資本効率向上へ向けて

4月3日、「コーポレートガバナンス・コード(CGコード)の改訂に関する有識者会議」(令和7年度第3回)が開催され、改訂案が事務局である金融庁から公表されました。CGコードとは、企業が中長期的に成長し、企業価値を高めていくために、どのような考え方で経営を行い、その姿勢をどのように説明していくかを示した、経営の基本的な指針です。今回の改訂におけるマーケットの注目点は、企業の「現預金の有効活用に関する検証・説明責任の明確化」です。

日本企業が利益をあまり使わずに蓄える傾向にあることについては、かねてから指摘されていました。第2回の事務局資料では、日米欧の現預金保有と投資の状況について「日本企業が有する現預金は長期間にわたり増加傾向が継続」、「他方、持続的な成長の実現に向けた投資など、経営資源の最適な配分が実現されていない」と指摘されています。

具体的な改訂案について「解釈指針」として、「取締役会は、自社の経営戦略や経営計画を踏まえ、持続的成長と中長期的な企業価値の向上に繋げるために適切なリスクテイクとなる経営資源の配分が実現されるよう、現預金を投資等に有効活用できているかを含め、不断に検証を行うべきである」と書かれています。事務局案では、取締役会の責務として現預金が適切に使われているかを検証するとなっているわけです。

従来のCGコードでは、政策保有株式(取引関係の維持や事業上の関係強化などを目的として保有される株式)について、「保有目的が適切か、保有に伴う便益やリスクが資本コストに見合っているか等を具体的に精査し、保有の適否を検証するとともに、そうした検証の内容について開示すべきである」とされていました。これにより上場企業による政策保有株の削減は大きく進み、2024年度の削減額は前年度の約1.5倍となる9兆円にまで増加しました。株式の売却によって得た資金は自社株買いや増配だけでなく、新たな投資にも振り分けられています。CGコードに強制力はないことから、当初は実行に関して疑問視する見方もありましたが、結果として資本の有効活用という意味では、大きな成果を上げました。今回の改訂では、資本効率の向上を企業の現預金に求めた形となります。

企業の自主防衛が利益剰余金の増加に

日本企業の純利益の振り分け方を見てみると、リーマンショックの後から利益剰余金(いわゆる社内留保、現預金以外の資産も含む)を増やすようになりました。リーマンショックでは資金繰りの悪化による破綻が相次ぎ、現預金などを厚めに保有していたがゆえに破綻を免れたケースもありました。これが教訓となって企業の現預金保有が加速したとみられます。企業にとっては自主防衛という訳です。法人企業統計でリーマンショック前のピークである2006年と2024年の利益の使い道を比べると、税引前当期純利益が約2.3倍に増えているなか、配当は約2.5倍となっているのに対し、利益剰余金は約4.2倍と大幅に増加しています。

今後はショックへの備えも考慮しつつ、現預金の適切な保有をすすめることで、企業自らによる成長投資の推進が期待されます。

作成:三井住友トラスト・アセットマネジメント

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