いざ老人ホームへの入居を検討することになったとき、まずは費用や立地でホーム探しをする場合がほとんどです。しかし、老人ホームは第二の我が家であり、人生の残りの時間を自分らしく生きるための大切な場所でもあります。

介護と老人ホームの解説第2回目は、老人ホーム選びの専門家である「ベネッセの介護相談室」相談員染谷直氏から、どうすれば納得のいくホーム選びができるのかについて解説をいただきました。染谷氏は、有料老人ホームにて介護職員・入居相談員として約7年間勤務し、2014年6月より現職に就かれています。介護現場での職務経験をいかして年間200件以上の入居相談を受け、「ご本人さまの個性に合った施設選び」を心がけています。

ベネッセの介護相談室 相談員
介護支援専門員(ケアマネジャー)
染谷 直 氏
染谷 直 氏

「ケアプラン」と「生活提案」

介護サービス利用の軸となるのが、介護サービスの種類や内容をケアマネジャーが介護度に応じて組み合わせて作成する「ケアプラン」です。 在宅のケアプランの場合、例えば週5回朝8時~9時に訪問介護サービス、週2回9時~17時までデイサービスなど、内容がすべて決められています。自宅で暮らせる気楽さがある一方、サービスを受ける時間は限られているので、「点」でのケアになりがちです。この「点」と「点」を結ぶ役割をケアマネジャーが担っています。

一方で、24時間介護職員がいる老人ホームの場合、その日の状況に合わせた介護サービスが受けられるという特長があります。各ホームでは、一人ひとりの身体の状態や生活スタイルに合わせて「生活提案」をしています。具体的には、ケアプラン上は見守りだけでよい入居者でも、「今日は体調が悪そうだから食事介助をしよう」といったように、臨機応変に対応することができます。

介護(=ケア)だけではなく、精神面や余暇活動に対してもお手伝いをする「面」でのケアをすることで、生活全体をサポートします。

入居後の暮らしがイメージできるか

在宅同様、老人ホームにおいても介護サービスのベースとなるものは「ケアプラン」ですが、同じくらい重要なのが、そこでどんな暮らしができるのかという「生活提案」です。日々の生活の中で今ある力をどう生かすのか、叶えたい生活を実現するためにはどうすればいいのかを入居者一人ひとりに対してホームがどう考えるのかが何より重要になります。入居を検討する際には自分(またはホームに入る人)がどんな状況で、どんなケアをしてもらいたいのか、どんな生活をしたいのかをしっかり伝えることが大切です。

例えば、人と話すのが好きであれば、「なるべく他の人と関わることができる生活がしたい」、可能な限り自力で生活をしたいのであれば、「できるだけオムツではなくトイレへの誘導をお願いしたい」といったように細かく希望を伝えるとよいでしょう。それに対して、具体的な事例を提示しながら提案をしてくれるようであれば信頼できるホームだと思います。

第三者の目も使って

とはいえ、どこまで質問していいのか、先方の答えや提案がいいのか悪いのかの判断は難しいと思いますので、老人ホーム紹介センターなど相談窓口を利用するのもよいでしょう。介護の現場を知っている相談員であれば、老人ホームの対応に対する判断指標も持っており、在宅と老人ホームでできることの違いについて事前に伝えることができます。第三者のチェックを入れるといった観点からも、判断に迷ったときには一度相談してみることをおすすめします。 最後に、老人ホームの見学で最も大切にしてほしいこと、それは「そこに自分(またはホームに入る人)が居ることがイメージできるかどうか」です。入居後の生活に満足されている方とそのご家族のほとんどが、見学時に入居後の生活がイメージできたというデータもあります。

また、見学の際には老人ホームの相談員や営業担当だけではなく、ホーム長やリーダー、ケアマネジャーなど、現場で働く人と会話をして生の声を聞いてみてください。これは、現場の人の考え方が現場のサービスに直結しているといっても過言ではないからです。

「ベネッセの介護相談室」にご相談いただき、ホームに入居された方のご相談データ
(2015年5月1日~2015年12月31日調べ)

入居された方のご相談データ
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