8. 生きものの暮らしを支える故郷の自然-能美の里山地域

里山は多種多様な生きもの宝庫
石川県能美市の里山地域は、加賀平野のほぼ中央に位置し、昔を懐かしむことができる身近な里山です。今でも生活に密接に結びついている森には小さい子どもから大人まで多くの方が訪れ、コミュニティー活動の場所として利用されています。
特に、能美市の天然記念物に指定されている「七ツ滝」は、平地に近く標高約150mのところに流紋岩で形成された落差12mの二の滝をはじめ総落差約50mの滝が連続して眺められる、県内でも屈指の風景明媚なところです。
周辺はコナラ、アベマキ、アカマツ、ナツツバキなどの雑木林が里山の景観を残し、その中で本州日本海側の北限の植物ツクバネガシ、ウスバミヤマノコギリシダのほか、サカキ、トネリコ、イヌシデ、スダジイが自生し、ギフチョウの採食となるヒメカンアオイが多く見られ、植物の総数約380種を数えることができます。哺乳類はニホンカモシカやキツネ、クマ、ニホンリスをはじめ10種類ほど、鳥類ではオオタカ、ハチクマ、ミサゴ、カワセミが観察され、滝の清流にはカジカ、ヨシノボリといった魚やサワガニなども生息しています。その近くでは、アベサンショウウオ、ホトケドジョウなどの稀少な生物も残り、モリアオガエル、トノサマガエルも見られます。早春には数万株のオウレン、カタクリのほか、ユキグニミツバツツジ、タムシバが咲き乱れ、ギフチョウの乱舞する光景は素晴らしいものです。


人々が集う憩いの里山
七ツ滝の入口には市民団体「能美の里山ファン倶楽部」のシンボルともいえる炭焼き窯があり、長い煙突からたなびく煙は昔懐かしい里山を象徴しています。また、この市民団体をはじめ産官学が協働し年間を通じて遊歩道や森林の整備を行い、ササユリやシュンラン等の植栽活動、滝の生きもの調べも毎年実施しています。
森林整備で伐採された木はキノコの栽培や炭焼きの材料として利用し、また観察会や環境教育活動も開催され、多くの方が気軽に訪れることができます。

現地への交通
- 電車
-
東京・大阪・名古屋から:JR北陸線 小松駅下車、バス・レンタカーなどで里山地区へ
- 車
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大阪から:(名神自動車道・北陸自動車道)小松ICを降りて約15分
東京・名古屋から:(東海北陸自動車道・北陸自動車道)美川ICを降りて約20分

能美の里山ファン倶楽部(文・写真)
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