高齢化の進展で「介護」は私たちの大変身近なテーマになってきましたが、情報が氾濫し、必ずしも正しく理解されているとは言えないのが現状です。そこで、2016年度は介護と老人ホームをテーマに、2015年に介護事業20周年を迎えたベネッセグループ様から4回にわたって解説をいただきました。

介護と老人ホームの解説第1回目は、ベネッセ シニア・介護研究所 主任研究員の福田亮子氏から、介護に必要な心構えや事前準備についてご説明いただきました。2015年11月に設立されたベネッセ シニア・介護研究所では、介護現場に蓄積されたさまざまなノウハウやデータを体系化し、各種取り組みの効果検証や科学的な裏付けに取り組み、業界のレベルアップ・イメージ向上を目指しています。

ベネッセ シニア・介護研究所 主任研究員
福田 亮子氏
福田 亮子氏

介護は突然やってくる

ベネッセ シニア・介護研究所が、2015年に有料老人ホームのご入居者およびご家族を対象に行った「介護に関する意識調査」によると、ホーム入居にいたるまでの自宅での介護期間は「(介護歴)なし」の26.7%を含む約半数の48.6%が6カ月以内という結果でした。また、入居の経緯は、けがや病気等により介護サービスが急に必要になったケースや、加齢や認知症に伴う急激な変化が生じたケースが多く、これらには独居されている方の離れて暮らすご家族が、変化に気付いていなかったケースも含まれます。いずれにしても、このように「介護が突然やってくる」場合、入居先の決定に十分な検討時間が取れないのが現状です。

入居までの介護期間

介護に向けた備え

調査では、ご自身の体験を踏まえ、これから介護を迎えられる方へ「介護に対する向き合い方」についてどのようにアドバイスするか自由記述でご回答いただきました。その結果、心構えとして「一人や家族で抱え込まない」「頑張り過ぎない」などを指摘された方が目立ちました。介護においては、何より外部の助けを得ることが重要です。に介護サービスの利用を勧める声が多くを占めました。

また、事前準備の重要性を指摘する割合も高く、中でも経済的な備え、すなわちお金に関する備えが重要視されています。一方、「情報収集・知識の習得」「見学」「人に相談する」など能動的に情報収集することを勧める声も多く聞かれました。突然やってくるからこそ、介護に備え積極的な姿勢が必要だと考えられます。

介護に対する向き合い方(抜粋)

老人ホームに関する情報について

それでは、老人ホームを検討する際に知っておくとよい情報は何でしょうか。多くのご家族は、どの程度の費用がかかるかということに加え、ケアや医療から食事、生活全般に至るまでの日常の介護サービスの内容や、介護スタッフに関する情報が重要と回答しました。老人ホームの事業者はパンフレットやホームページなどでさまざまな情報発信をしていますが、必要とされている介護サービスはご入居者により異なりますし、どのようなスタッフが介護サービスを提供しているかは、こうした情報だけですべてを把握できるわけではないのが現状です。

他方、実際にホームに出向きスタッフと話をすることで、より具体的な情報を入手したり、ご入居者・ご家族がお持ちのイメージに合っているかどうかを確かめたりすることができます。また、そこで入居されているご本人やご家族など、すでに介護を経験している人の生の声を聞くこともできます。介護の受け手側からの情報も、考える上で大いに助けになります。ホーム選びの際に見学や体験入居を勧める意見が多いのは、そうした現状を反映したものだと考えられます。

事前に知りたかった情報

欲しいのは生活提案

このように、老人ホームを検討する際に知りたかった情報は、費用面を除けば、入居後も生活の満足度が相応に維持できるかという、定性的で比較が難しいものが多かったと整理することができます。つまり、入居者側は、現在介護事業者が提供しているスペック情報(費用や人員体制、設備、特定サービスの有無等)だけでなく生活提案を求めており、そこに一種のギャップが存在しているとも考えられます。

しかし、介護が突然やってきて急遽施設選びをしなければならない状況では、事業者が生活提案を行っても十分納得することは容易ではありません。また、当然ながら介護保険などを利用し、ご自宅で公的な介護サービスを受けるという選択肢もあります。介護に備えるということは、まだお元気なうちからこうした選択肢を頭に入れ、積極的に情報を収集し、いざという時にどうするか心を固めておくということに他なりません。

ベネッセスタイルケアでも介護や医療をはじめとしたさまざまなテーマのセミナーを年間1,300回開催しております。どうぞ、お気軽に足を運び、皆さまの備えを万全なものにしてください。

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