結納しない場合に渡す「支度金」とは?親が知っておくべきマナーと準備について
目次
結納を行わないカップルが増えるなか、「支度金」という形で新婦側にお金を渡すケースも見られるようになっています。
支度金は、結婚準備を応援するための資金であり、結納の代わりに気持ちを伝える大切な役割を果たします。
しかし、支度金のマナーはあまり知られておらず、「いくら包めば良いの?」「どのように渡せば失礼にならない?」など、親世代でも迷うことが多いのではないでしょうか。
この記事では、結納を行わない場合に渡す支度金について、渡し方のマナーや準備の流れを分かりやすく解説します。
支度金とは
支度金とは、新郎側から新婦側へ贈る「結婚準備のための資金」のことです。
従来、結婚の際には仲人を立てて結納品や結納金を交わす「結納」が行われていました。結納は「両家の縁を結ぶ」という意味を持つ正式な儀式であり、金銭的なやり取りだけでなく、家同士の絆を確認する大切な場とされています。
しかし近年は、結婚の形式が多様化し、仲人を立てずに「両家顔合わせの食事会」で済ませる略式結納が主流になっています。
正式な結納を行わない場合に、新郎側から新婦側へ贈られる金銭が「支度金」です。
支度金は、挙式費用や新婦の衣装代、新居の家具・家電の購入費など、実際の結婚準備資金として贈られるケースが多くなっています。
「結納金」と「支度金」の違いは、以下のとおりです。
| 結納金 | 婚約の証として贈る金銭 |
|---|---|
| 支度金 | 新生活や結婚準備を支援する実用的な資金 |
結納金が「証」や「誓い」といった形式的な意味を持つのに対し、支度金は現実的な資金サポートの意味合いが強いと言えます。
支度金は必ず渡すべき?
結納を行わず、両家顔合わせのみを行う場合、支度金を贈ることは必須ではありません。
支度金はあくまで「結婚準備を応援する気持ち」を表すものであり、両家の考え方や経済状況、地域の慣習によって対応が異なります。
支度金を渡さないからといって失礼にはあたりませんが、新婦側の支度や新生活の負担を気遣って贈るケースが多いです。
支度金の相場はいくら?
支度金の相場は、50〜100万円程度が一般的です。
略式結納にて、両家顔合わせの食事会のみを行う場合には、結納金と同額またはやや少なめに渡すケースが多く見られます。
もちろん、経済状況や両家の考え方次第で、金額を変更しても問題はありません。
例えば、新婦側に渡す支度金を30万円前後に抑え、その分、挙式費用や新居の初期費用を新郎側が多く負担するケースもあるようです。
ただし、縁起を気にする場合は「2」「4」「9」が付く金額(20万円・40万円・90万円)は避け、「5」や「7」などの奇数や「8」などの末広がりの数字(50万円・70万円・80万円)にすると良いでしょう。
支度金を渡す新郎側のマナーは?
支度金は、金額だけでなく、いつ・どのように・どのような言葉で渡すかによっても印象が変わります。
明確な決まりはないものの、一般的なマナーを理解しておくと安心です。
まずは、支度金を渡す新郎側が知っておきたいマナーを紹介します。
支度金を渡すタイミングはいつ?
支度金は、両家顔合わせの食事会で渡すことが一般的です。
正式な結納を行わない代わりに、食事会の場で新郎側の父親から新婦側の父親へ渡すのが自然な流れと言えるでしょう。
食事会の進行上タイミングが取りにくい場合は、食事後に別室で渡したり、後日改めて訪問したりして渡す形でも問題ありません。
支度金の渡し方は?
支度金を手渡す際は、紅白の結び切りの水引を使用した熨斗付きのご祝儀袋を用意しましょう。
表書きは「御支度金」「支度金」「寿」などが一般的です。
もし、着物代や衣装代など目的が明確であれば、「御着物料」「御帯料」「御衣裳料」としても構いません。
ただし、表書きと金額のバランスが不自然にならないよう注意しましょう。
中に入れるお札は、必ず銀行で新札を用意し、お札の向きに気を付けてください。
封入する際は、肖像画(人物の顔)を表にして、ご祝儀袋の正面から見て肖像画が上になるように入れるのが正式なマナーです。
支度金を渡すときの言葉は?
支度金を渡すときには、感謝と祝福の気持ちを伝える言葉を添えるのが基本です。
渡す相手に応じて、以下のような言葉がよく使われます。
新婦の父親に渡す場合
「こちら、私どもからの支度金でございます。どうぞお納めください。」
「ささやかではございますが、今後のご支度の一助になれば幸いです。」
新婦本人に渡す場合
「〇〇さん、私どもからの支度金です。△△(新郎の名前)をこれからもよろしくお願いいたします。」
言葉の内容よりも、相手の目を見て、穏やかに伝えることが大切です。
無理にかしこまる必要はなく、笑顔で気持ちを込めて渡すことで、両家の絆がより深まります。
支度金をサプライズで渡すのはマナー違反?
支度金をサプライズで渡すこと自体は、マナー違反ではありません。
しかし、結婚は両家の信頼関係を築く大切な場面であり、サプライズによってかえって戸惑いを招くこともあります。
特に金銭のやり取りはデリケートなため、突然の支度金を贈呈すると、新婦側の家族が対応に困る可能性もあるでしょう。
支度金を贈る際には、相手への配慮が何より大切です。
サプライズではなく、事前にタイミングや渡し方を共有しておくと、誤解や行き違いを防ぎ、より温かい雰囲気で両家顔合わせを進められるでしょう。
支度金は現金以外でも良い?
支度金は必ずしも現金である必要はなく、新生活を支える実用品を贈るケースもあります。
例えば、家電・家具の購入費を負担したり、新婚旅行の費用を一部援助したりといった形も立派な支度金です。
ただし、本人の希望を無視した贈り方は避けましょう。
新郎新婦本人と相談し、必要なものを確認した上で贈るなど、相手を思いやる姿勢こそが重要なマナーです。
支度金を受け取る新婦側のマナーは?
支度金は、両家の絆を深める大切な贈り物です。
受け取る側の新婦は、感謝の気持ちをしっかり伝えることが大切です。
続いては、支度金を受け取る新婦側のマナーを見ていきましょう。
支度金を断るのはマナー違反?
「正式な結納をしていないのにお金をいただくのは気が引ける」と感じる方もいるかもしれません。
しかし、支度金は新郎側からの「結婚準備を応援したい」という気持ちの表れであり、それを辞退することは、相手の厚意を否定することにもつながりかねません。
そのため、原則として、支度金は丁寧に受け取るのがマナーです。
もしも「金額が大きすぎる」「お返しが難しい」といった理由で受け取るのが難しい場合には、「お気持ちだけありがたく頂戴いたします」「お気遣いをいただき恐縮です」などの言葉を添え、感謝と理由を丁寧に伝えましょう。
断る場合も、角が立たないように柔らかな表現を心がけることが大切です。
支度金を受け取るときの言葉
支度金を受け取る際は、「ありがとうございます」「大切に使わせていただきます」といった感謝の言葉を添えて受け取りましょう。
両手で丁寧に受け取るのがマナーです。
その場で中身を確認するのは、相手に対して失礼にあたります。
両家顔合わせの食事会では開封せず、帰宅後に落ち着いて中身を確認してください。
後日、「ご厚意をいただきありがとうございました」と改めてお礼を伝えると、より印象が良くなります。
支度金のお返しはどうすれば良い?
支度金のお返しは、受け取った金額の1〜5割程度を目安にするのが一般的です。
新郎のご両親から贈られた場合でも、お返しは新郎本人に渡すのがマナーとされています。
お返しの内容は形式にこだわる必要はなく、スーツや腕時計、家具・家電、革小物など、これからの生活や仕事で役立つものを選ぶと良いでしょう。
最近では、旅行券や高級レストランのペア食事券など、思い出を共有できる品を贈るケースも増えています。
一方で、両家の考え方によっては、お返しを省略する場合もあります。
例えば、あらかじめ話し合った上で、お返し分を差し引いた金額を支度金としても問題ありません。
支度金の使い道はどうやって決める?
支度金は、主に結婚準備や新生活のための資金として活用されます。
代表的な使い道は、以下のとおりです。
支度金の代表的な使い道
- 結婚式・披露宴の費用
- 新居の家具・家電の購入
- 新婚旅行の費用
- 将来のための貯蓄や引越し費用 など
支度金の使い道は、基本的に新婦側が自由に決めることができ、新郎側に報告の義務もありません。
しかし、支度金は新郎側のご両親からの応援の気持ちです。
使い道は、新郎新婦で相談して決めることが望ましいでしょう。
結婚のための支度金に贈与税はかかる?
原則として、支度金や結納金には贈与税はかかりません。
国税庁は「贈与税がかからない財産」の一つとして、「個人から受ける香典、花輪代、年末年始の贈答、祝物または見舞いなどのための金品で、社会通念上相当と認められるもの」を挙げています。
出典:国税庁「No.4405 贈与税がかからない場合」
新郎側の両親から新婦側へ贈られる支度金は、結婚を祝う目的で贈られる「祝物」に該当します。
そのため、社会通念上妥当な範囲であれば、贈与税の課税対象にはなりません。
ただし、「社会通念上相当」を超える高額な支度金を受け取った場合には、贈与税が課される可能性があります。
一般的な支度金の相場は50〜100万円前後であり、100万円を大きく上回る金額を贈る場合には注意が必要です。
お子さま・お孫さまのために高額の資金援助のお考えの場合には、「結婚・子育て資金の一括贈与非課税制度」を活用できるケースもあります。
この制度は、18歳以上50歳未満の子どもが、親や祖父母から結婚や子育てのための資金を一括で贈与された際、最大1,000万円まで非課税になるというものです。
そのうち、結婚関連費用として非課税になる上限額は300万円と定められています。
具体的な非課税対象費用は、以下のとおりです。
- 1
挙式費用、衣装代等の婚礼(結婚披露)費用(婚姻の日の1年前の日以後に支払われるもの)
- 2
家賃、敷金等の新居費用、転居費用(一定の期間内に支払われるもの)
結婚指輪の購入費用や新婚旅行代、家具・家電の購入費などは、対象外となります。
結婚・子育て資金の一括贈与非課税制度の適用を受けるためには、以下の手続きが必要です。
- 1
金融機関で「結婚・子育て資金口座」を開設する
- 2
贈与を受ける際に「結婚・子育て資金非課税申告書
」を金融機関へ提出する
- 3
支出の際には、対象となる領収書や契約書などを提出し、利用用途を証明する
結婚・子育て資金の一括贈与非課税制度に関しては、以下の記事でより詳しく解説しています。合わせてご覧ください。
関連記事:結婚・子育て資金一括贈与とは?子どもや孫への支援に活用できる税制優遇制度を紹介
結納しない場合の支度金はマナーを知って気持ち良く受け渡しをしよう
近年は、正式な結納を行わず、「両家顔合わせの食事会」を行うカップルが増えています。
結納を行わない場合、従来の「結納金」ではなく、結婚準備を支援するための「支度金」を、新郎側から新婦側に贈るのが一般的です。
支度金の金額や渡し方に明確な決まりはありません。
相場や渡すタイミング、渡し方については、事前に両家で話し合って決めておくことをおすすめします。
今回紹介した支度金の相場やマナー、贈与税の非課税範囲も参考に、支度金を贈る際には、両家それぞれが気持ち良い形で結婚へと進めるように配慮しましょう。
※この記事は2025年10月末時点の情報に基づいています
監修者紹介
監修者 金子 賢司
資格 CFP®資格
プロフィール
東証一部上場企業(現在は東証スタンダード)で10年間サラリーマンを務める中、業務中の交通事故をきっかけに企業の福利厚生に興味を持ち、社会保障の勉強を始める。以降ファイナンシャル・プランナーとして活動し、個人・法人のお金に関する相談、北海道のテレビ番組のコメンテーター、年間約100件のセミナー講師なども務める。趣味はフィットネス。健康とお金、豊かなライフスタイルを実践・発信している。