三井住友信託銀行は、事業を通じた社会・環境問題の解決に取り組んでおります。特に、昨今話題となっている「気候変動」は、問題解決に資する専門チームや組織を社内に設置するなど、非常に重視しているテーマです。今年度は計4回、この気候変動問題に関わる動向について、社内の専門家が分かりやすく解説してまいります。第3回は、私たちの生活に欠かせないものの、気候変動問題の原因である温室効果ガスの排出や、海洋プラスチックのごみ問題など昨今話題になっている「プラスチック(以下、一部プラと表記)」について取り上げました。本紙がプラスチックとの付き合い方を見直すきっかけになれば幸いです。(執筆者:サステナビリティ推進部 テクノロジー・ベースド・ファイナンスチーム 小中 洋輔、青柳 拓也、呂 梁)

プラスチックの歴史

世界で初めて工業製品化されたプラスチックは、1870年頃にアメリカの発明家のハイアットが発明した「セルロイド」だといわれています。当時高価だった象牙の代替材としてビリヤード玉などに広く使われたそうです。その後大量に使われるようになったのは、1960年代以降、石油化学コンビナートから製造されるようになってからで、ごく最近だということがわかります。

軽い、耐久性が高い、加工しやすい、安価であるプラスチックはさまざまな用途で使用され、私たちの生活を豊かにしてくれました。例えば自動車部品は重い金属からプラスチックに置き換えることにより燃費が向上し、ペットボトルの発明により安全な飲料水を長期間保存・輸送できるようになり、食品包装が酸素や水蒸気を遮断することにより食品の賞味期限を延ばしてくれました。プラスチックの歴史はおよそ60年と浅いですが、既に私たちの生活になくてはならないものになっていることがわかります。

 

プラスチックの現状と課題

私たちはこれまでプラスチックの利便性を享受してきた一方で、大量生産、大量消費、大量廃棄により、昨今、主に2つの問題が顕在化してきました。

1つ目は気候変動問題です。プラスチックは石油などの化石資源からつくられており、現在日本では使用後のプラスチックの70%以上は焼却されています。プラスチックを焼却するときに温室効果ガスであるCO2が排出され、気候変動の原因となります。2つ目は海洋プラごみ問題です。環境中に捨てられたプラスチックは川などを経由し海へ流れつきます。プラスチックはその耐久性の高さから自然環境ではほとんど分解されないため、海や沿岸にどんどん蓄積されさまざまな問題につながります。世界では毎年800万トン流出しており、2050年には海に生息する魚の数よりも多くなるという調査結果もあります。未来の豊かな地球環境のために、これらの問題に真剣に向き合うときが来たのです。

課題解決に向けた動向

このような課題の解決に向けた取り組みを3つ紹介します。

1つ目はペットボトルのリサイクル利用についてです。日本ではペットボトルの回収率は95%以上と非常に高く、ペットボトルの85%は衣類、卵パック、ペットボトルなどにリサイクルされています。リサイクルすることでペットボトルを焼却した場合と比べてCO2排出量を42%抑制できるという報告があります。回収する文化により環境流出も最小限にできています。

2つ目は石油の代わりに植物を原料としたバイオマスプラスチックという新しい素材です。植物は成長の過程で光合成によりCO2を吸収します。たとえバイオマスプラスチックを焼却したとしても、植物が成長過程で吸収したCO2の量と燃焼で排出したCO2の量が相殺され、実質的にCO2を排出しないと考えられています。また、バイオマスプラスチックの中には生分解性プラスチックと呼ばれる海や土壌の特定の条件下で微生物により分解される種類があり、万一海に流出しても分解されるため環境への悪影響が最小限に抑えられます。最近はレジ袋や食品包装など多くの商品に「バイオマスマーク」や「生分解性プラ表示」がついているのでチェックしてみてはいかがでしょうか。

3つ目は法律です。2022年4月1日より、「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律(略称:プラ新法)」が施行されました。これは、事業者や自治体が、プラスチック製品の「設計」から「販売」「使用後の再利用」まですべてのプロセスで資源循環をしていくための法律です。最近よく見かけるコンビニでのプラスチックスプーンの有料化や、ホテルでのアメニティの提供方法変更などの背景にはこの法律の制定が関わっています。今後、スーパーでのペットボトルやトレーの回収のように、特定プラスチックの店頭回収が多くなることが予想されます。

私たちができること

昨今、海洋プラごみ問題が取り上げられ、脱プラスチック化が加速する中で「プラスチック=悪者」との認識が広がっているように感じます。しかしながら、プラスチックはその特性から、私たちの生活の豊かさを支える必須の素材となっています。問題はプラスチック自体ではなく、環境のことを考えずに大量消費、大量廃棄することであり、プラスチックと上手に付き合うことで解決できると考えています。

プラ新法のベースであるプラスチック資源循環戦略では基本原則として「3R+Renewable」が制定されています。この4つのRを順番通りに実行することが、まさにプラスチックとの上手な付き合い方になります。

当グループでは2019年4月、2030年までにリサイクルされずに廃棄されるプラごみゼロを目指す「三井住友トラスト・グループ プラごみゼロ宣言」を策定しました。「お客さまにプラごみを出させない」「社員がプラごみを出さない」ための取り組みとして、お渡しする品物の素材変更、ロビー展・社内勉強会の開催、マイバッグ・マイボトル持参などを推進しています。是非皆さまもご一緒に、気候変動等の課題解決に取り組みませんか?

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