえる結果といえそうです。

世代間の資産継承はいつ?

コロナ禍は、親子間のコミュニケーションにも変化をもたらしていますが、一方で、「家計資産の世代を跨ぐコミュニケーション」ともいえる「贈与や相続」については、どのような状況なのでしょうか。

独自アンケート調査において、1万人の方に「あなた(配偶者も含む)は、今までに、相続、生前贈与を受けたことがありますか」とお尋ねしたところ、図2の結果となりました。

親世代が高齢に差し掛かる年齢である40歳代ごろから、「受けたことがある」の比率が上昇しはじめ、50歳代で25%、60歳代では42.7%が「ある」と回答されています。
「ある」の方には、別の設問で「どなたから受けたのか」を伺っていますが、50歳代、60歳代では「実父母から受けた」が、8割を占めていました。

図2 贈与を受けた経験の有無

資産のバトンを受けとめるために

2025年には団塊世代(1947~49年生まれ)が全員後期高齢者(75歳以上)になり、これは「2025問題」として注目されています。三井住友信託銀行/調査部の調べでは、総務省「2019年全国家計構造調査」、同「平成30年住宅・土地統計調査」をもとに、日本の高齢者が保有する家計資産額を、2020年時点で891兆円と推計しています(このうち、金融資産は355.5兆円、不動産<住宅+土地>は535.5兆円)。2030年に向けて人口減少社会である日本は、総世帯数、家計資産総額は減少していくものの、高齢化・長寿化により高齢者人口・高齢者世帯数は増加することから、高齢者が保有する資産は増加していく見通しです。

長寿化のもと、加齢による認知機能の低下や、75歳以上では認知症の有病率も上昇していく傾向がみられます。親世代から「資産のバトン」を受けとめる上では、早期の親子間のコミュニケーションが、より重要になってくると思われます。

コロナによってコミュニケーションの方法は変化を余儀なくされていますが、多様化や利便性もどんどん進んできています。各家庭で、親子間でのコミュニケーションを、さまざまな方法で増やしていきたいものです。

確認してみよう!「相続と税金」「遺産と遺言」

相続が発生すると、切っても切れないのが「相続税」です。2015年1月の税制改正で、相続税を払う相続人数は大幅に増加しました。国税庁公表の令和元年分相続税の申告事績データでは、亡くなられた方、約138万人に対して、相続税の申告書の提出に関わる被相続人数は11.5万人、割合は8.3%となっています。身近になってきている「相続と税金」「遺産と遺言」についてまとめてみました。

続きはミライ研Webサイトをご覧ください。

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