三井住友信託銀行は、事業を通じた社会・環境問題の解決に取り組んでいます。特に、昨今話題となっている「気候変動」は、問題解決に資する専門チームや組織を社内に設置するなど、非常に重視しているテーマです。全4回にわたり、この気候変動問題に関わる動向について、社内の専門家が分かりやすく解説してまいります。(執筆者:サステナビリティ推進部 テクノロジー・ベースド・ファイナンスチーム 後藤文昭、荻原大輔)

気候変動問題とは

今、世界で最も深刻な社会問題は「気候変動」です。近年、平均気温が上昇する地球温暖化に加え、世界各地で干ばつや熱波、豪雨などの異常気象による自然災害が多発するようになりました。「気候変動」は、私たちの暮らしや経済活動にさまざまな悪影響を及ぼす事象を総括する言葉として使われています。気候変動が引き起こすさまざまな事象は、途上国や弱者に対してより悪影響を及ぼし、格差や貧困などの社会的課題の原因にもなっています。

IPCCという世界的な気候変動の専門家組織は、2021年の報告書に「人間の影響が大気、海洋および陸域を温暖化させてきたことには疑う余地がない」と記載しました。そして現在、COPという気候変動の会合において明示された「世界的な平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保つとともに、1.5℃に抑える努力を追求すること」という目標に向け、世界各国が問題解決に向かう意思表示や宣言を行っている状況です。

日本では昭和の時代から議論されている気候変動問題ですが、平成を経て令和を迎えた今、いよいよ問題の大きさが確定的になり、世界もその問題解決に向けて身を乗り出すような時代になっているのです。

地球の気温が上昇する原因は、「温室効果ガスの膜が厚くなり、熱が閉じ込められているから」です。温室効果ガスは、太陽から放出される熱を地球に閉じ込めて地表を温め、生物に適した気温を保ってきました。しかし、産業の発展により温室効果ガスの排出量が増えたことで、地球を覆う温室効果ガスの膜が厚くなっています。この厚くなった膜が、必要以上に熱を内側に閉じ込めてしまうため、図表1のように気温が上昇してしまうのです。このまま何も対策をしないと2100年には最大5.7℃上昇するという予測もあります。

私たちの生活への影響は?

上記のような温暖化が進むと、私たちの生活にはどのような影響が出てくるのでしょうか。

まず考えられるのが、海面の上昇です。地球全体の気温が上昇すると、北極域・南極域にある氷が溶け出し、海面が上昇するといわれています。日本は海に囲まれており、水産業も盛んなため、海面上昇による生活への影響は大きくなるものと予想されます。

続いては、洪水の増加や台風の強大化です。気温が上昇すると大気中の水蒸気が増えるため、これまでと異なる洪水や台風が発生し、私たちの生活を脅かす恐れがあります。昨今、強い台風が多発しており、ご自身やお知り合いが被害に遭われた方もいらっしゃるかもしれません。気候変動は決して遠い将来の話ではないといえます。

さらには、動植物への影響もあります。具体的には、高温による農作物の品質低下等があり、ぶどうの着色が悪くなるといった悪い影響が出ています。

最後に、熱中症や感染症、デング熱といった伝染病などの健康被害の増加です。昨今の猛暑は皆さまも感じているところと思いますが、熱帯地域に生息する蚊などが、温暖化により活動範囲や活動時期を広げることで感染症が増加する可能性が指摘されています。

気候変動問題に対する日本の動き

日本では気候変動問題に対して、気候が変動しないための「緩和」策と、気候が変動してもその影響に耐えられるための「適応」策に取り組んでいます。まずは温暖化を抑えるべく、緩和策に最大限の取り組みを進めており、中でも、再生可能エネルギーを最大限導入することに世界中が注力しています。(図表2)

再生可能エネルギーとは太陽光や風による発電で、CO2を排出しないことから化石燃料を利用する従来の発電方式に変わることが期待されています。省エネや植樹といった活動も重要ですが、気温上昇を1.5℃に抑えるためには、「2050年前後に世界のCO2排出が実質ゼロ(カーボンニュートラル:図表3)となること」が必要とされており、社会システムの大きな変化が必要とされています。

今、私たちにできること

三井住友信託銀行が所属する三井住友トラスト・ホールディングスは、2021年10月に「三井住友トラスト・ホールディングス カーボンニュートラル宣言」を策定・発表しました。企業はこうした宣言により、気候変動問題に対して自ら目標を定めて実行していくことが可能です。「自分にできることはあるのか?」と思う方も多いと思いますので、いくつか個人でできる取り組みを紹介します。

まずは「できる範囲でCO2排出量の少ない生活に少しずつ変えていくこと」です。我慢を強いるような無理な省エネではなく、再生可能エネルギーの電気を選択したり、より省エネな家電製品を買ったり、といった選択をすることで社会システムの変化を後押しすることができます。さらに、住宅の屋根で太陽光発電を行うことや、電気自動車を購入することでも貢献することができます。ほかにも、「気候変動問題に取り組む企業の製品やサービスを選択すること」で、企業の取り組みを後押しすることも有効です。実際にこうした企業へ投資することも可能ですので、興味のある方は検討されてみてはいかがでしょうか。

今回は、気候変動問題そのものと私たちにできることについて解説いたしました。次は、具体的なテーマに基づいて問題を掘り下げながら解説いたします。

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