11. 大都市圏に残された都市の里山-海上の森

海上(かいしょ)の森とは
海上の森は、愛知県瀬戸市の南東部に位置しており、面積は約530ヘクタールです。都市の近郊に位置していながら、豊かな森林と農地、湿地等があり、さまざまな野生動植物が生息、生育する多様な自然環境を有しています。
この森が2005年開催の愛知万博(愛・地球博)の会場候補地となった後に、森の中にオオタカが営巣していることがわかりました。自然環境の保全と開発についての激しい議論が交わされた結果、計画は大幅に変更され、森の大部分が残ることになりました。
万博の終了後、森を守る条例も制定され、この森の一角にあった愛知県パビリオンは「あいち海上の森センター」として、里山に関する学習と交流の拠点として活用されています。
海上の森では、春には日本の固有種で、東海地方でしか生育しないシデコブシの花が咲き、夏には日本最小のトンボであるハッチョウトンボが舞い、トウカイコモウセンゴケの花が開きます。秋にはヤクシソウやアキノキリンソウの花が咲き、冬にはジョウビタキがやってきます。時にはムササビが顔を見せます。いろいろな自然の姿を見せてくれる森なのです。



「自然の叡智」-里山再生への取り組み
万博のテーマであった「自然の叡智」を未来に向けて確実に継承し、さらに発展させるため、この森の保全と活用を軸にさまざまな取り組みがなされています。
県民参加による水生生物やキノコの調査学習会、毎週1回の生物季節調査、稲作や野菜・堆肥づくりなどを実践する里の教室、間伐や竹林の整備、この地の歴史文化についての古老からの聞き書き、雛祭りや月見、正月行事の「オコズナ撒き」や「ドンド焼き」などの里に根付いた行事の復活、秋の「収穫感謝祭」などです。
海上の森では、こうした体験や実践を通して、単に森を守るということだけでなく、多くの人の力で支えられる里山再生、すなわちこの地ならではの「里山コミュニティ」の形成を目指しています。

現地への交通
電車の場合
愛知環状鉄道「山口」駅から徒歩20分
リニモ「八草」駅または愛知環状鉄道「八草」駅から徒歩45分
車の場合
名古屋瀬戸道路「長久手I.C.」から約10分、東海環状自動車道「赤津I.C.」から約10分

特定非営利活動法人 海上の森の会(文・写真)
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