6. 東京湾最奥部に残された渡り鳥の憩いの場-谷津干潟
谷津干潟

まちの中に残された海
東京から電車で30分、人口約16万人のベッドタウン・習志野市。その沿岸部に谷津干潟はあります。
かつては東京湾沿岸に広大な干潟があり、そこでは漁業が行われ、谷津遊園という遊園地がそばにあり、多くの潮干狩り客でにぎわっていました。1970年代以降に住宅地や工場などの用地として埋め立てられ、その中に、市民運動により守られた40haの四角い干潟が「谷津干潟」として残されました。
現在は2本の水路で東京湾とつながり、潮の満ち引きが保たれています。周囲は遊歩道が整備され、ランニングや散歩をする人、バードウォッチングをする人などでにぎわっています。干潟の南側には環境学習の拠点である「谷津干潟自然観察センター」があり、レンジャーが干潟や公園の自然を案内しています。
慎重にゴカイを引き抜くメダイチドリ

地球を旅する渡り鳥の中継地
春と秋の年に2回、シベリアやアラスカとオーストラリアなどを行き来する渡り鳥、シギやチドリの仲間が数多く飛来します。彼らは潮が引くと谷津干潟にやってきて、せわしなくくちばしを泥の中に差し込むなどしてカニやゴカイを捕らえます。そうして体力を養い、最長12,000kmもの旅を続けます。
夏になれば干潟の小さな生き物たちが活発に活動します。水の中から長い目を出して辺りをうかがう「ヤマトオサガニ」、砂についた有機物を食べながら口から砂団子を作りだす「コメツキガニ」、泥の上を飛び跳ねる魚「トビハゼ」・・・ユニークで魅力的な生きものたちでにぎわう季節です。
冬はカモの仲間やハマシギ、ダイゼンなど越冬する渡り鳥がやってきます。特にハマシギは最大1,000羽以上が見られ、群れで飛ぶ様はまるで紙吹雪のように美しい光景です。
春のシギ、チドリたち

ヤマトオサガニ

現地への交通
- JR総武線「津田沼駅」から「新習志野駅」行きバスに乗車、「津田沼高校前」下車後、徒歩5分(観察センターまで10分)。または「谷津干潟」行きバスに乗車、終点「谷津干潟」で下車、徒歩1分(観察センターまで15分)。
- JR京葉線「南船橋駅」または「新習志野駅」から徒歩20分
- 京成谷津駅より徒歩30分

谷津干潟自然観察センター
指定管理者 (社)アーバンネイチャーマネジメントサービス(文・写真)
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