10. 野鳥の長い旅を支える泥干潟の生態系-藤前干潟

名古屋の環境保全活動の原点
藤前干潟は、伊勢湾の最奥部、名古屋港の一角にある100haほどの干潟で、周辺部を含めた323haがラムサール条約に登録されています。かつて伊勢湾の奥には「あゆち潟」とよばれた広大な湿地・干潟が広がっていましたが、江戸時代の新田開発や高度成長期の工業用地造成によって大半が埋め立てられ、わずかな残存部分となったのが藤前干潟です。ここは1980-90年代に名古屋市の廃棄物処分場計画の予定地となり、根強い保全活動の結果、計画は中止されました。名古屋市はそれを契機にごみ減量などの環境政策に取り組み、それが2010年の「生物多様性条約COP10」や2014年の「ESD世界会議」開催につながりました。この保全活動の中心となった「藤前干潟を守る会」は2003年にNPO法人格を取得し、環境省が設置した稲永ビジターセンター・藤前活動センターの運営を受託して見学者への説明や観察会等の活動を行っています。

藤前干潟の生物
藤前干潟を含む庄内川河口一帯は以前から渡り鳥が多く飛来することで知られており、特にハマシギの越冬地として重要とされています。春・秋はチュウシャクシギやダイゼン等のシギ・チドリ類が、また夏はコアジサシ、冬はカモ類が訪れ、一年を通してさまざまな野鳥が見られるとともに、それを支える豊富な餌の存在を教えてくれます。春から夏にかけては干潟での生物観察が行われ、ヤマトオサガニやアナジャコ、ヤマトシジミ、ゴカイ類などの泥干潟の生物を通して干潟の生態系のはたらきを考えることができます。

現地への交通
稲永ビジターセンター:名古屋駅よりあおなみ線野跡駅下車徒歩10分
藤前活動センター:名鉄バスセンターより三重交通バス南陽町藤前停留所から徒歩10分
車の場合は伊勢湾岸自動車道名港中央IC・飛島ICよりそれぞれ5分(センターに駐車場あり)

藤前干潟を守る会(文・写真)
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