定年後はどうする?定年退職後の仕事・お金・手続きについて解説
2026年10月1日
定年が近付くにつれ、「仕事は続けるべきか、それとも引退するべきか」「退職金や年金だけで生活できるのか」など、悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
定年後は、仕事や収入、生活環境が大きく変化するため、事前に必要な知識を身に付けて準備を進めることが大切です。
この記事では、定年退職後の働き方やお金の管理方法、年金や保険といった各種手続きについて分かりやすく解説します。
この記事で分かること
- 定年は原則60歳以上だが、継続雇用制度を利用すれば希望次第で65歳までは同じ会社で働き続けることができる
- 再雇用制度を利用して同じ会社で働き続けると、定年前よりも給与が低くなる傾向がある
- フルタイムで働くのが難しい場合は、パート・アルバイトやシルバー人材センターを利用して働くという方法もある
- 定年後に現役時代と同じ支出を続けていると、想定より早く貯蓄が減り老後資金が不足する可能性がある
- 退職金や年金の受け取り方などで迷った際は、専門家に相談することで自分に合った資金計画を立てられる場合がある
定年は何歳?60歳・65歳・70歳で変わること
定年年齢は「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(高年齢者雇用安定法)」をもとに、企業ごとに就業規則で定められます。
- 60歳:定年の下限
- 65歳:雇用確保義務
- 70歳:就業機会確保の努力義務
まずは、定年年齢に関する基本的なルールを確認しておきましょう。
定年年齢は原則60歳以上
高年齢者雇用安定法第8条では、事業主が定年制を設ける場合、その年齢を60歳未満とすることは認められていません。
そのため、日本では定年年齢は原則60歳以上とされており、多くの企業では60歳または65歳を定年年齢として設定しています。
65歳までの雇用確保措置が義務化
高年齢者雇用安定法第9条では、65歳未満を定年としている事業主に対し、次のいずれかの雇用確保措置を講じることが義務付けられています。
- 65歳までの定年引上げ
- 65歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度など)の導入
- 定年制の廃止
雇用確保措置は、老齢厚生年金の支給開始年齢が段階的に65歳へ引き上げられたことに伴い、年金受給までの生活を支える目的で整備されました。
2006年の法施行以降、対象年齢は段階的に引き上げられ、2013年4月には65歳までの雇用確保が義務化されています。
また、継続雇用制度では、労使協定によって対象者を限定する仕組みが廃止され、現在は原則として希望する従業員全員を65歳まで雇用する措置を講じることが義務化されました。
70歳までの就業機会確保の動き
2021年4月には、少子高齢化による労働力不足や、健康寿命の延伸などを背景に、70歳までの就業機会を確保するための制度が導入されました。
事業主には、以下のいずれかの措置を講じる努力義務が課されています。
- 70歳までの定年年齢の引上げ
- 定年制の廃止
- 70歳までの継続雇用制度の導入
- 70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入
- 70歳まで継続的に社会貢献事業に従事できる制度の導入
65歳までの雇用確保は法律上の義務ですが、70歳までの就業機会の確保は努力義務です。
ただし、実際には人手不足への対応や熟練人材の活用を目的として、70歳まで働ける制度を導入する企業は年々増えています。
定年を迎える前に考えるべきことは?
定年後の生活を安心して迎えるためには、退職が近付いてから慌てるのではなく、早い段階から準備を進めることが大切です。
ここでは、定年前に考えておきたい「仕事」「お金」「手続き」の3つのポイントについて解説します。
仕事をどうするか
まず考えておきたいのが、定年後の働き方です。
定年後も継続雇用制度を活用して働き続けるのか、それとも退職するのかによって、収入や生活スタイルは大きく変わります。
何歳まで働きたいのか、どのような暮らしを送りたいのかを整理し、自分に合った働き方を考えておきましょう。
お金をどう管理するか
定年後は現役時代より収入が減るケースが多いため、収支の見通しを立てておくことも重要です。
退職金をどのように活用するか、年金をいつから受け取るか、毎月の生活費はいくら必要になるかを整理し、無理のない資金計画を立てましょう。
医療費や介護費、住宅ローンなど、将来発生が見込まれる支出も考慮しておくと安心です。
お金の管理について、詳しくは後述します。
必要な手続きを確認する
定年退職後は、以下のようなさまざまな公的手続きが必要になります。
定年退職後に必要な主な手続き
- 健康保険の手続き
- 年金の手続き
- 雇用保険(失業給付)の手続き
- 税金に関する手続き
手続きには期限が設けられているものもあるため、必要な書類や申請先を事前に確認し、計画的に準備を進めておきましょう。
詳しくは後述します。
定年後の仕事はどうする?
定年後の働き方に正解はありません。
健康状態や家計の状況、ライフプランに合わせて選ぶことが大切です。
続いては、定年後の主な働き方を紹介します。
再雇用制度を利用して働く
定年後も同じ会社で働き続けたい場合は、継続雇用制度を利用する方法があります。
継続雇用制度は、主に以下の2種類です。
| 継続雇用制度の種類 | 概要 |
|---|---|
| 再雇用制度 | 定年退職後に新たな雇用契約を結び、引き続き勤務する制度 |
| 勤務延長制度 | 退職せずに雇用契約を継続したまま勤務を続ける制度 |
多くの企業では再雇用制度が採用されています。
再雇用後も同じ会社で働き続けられるものの、新たに雇用契約を結ぶため、雇用形態や給与、役職、勤務日数などの労働条件が見直されるのが一般的です。
特に給与は定年前より低くなるケースが多いため、再雇用後の収入や勤務条件を事前に確認し、年金や退職金も踏まえて生活設計を考えておくことが大切です。
再就職または起業する
定年を機に、新しい職場へ再就職したり、これまでの経験や資格を生かして起業・独立したりする方もいます。
再就職する場合、専門知識やマネジメント経験が評価されれば、再雇用より好条件で働ける可能性もあるでしょう。
起業や独立の場合も、自分の経験や人脈を生かした働き方が可能です。近年は、業務委託やフリーランスとして活動する方も増えています。
ただし、起業・独立には資金や時間が必要になるため、退職金を充てる場合は老後資金とのバランスを考慮し、無理のない事業計画を立てることが重要です。
アルバイト・シルバー人材などで働く
「フルタイムで働くのは体力的に難しい」「趣味や家族との時間も大切にしたい」という方は、パート・アルバイトや派遣社員、シルバー人材センターを利用した働き方も選択肢の一つです。
収入は現役時代より少なくなる傾向がありますが、年金を受け取りながら生活費を補うことができます。
また、無理のない範囲で働くことで生活リズムを維持しやすく、健康的な生活や社会とのつながりにもなるでしょう。
働かずにセカンドライフを楽しむ
十分な老後資金を確保できている場合は、働かずにセカンドライフを楽しむという過ごし方もあります。
趣味や旅行、ボランティア活動、地域活動、家族との時間など、仕事中心だった現役時代にはできなかったことに取り組めるのは、定年後ならではの魅力です。
ただし、収入源が年金や資産運用などに限られる場合は、生活費や医療費、介護費なども見据えた長期的な資金計画が必要になります。
安心してセカンドライフを送るためにも、将来の支出を見据えて計画的に生活設計を行いましょう。
定年退職後のお金はどう管理する?
定年退職後は、現役時代より収入が減少するケースが多いため、これまで以上に計画的なお金の管理が重要になります。
退職金や年金をどのように活用するか、毎月の生活費はどれくらいになるのかなど、将来的な収支の見通しを立てておくことが大切です。など、将来的な収支の見通しを立てておくことが大切です。
老後の生活費を把握する
無理のない資金計画を立てるためには、老後の生活費がどの程度必要なのかを把握することも重要です。
退職金の使い道についても、事前に計画を立てておきましょう。
総務省統計局の「家計調査報告 家計収支編 2025年(令和7年)平均結果の概要」によると、65歳以上の夫婦のみの無職世帯における1カ月あたりの消費支出の平均額は263,979円です。
65歳以上の夫婦のみの無職世帯の消費支出(月平均)
| 項目 | 金額 | 割合 |
|---|---|---|
| 食料 | 78,964円 | 29.9% |
| 住居 | 17,739円 | 6.7% |
| 光熱・水道 | 23,540円 | 8.9% |
| 家具・家事用品 | 11,237円 | 4.3% |
| 被服及び履物 | 5,354円 | 2.0% |
| 保健医療 | 17,941円 | 6.8% |
| 交通・通信 | 31,325円 | 11.9% |
| 教養娯楽 | 26,538円 | 10.1% |
| その他(交際費など) | 51,341円 | 19.4% |
| 消費支出合計 | 263,979円 | 100% |
出典:総務省統計局「家計調査報告 家計収支編 2025年(令和7年)平均結果の概要」
ただし、この金額はあくまで平均値です。
持ち家か賃貸か、住宅ローンはあるか、夫婦二人暮らしか一人暮らしかなどによって必要な生活費は大きく変わります。
まずは現在の家計を整理し、定年後に減る支出と増える支出を洗い出した上で、年金収入や退職金で不足分をどのように補うのかを検討することが大切です。
公的年金の受け取り方を確認する
老後の生活を支える収入の柱となるのが、公的年金です。
老齢基礎年金と老齢厚生年金は、原則として65歳から受給できます。
受給予定額は、日本年金機構の「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」で確認できます。
また、公的年金は受給開始時期を変更することも可能です。
年金の繰上受給・繰下受給の概要
| 受給方法 | 内容 |
|---|---|
| 繰上受給 | 60〜64歳の間に受給を開始する方法。 受給開始を早める代わりに年金額は減額される。 |
| 繰下受給 | 66〜75歳まで受給開始を遅らせる方法。 受給開始を遅らせる代わりに年金額は増額される。 |
一度決定した減額率・増額率は原則として一生涯変わらないため、健康状態や就労予定、貯蓄額などを踏まえて慎重に判断することが大切です。
iDeCo(個人型確定拠出年金)や個人年金保険などの私的年金に加入している場合は、それぞれの受給開始時期や受取方法についても確認しておきましょう。
退職金を活用する
退職金は、老後の生活を支える大切な資金です。
収支の見通しを立てるためにも、実際に受け取れる退職金の手取額を把握しておきましょう。
退職金には所得税や住民税が課税されますが、「退職所得控除」が適用され、税負担が軽減される仕組みがあります。
また、一時金と年金形式では課税方法が異なるため、受取方法も含めて勤務先の制度を確認しておくことが大切です。
退職金の使い道についても、事前に計画を立てておきましょう。
住宅ローンの返済やリフォーム、老後資金としての預貯金、資産運用など、さまざまな選択肢がありますが、将来の医療費や介護費などに備えて一定の資金を手元に残しておくと安心です。
定年退職後に必要な手続きは?
定年退職後は、健康保険や年金、税金などの手続きが必要になります。
ここから、定年退職後に必要となる主な手続きを紹介します。
健康保険の手続き
退職すると、それまで加入していた勤務先の健康保険の資格を失うため、新たな健康保険へ加入する必要があります。
健康保険の主な加入方法
- 任意継続被保険者制度を利用する
- 国民健康保険に加入する
- 家族が加入する健康保険の被扶養者になる
どの方法を選ぶかによって保険料や加入条件、手続き期限が異なります。
例えば、任意継続被保険者制度は原則として退職日の翌日から20日以内に申請しなければ利用できません
なお、再雇用や再就職によって新たな勤務先で社会保険に加入する場合は、その勤務先の健康保険に加入するのが一般的です。
年金の手続き
定年退職によって厚生年金の加入資格を失う場合、本人は60歳以上のため国民年金への加入義務はありません。
ただし、60歳未満の配偶者を扶養している場合は、配偶者の第3号被保険者から第1号被保険者への切り替え手続きを退職日の翌日から14日以内に行う必要があります。
さらに、老齢年金は受給開始年齢に達しても自動的に振り込まれるわけではありません。受給するためには、日本年金機構へ年金請求の手続きを行う必要があります。
受給開始年齢が近付くと、日本年金機構から「年金請求書」が送付されるため、必要事項を記入し、本人確認書類や振込先口座が確認できる書類などを添えて提出しましょう。
雇用保険(失業給付)の手続き
定年後も再就職を希望する場合は、一定の条件を満たせば雇用保険の失業給付を受給できます。
受給を希望する場合は、離職票などを持参してハローワークで手続きを行いましょう。
65歳未満で離職した場合は「失業給付(基本手当)」、65歳以上で離職した場合は「高年齢求職者給付金」が支給されます。
また、65歳未満で受給する「特別支給の老齢厚生年金」と失業給付は同時に受給できないため、年金の受給開始時期にも注意が必要です。
ハローワークで求職の申し込みを行うと年金が支給停止となるため、ご自身の状況に合わせて手続きのタイミングを検討しましょう。
税金に関する手続き
定年退職後は、退職金や住民税、所得税などに関する手続きも確認しておきましょう。
退職金を受け取る際は、勤務先へ「退職所得の受給に関する申告書」を提出するのが一般的です。
これにより、退職所得控除などが適用された上で源泉徴収が行われるため、原則として確定申告は不要となります。
住民税は前年の所得をもとに課税されるため、退職後に収入が減少した場合でも、翌年は現役時代の所得に応じた住民税を納める必要があります。
また、退職後は給与からの天引き(特別徴収)ではなく、納付書や口座振替で納付するケース(普通徴収)が一般的です。
年の途中で退職し、その年中に再就職しなかった場合は年末調整が行われません。
そのため、医療費控除や生命保険料控除などの適用を受ける場合は、自分で確定申告を行う必要があります。
納めすぎた所得税が還付されることもあるため、忘れずに確認しましょう。
定年後の生活を安心して迎えるために準備しておきたいこと
自分らしいセカンドライフを送るためには、退職後の働き方やお金、暮らし方について早めに考え、計画的に準備を進めることが大切です。
最後に、定年前に取り組んでおきたい3つのポイントを紹介します。
定年前から家計を見直す
定年後は、給与収入が減少するケースが多いため、現役時代と同じ支出を続けていると、想定より早く貯蓄が減ってしまいます。
毎月の支出を見直し、固定費を整理するなど、収入の変化を見据えた家計管理を始めておくことが大切です。
老後のライフプランを整理する
定年後の暮らし方についても、前もって検討しておきたいポイントです。
どこに住むのか、何歳まで働くのか、どのような趣味を楽しみたいのかなどを整理しておくと、必要な老後資金も見えやすくなります。
配偶者がいる場合は、お互いの希望を話し合っておくことも大切です。
困ったときは専門家に相談する
退職金や年金の受け取り方、退職金を活用した老後資金の運用方法など、判断に迷う場合は、ファイナンシャル・プランナーや金融機関などの専門家に相談するのも有効です。
第三者の視点からアドバイスを受けることで、自分に合った資金計画を立てやすくなり、将来への不安を軽減できるでしょう。
定年退職を迎える前に相談しておくと、余裕を持って準備を進められます。
定年退職後の生活を見据えて今から準備を始めよう
定年後の暮らしを充実させるためには、自分に合った働き方や老後資金、退職後に必要な手続きについて早めに整理しておくことが大切です。
計画的に準備を進めることで、自分らしいセカンドライフを迎えやすくなるでしょう。
三井住友信託銀行では、退職金の活用方法や年金の受け取り方、老後資金の運用・管理など、定年前後のお金に関するご相談を承っています。
一人ひとりのライフプランに合わせたご提案を行っていますので、将来に向けた資金計画についてお悩みの際は、お気軽にご相談ください。
※この記事は2026年7月末時点の情報に基づいています。
監修者紹介
監修者 金子 賢司
資格 CFP®資格
プロフィール
東証一部上場企業(現在は東証スタンダード)で10年間サラリーマンを務める中、業務中の交通事故をきっかけに企業の福利厚生に興味を持ち、社会保障の勉強を始める。以降ファイナンシャル・プランナーとして活動し、個人・法人のお金に関する相談、北海道のテレビ番組のコメンテーター、年間約100件のセミナー講師なども務める。趣味はフィットネス。健康とお金、豊かなライフスタイルを実践・発信している。