内閣府による「街角景気」の調査

9月8日に公表された2025年4-6月期の実質GDP(国内総生産)成長率(2次速報値)は、季節調整済み前期比が+0.5%と、市場予想の同+0.3%を上回りました。GDPのうち5割強を占める個人消費も、市場予想(同+0.2%)を上回る同+0.4%と、小幅ながら、5期連続でプラス成長を維持しました。

食料品価格を中心とする物価上昇に賃金の上昇が追い付かない中、堅調さを示すマクロ経済指標に違和感を覚えることがあるかもしれません。ただ一方で、家計の消費動向についての前向きな動きを実感するという声も聞かれ始めています。

このような人々の景気の実感、いわゆる「街角景気」をとらえる調査に、内閣府が毎月10日前後に公表する「景気ウォッチャー調査」があります。これは、コンビニエンスストアやレストランの従業員、タクシー運転手など、「地域の景気に関連の深い動きを観察できる立場にある人々」(内閣府)を対象とする、景気の現状や方向感、先行きの見通しなどについてのアンケート調査です。この調査は、その回答の背景まで質問し、集計している点も特徴的です。

景気の実感を数値で評価、投資家も注目

集計の結果はDIと呼ばれる指標に数値化され、50を上回れば景気が「良い」、「良くなる」、50を下回れば「悪い」、「悪くなる」と判断されます。最近の「景気の現状判断DI」の動きを見ると、今年の年明けごろからは、物価上昇による消費者の節約志向の高まりや米国関税政策をめぐる不確実性などを背景に、景気判断は悪化していました。ただ足元は、2025年5月調査から9月調査まで、5カ月連続で改善しています(図1)。この背景として、春闘の結果を受けた賃金上昇や、値上げに消費者が慣れてきたことによる消費の回復、米国との関税交渉が合意に至ったことによる不確実性の低下などが指摘されています。また、9月調査では、住宅価格の上昇に対して、引き続き購入に慎重な姿勢が見られる一方で、分譲住宅に関する問い合わせや成約件数の増加を指摘する声も聞かれているようです。さらに、「景気の先行き判断DI」によると、今後2~3カ月にかけても、改善傾向が維持される見込みとなっています(図1)。

景気ウォッチャー調査は、経済状況の変化を敏感に反映する指標として投資家からも注目されています。

人々の景気の実感から局面の変化の兆しをいち早くとらえることができれば、投資に活かすことができるからです。実際、景気ウォッチャー調査の先行き判断「DI」と「株価」の騰落を見てみると、DIが上昇・下落した後で株価の動きが同調する局面が見られます(図2)。

常にこのような動きになるというわけではありませんが、人々の景気の実感に注目することで、投資のヒントが得られるかもしれません。

図1 現状判断DI・先行き判断DIの推移
(2023年1月~2025年9月、月次)のグラフ 図1 現状判断DI・先行き判断DIの推移
(2023年1月~2025年9月、月次)

(出所)内閣府のデータを基に三井住友トラスト・アセットマネジメント作成

図2 景気の先行き判断DIと日経平均株価の関係
(2021年1-3月期~2025年7-9月期、四半期※のグラフ 図2 景気の先行き判断DIと日経平均株価の関係
(2021年1-3月期~2025年7-9月期、四半期

株価は四半期の期中平均の騰落率。景気の先行き判断DI(季節調整値)は四半期平均値

(出所)Bloombergのデータを基に三井住友トラスト・アセットマネジメント作成

作成:三井住友トラスト・アセットマネジメント

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