iDeCoと企業型DCと個人年金保険、老後資金に適しているのはどれ?

6月13日に成立した年金制度改正法で、iDeCo(個人型確定拠出年金)の加入可能年齢の上限引き上げが話題となりました(3年以内に実施)。同じく老後の資産形成として利用されている企業型DC(企業型確定拠出年金)や個人年金保険とはどのような違いがあるのでしょうか。
iDeCoは、国の制度に基づく私的年金です。掛金は全額所得控除の対象で、運用益は非課税*となり、受け取る際には「公的年金等控除」または「退職所得控除」が適用されるなど、税制面で強みがあります。加入者自らが運用商品を選び、時間を味方につけた資産形成ができる仕組みとなっており、老後の資金準備の方法の一つに位置づけられます。一方、金融商品の特徴やリスクをよく理解した上で活用するのはもちろんですが、資金は原則60歳まで引き出せないなど、注意すべきこともあります。
企業型DCは、iDeCoと同じ確定拠出型年金で仕組みもほぼ同様の私的年金ですが、掛金を事業主が拠出することが特徴的です(企業型年金規約に定めた場合は加入者も拠出可能(マッチング拠出))。ただし、企業型DCがあるかどうかはお勤め先によって異なります。
個人年金保険は保険会社が提供する商品です。iDeCoほどの税制優遇ではないものの、保険料の一部が「生命保険料控除」として所得控除の対象になります。また、途中での解約が可能であることや、契約内容によっては万が一のときの保障があるなど保険と貯蓄を兼ねたものとなります。運用は主に保険会社に任せるため、運用状況などの細かいチェックといった手間が減ることや、資産運用に不安がある人に向いているとされます。ただし、途中解約時には元本割れのリスクがあることや、契約時点で受け取る年金額を決める定額型保険はインフレとなった場合、資産の価値が目減りする可能性もあり注意が必要です。
下図はiDeCoと企業型DC、個人年金保険を比較したものです。税制優遇や資産形成を重視するのであればiDeCoや企業型DC、保障を重視するのであれば個人年金保険がより適していると言えそうです。また、併用することも可能であり、両者のメリットで補完し合いバランスよく老後の資金を積み立てていくことで、有効的に活用することができそうです。
*資産残高に対して別途特別法人税が課税されますが、現在凍結中です。
通常、金融商品の運用益などは課税の対象となります。
iDeCo | 企業型DC | 個人年金保険 | |
---|---|---|---|
制度形態 | 私的年金制度(確定拠出型) | 私的年金制度(確定拠出型) | 私的年金保険商品(定額・変額) |
加入対象 | 20歳~65歳 (3年以内に上限を70歳に) |
70歳未満 実施企業に勤務する従業員 |
各保険会社で異なる (下限は0歳から) |
掛金 | 加入者が拠出(※1) | 事業主が拠出 加入者が拠出(※2) |
加入者が拠出 |
運用者 | 加入者自身 | 加入者自身 | 保険会社 |
途中 引き出し |
原則60歳まで不可 | 原則60歳まで不可 | 途中解約可能 元本割れのリスクあり |
税制優遇 | 掛金:全額所得控除 運用益:非課税 受取時:公的年金等控除、退職所得控除 |
掛金(加入者掛金):全額所得控除 運用益:非課税 受取時:公的年金等控除、退職所得控除 |
掛金:生命保険料控除 受取時:公的年金等控除、退職所得控除 |
死亡 給付金 |
死亡時は死亡一時金として受け取り | 死亡時は死亡一時金として受け取り | 死亡保障あり (一般型、生存保障重視型など) |
※1「iDeCo+」(中小事業主掛金納付制度)を利用する場合は事業主も拠出可能
※2企業型年金規約に定めた場合は加入者も拠出可能
(出所)各種資料を基に三井住友トラスト・アセットマネジメント作成
令和7年度(2025年度)の税制改正大綱では、iDeCoの掛金の上限引き上げなどに関するルール変更が盛り込まれました。
大きな改正点は、iDeCoの掛金の上限引き上げです※3(下図参照)。第1号被保険者※4は掛金を最大で月額7.5万円(現行:最大6.8万円)、第2号被保険者※5は最大で月額6.2万円(現行:最大2.3万円)まで拠出できるようになります。2024年12月の制度改正に続く掛金の上限の引き上げとなります。国民年金基金連合会の資料によると、2024年12月の新規加入者数は7万2,168人と前年同月比で約2倍となっており、 2024年12月の法改正(掛金の引き上げ)の影響がでているとみられます。
これらの改正を受けてiDeCoや企業型DC、個人年金保険などの活用がさらに広がれば、国民の資産形成がより充実していくものと期待されます。
iDeCoや企業型DCは税制面のメリットが大きいですが、積み立てできる金額に限度があります。個人年金保険やその他の制度(NISA等)も併用して資金準備をしましょう。
※3iDeCoに併せて企業型DCでも限度額引き上げがある
※4日本国内に在住の20歳以上60歳未満の自営業者、農業者、学生および無職の方とその配偶者
※570歳未満の会社員や公務員など厚生年金の加入者
国民年金 加入状況 |
現行 | 改正後 |
---|---|---|
第1号被保険者 | 月額6.8万円 (国民年金基金等と合算) |
月額7.5万円 (国民年金基金等と合算) |
第2号被保険者 (企業年金※6なし) |
月額2.3万円 | 月額6.2万円 |
第2号被保険者 (企業年金あり) |
月額5.5万円 (企業年金と合算) かつ 月額2.0万円 (iDeCo上限) |
月額6.2万円 (企業年金と合算) |
※6企業が社員に対して公的年金に加えて選択的に設ける年金で「確定給付企業年金(DB)」や「企業型確定拠出年金(DC)」等がある
(出所)厚生労働省の資料を基に三井住友トラスト・アセットマネジメント作成
作成:三井住友トラスト・アセットマネジメント