転職時は社会保険(健康保険・厚生年金)の切り替えに注意!手続きの流れを紹介

転職する際は、社会保険(健康保険・厚生年金)の切り替えに注意が必要です。

切り替えのタイミングや手続き方法を間違えると、保険が一時的に使えなくなったり、年金記録に不備が生じたりする場合があります。

とはいえ、社会保険の切り替えについて、具体的に何をしたら良いのか分からない人も多いのではないでしょうか。

この記事では、転職時に押さえておきたい社会保険の基本知識として、スムーズに切り替えるための手続きの流れを分かりやすく解説します。

転職時に必要な社会保険(健康保険・厚生年金)手続きの流れ

封筒の書類を開封する画像

転職時に必要な社会保険(健康保険・厚生年金)の手続き方法は、前職の退職日と新しい職場への入社日の間に離職期間があるかどうかで異なります。

まずは、「離職期間がない場合」と「離職期間がある場合」に分けて、社会保険を切り替える際の流れを見ていきましょう。

すぐに転職する場合(離職期間なし)

前職を退職した翌日から新しい職場に勤務する場合、健康保険や厚生年金の資格は自動的に切り替わります。

個人での切り替え手続きは基本的に不要ですが、退職時と入社時にそれぞれ以下の対応が必要です。

健康保険証を返却する

退職時には、勤務先から交付されていた健康保険証を返却します。

退職者本人分だけでなく、その被扶養者(配偶者や子どもなど)の保険証も全て回収する必要があります。

紛失している場合は、速やかに会社に申し出ましょう。

転職先に必要書類を提出

新しい職場では、社会保険の加入手続きを行うために「マイナンバー確認書類」の提出を求められます。

マイナンバー確認書類は、マイナンバーカードのコピーや、スマートフォンで撮影した画像データを提出するケースが一般的です。

扶養家族がいる場合は、被扶養者のマイナンバーや、続柄・生計関係を証明する書類(住民票や所得証明書など)の提出を求められることもあるため、あらかじめ準備しておくと安心です。

マイナ保険証の発行が完了

2024年12月2日以降、従来の健康保険証は新規発行が終了し、マイナンバーカードに保険証機能を付与した「マイナ保険証」の利用が基本となりました。

そのため、転職先で保険手続きが完了しても、新しい保険証は交付されません。

マイナ保険証を使うには、事前にオンラインでの登録が必要です。退職前または入社直後に手続きを済ませておきましょう。

すぐに転職しない場合(離職期間あり)

退職後すぐに転職せず、一定の離職期間がある場合は、健康保険や年金に関する手続きを自分で行う必要があります。

自動で切り替わることはないため、手続き漏れがないよう注意しましょう。

健康保険証を返却する

離職期間の有無に関係なく、退職時には健康保険証を会社に返却します。

退職前に使用していた健康保険証をそのまま使い続けることはできないため、退職者本人とその被扶養者(配偶者や子どもなど)の分も含めて、速やかに返却しましょう。

健康保険の手続きをする

離職期間中の健康保険については、以下のいずれかの方法で対応します。

  • 1.
    国民健康保険に加入する(お住まいの市区町村で手続き)
  • 2.
    健康保険任意継続制度を利用する(退職前の健康保険を最長2年間継続できる)
  • 3.
    家族の健康保険の扶養に入る

どの方法が適しているかは、収入状況や家族構成、離職期間の長さによって変わります。

保険料の負担や保障内容を比較した上で、ライフスタイルに合ったものを選びましょう。

また、健康保険任意継続制度の利用には以下の条件を満たす必要があります。

  • 1.
    資格喪失日の前日(退職日)までに継続して2カ月以上の被保険者期間があること
  • 2.
    資格喪失日から20日以内に、「任意継続被保険者資格取得申出書」を提出すること

退職せず、勤務時間・日数の減少により健康保険の資格を喪失した場合も該当します。

申請期限を過ぎると加入できなくなってしまうため、早めに判断しましょう。

マイナ保険証の発行が完了

2024年12月2日以降は、従来の健康保険証は新規発行されず、マイナンバーカードに健康保険証の機能を紐付けた「マイナ保険証」の利用が原則となりました。

国民健康保険の加入や任意継続、家族の健康保険の扶養のいずれを選んだ場合も、新たに健康保険証が発行されることはありません。

マイナ保険証の利用には事前登録が必要なので、離職前にマイナポータルなどで登録しておくと安心です。

国民年金の手続きをする

会社を退職すると、厚生年金の被保険者ではなくなり、代わりに国民年金への加入が義務となります。

住民票のある市区町村の役所にて、退職後14日以内に手続きを行いましょう。

年金の未加入期間があると、将来の老齢年金や障害年金の受給に影響を与える可能性があります。

万が一、保険料の支払いが困難な場合は「保険料免除制度」※1や「保険料納付猶予制度」※2も利用可能です。

※1保険料免除制度:本人・世帯主・配偶者の前年所得(1月から6月までに申請する場合は前々年所得)が一定額以下の場合や失業した場合など、保険料を納めることが経済的に困難な場合は、ご本人が申請書を提出し、承認されると保険料の納付が免除される制度

※2保険料納付猶予制度:20歳以上50歳未満の方で、本人・配偶者の前年所得(1月から6月までに申請する場合は前々年所得)が一定額以下の場合には、ご本人が申請書を提出し、承認されると保険料の納付が猶予される制度

転職先に必要書類を提出

転職先が決まったら、入社時に「マイナンバー確認書類」の提出を求められます。

扶養家族がいる場合は、家族全員分のマイナンバーカードをあらかじめ準備しておくとスムーズです。

続柄・生計関係を証明する書類(住民票や所得証明書など)の提出を求められることもあるため、必要書類は事前に確認しておきましょう。

新しい会社で健康保険の加入手続きが完了

入社後は、新しい会社が健康保険および厚生年金の加入手続きを行います。

手続きが完了すれば、再び社会保険に加入した状態となり、国民健康保険・国民年金から切り替わることになります。

社会保険料は給与から天引きされる形で納めるため、個人での支払手続きは不要です。

国民健康保険の脱退手続き

新しい会社で社会保険への加入が完了しても、国民健康保険は自動的に脱退(資格喪失)にはなりません。

住民票のある市区町村役所で「国民健康保険脱退(喪失)手続き」を行う必要があります。

手続きをしないまま放置すると、保険料が継続して課される可能性があるため注意が必要です。

原則として、新たな健康保険の加入日から14日以内に手続きをしましょう。

転職時に社会保険(健康保険・厚生年金)の切り替えを放置するとどうなる?

悩みながらパソコンを眺める男性の画像

転職時に必要な社会保険(健康保険・厚生年金)の切り替え手続きを放置すると、思わぬトラブルに発展する可能性があります。

この先では、社会保険の切り替え手続きをしないとどうなるのか、起こりうる主なリスクを紹介します。

国民年金への強制加入通知が届く

日本国内に住む20歳以上60歳未満の全ての人は、原則として国民年金に加入する義務があります。

そのため、厚生年金の資格を喪失したにもかかわらず、国民年金への加入手続きをしないままでいると、市区町村や日本年金機構から「届出はお済みですか(国民年金加入のご案内)」という通知が届きます。

健康保険も同様で、退職日の翌日から国民健康保険への加入が必要です。

切り替え手続きをしなくても、自動的に国民健康保険の被保険者となり、保険料も発生します。

医療費が全額自己負担になる可能性がある

健康保険の切り替えを怠り、無保険の状態で医療機関を受診すると、通常は3割負担で済む医療費を全額自己負担することになります。

後から国民健康保険に加入すれば、その期間にさかのぼって加入扱いとなるケースもありますが、保険料も退職日の翌日にさかのぼって請求されるため、数カ月分の保険料をまとめて支払わなければいけません。

「あとで手続きをすれば良い」と思って放置していると、保険料と医療費の両方が重なり、大きな負担になる可能性があります。

転職に伴う社会保険の切り替えは、早めの手続きを心がけましょう。

すぐに保険証が使えない可能性がある

転職後に新しい会社で社会保険の加入手続きをしても、すぐに保険証が使えるとは限りません。

特にマイナ保険証を利用する場合、加入情報がシステムに反映されるまでに1週間程度かかることがあり、切り替え中に医療機関を受診した場合、医療費を全額自己負担しなければならない可能性があります。

ただし、これは一時的な負担です。後日、「療養費の支給申請」を行うことで、自己負担分(通常3割)を除いた残りの医療費は健康保険から払い戻しを受けることが可能です。

領収書や診療明細書などの提出が必要になるため、受診後の書類は必ず保管しておきましょう。

年金保険料の未納で将来の年金額が減る

退職後、国民年金への切り替え手続きを忘れてしまうと、保険料が未納扱いとなり、将来の老齢基礎年金の受給額が減る可能性があります。

老齢基礎年金は納付期間が長いほど受給額が多くなるため、未納期間があるとその分だけ将来の生活設計に影響をおよぼします。

また、障害基礎年金や遺族基礎年金には、直近1年間または全体の3分の2以上の納付要件が設けられています。

未納期間があると、これらの年金が支給されないリスクもあるため、万が一の備えとしても、早めに手続きを行いましょう。

延滞金や追徴金が発生する可能性がある

社会保険の切り替えをせず、国民健康保険や国民年金の保険料を未納のままにしていると、延滞金が加算されることがあります。

最初は催促通知ですが、放置が続くと最終的に財産差し押さえなどの強制徴収に発展するケースもあるため注意が必要です。

転職時には社会保険(健康保険・厚生年金)の切り替えを忘れずに!

スーツを着た女性の画像

転職の際に必要な社会保険(健康保険・厚生年金)の切り替えは、退職から入社までに空白期間があるかどうかによって手続き方法が異なり、自分の状況に応じた対応が求められます。

手続きを放置すると、医療費が全額自己負担になる、将来の年金額が減る、保険料の未納により延滞金が加算されるなど、思わぬ不利益を被る可能性があるため、早めに手続きを済ませておくのがおすすめです。

また、転職は収入や支出が変動するタイミングでもあるため、社会保険の切り替えと合わせて、マネープランやライフプランを見直す良い機会にもなります。

保険料や転職後の新しい収入、将来の年金受給額をシミュレーションして、資金計画を立ててみてはいかがでしょうか。

この記事は2025年8月末時点の情報に基づいています

監修者紹介

監修者 金子 賢司

資格 CFP®資格

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​​プロフィール
​​東証一部上場企業(現在は東証スタンダード)で10年間サラリーマンを務める中、業務中の交通事故をきっかけに企業の福利厚生に興味を持ち、社会保障の勉強を始める。以降ファイナンシャル・プランナーとして活動し、個人・法人のお金に関する相談、北海道のテレビ番組のコメンテーター、年間約100件のセミナー講師なども務める。趣味はフィットネス。健康とお金、豊かなライフスタイルを実践・発信している。​

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