再就職手当・失業給付金とは?受け取るための条件と注意点を解説

会社を辞めた後、次の仕事が見つかるまでの生活を支える「失業給付金」や、早期に就職した場合にもらえる「再就職手当」は、雇用保険に加入していた方が利用できる代表的な公的制度です。

ただし、受給するには所定の条件や手続きがあり、知らずに行動すると本来もらえるはずの給付が受けられない場合もあります。

この記事では、失業給付金・再就職手当の仕組みや受給条件、申請する際の注意点について、分かりやすく解説します。

失業給付金とは?

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失業給付金は、正式名称を「失業等給付」と言い、労働者が失業した場合や雇用の継続が困難になった場合に、生活の安定と再就職支援を目的として給付される公的制度です。

雇用保険に一定期間加入していた方が対象となります。

失業等給付は、以下の4種類に分類されます。

失業等給付の種類 概要
求職者給付 失業中の生活費を支える「基本手当」など
就職促進給付 早期再就職を支援する「再就職手当」など
教育訓練給付 資格取得やスキルアップのための費用を一部支給
雇用継続給付 高年齢雇用継続給付、育児休業給付、介護休業給付など

一般的に「失業給付金」と呼ばれるのは、上記のうち「求職者給付の基本手当」を指すことが多いです。

離職によって収入が途絶えた期間も、生活の安定を確保しながら、求職活動を行うための資金として支給されます。

受給期間は原則、離職日の翌日から1年間で、その間に所定の認定日ごとに求職活動の実績を報告する必要があります。

1日あたりの給付額は離職前6カ月間の賃金総額を180で割って算出した「賃金日額」に、給付率(50~80%)をかけて計算されます。

給付率は、賃金や年齢などによって変わります。

60~64歳の方は45~80%

失業給付金の受給要件

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失業給付金を受け取るためには、生活の安定と再就職を支援するための最低条件である以下を全て満たす必要があります。

  • 雇用保険の被保険者期間が一定以上ある
  • 「失業の状態」にある
  • ハローワークに求職を申し込んでおり、求職活動中である

それぞれの要件について、詳しく説明します。

①雇用保険の被保険者期間が一定以上あること

失業給付金を受けるには、離職前に雇用保険に一定期間、加入していた実績が必要です。

必要な被保険者期間の条件は、離職理由によって異なります。

必要な被保険者期間
自己都合退職の場合 離職の日以前2年間に通算12カ月以上
会社都合退職の場合(倒産・解雇など) 離職の日以前1年間に通算6カ月以上

ここでいう「1カ月」とは、賃金支払基礎日数が11日以上ある月を指します。

パート・アルバイトでも、条件を満たせば対象となります。

②失業状態にあること

失業給付金を受給できるのは、「失業の状態」にある場合のみです。

失業の状態とは、「働く意思と能力があり、求職活動をしているにもかかわらず職業に就けない状態」を指します。

就職する意思があっても、病気やけが、妊娠・出産、育児などによりすぐに働けない場合や、就職の意思がなく恒常的に働けない場合は、失業の状態とは認められないことがあります。

③ハローワークに求職を申し込み、活動中であること

ハローワークで求職申込と求職者登録を行い、継続的に就職活動をしていることも必須条件です。

受給期間中は4週間ごとの「失業認定日」に、応募企業や面接などの実績を報告します。

失業認定日までに就職活動の実績が確認できない場合、その月の失業給付金は支給されません。

特に再就職手当を希望する場合は、失業等給付の「基本手当」の受給資格者であることが前提のため、計画的に活動を記録しておくことが大切です。

再就職手当とは?

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再就職手当とは、失業等給付の「基本手当」の受給資格を持つ方が、所定の支給日数を残したまま早期に安定した職業に就くか、事業を開始した場合などに支給される給付金です。

安定した職業とは、雇用期間が1年を超えることが見込まれる正社員や契約社員などを指しますが、要件を満たしていれば、パートやアルバイトでも受給できます。

再就職手当の支給額は、失業等給付の「基本手当」の支給残日数と基本手当日額を基に計算され、再就職時期が早いほど給付率の割合が高くなります。

また、再就職手当は非課税であり、受給額は手取収入としてそのまま受け取れるため、再就職直後の生活資金として心強い助けになります。

再就職手当の受給要件

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再就職手当を受給するには、以下の全ての条件を満たす必要があります。

1つでも欠けると支給対象外となるため、事前にしっかり確認しておきましょう。

  • 受給手続き後、7日間の待期期間満了後に再就職している
  • 失業等給付の「基本手当」の支給残日数が、所定給付日数の3分の1以上残っている
  • 就職日前3年以内の就職について、再就職手当・常用就職支度手当の支給を受けていない
  • 再就職先で1年を超える継続雇用が確実と見込まれる(給付制限を受ける離職理由の場合:待期期間満了後1カ月間はハローワークまたは職業紹介事業者の紹介による就職先であること)
  • 離職前の会社や、その関連会社への就職ではない
  • 受給資格決定前から採用が内定していた会社ではない
  • 原則、雇用保険の被保険者資格要件を満たしている

ここからは、それぞれの受給要件について、詳しく説明します。

①待期期間満了後の再就職であること

失業等給付の受給資格決定後には、原則7日間の「待期期間」が設けられます。これは、求職者が本当に失業状態であるかを確認するための期間です。

待期期間内に就職が決まった場合は、再就職手当の対象外となります。

また、自己都合退職などの退職理由の場合には、この7日間に加えて原則1カ月間の「給付制限期間」が設けられる場合があります。

給付制限期間中は、ハローワークまたは、許可・届け出のある職業紹介事業者の紹介による就職でなければ、再就職手当の対象になりません。

過去5年以内に2回以上自己都合退職している場合など、給付制限期間が3カ月に延びるケースもあります。

②所定給付日数3分の1以上の基本手当が未支給であること

再就職手当を受給するには、就職日前日の時点で、失業等給付の「基本手当」の所定給付日数の3分の1以上が残っていることが条件です。

残日数が多いほど支給率が高くなり、支給額も増えます。

支給残日数 支給率と計算式
3分の2以上の場合 支給額=残日数×基本手当日額×70%
3分の1以上の場合 支給額=残日数×基本手当日額×60%

例えば、所定給付日数が90日で基本手当日額が6,000円かつ60日以上残して再就職した場合、以下の金額が非課税で支給されます。

60日 × 6,000円 × 70%=252,000円

③過去3年以内に再就職手当を受給していないこと

過去3年以内に再就職手当や常用就職支度手当を受給している場合は、再度の支給を受けることはできません。

再受給を希望する場合は、最後に受給した日から3年が経過している必要があります。

常用就職支度手当とは、雇用保険の受給資格がある方のうち、障がい者や高齢者など「就職が困難な方」が、安定した職業に再就職した際に受け取れる一時金です。

④1年を超える継続雇用が見込まれること

再就職先において1年を超える継続雇用が確実であることも、支給要件の一つです。

正社員はもちろん、派遣社員や契約社員でも、契約更新を前提として1年を超えて勤務する見込みがあれば対象となります。

ただし、更新が未定であったり、契約時から短期雇用を前提としていたりする場合は対象外です。

再就職手当の申請時には、雇用契約書や採用通知書など、契約期間の明記がある書類の提出を求められます。

⑤給付制限期間中は条件がある

先ほども紹介したように、自己都合退職の場合、原則1カ月間の「給付制限期間」があります。

給付制限期間中に再就職する場合は、ハローワークまたは許可・届出のある職業紹介事業者を通じた再就職のみが再就職手当の対象となります。

給付制限期間を経過した後であれば、紹介方法に制限はありません。

過去5年以内に2回以上自己都合退職している場合など、給付制限期間が3カ月に延びるケースもあります。

⑥就職先が前職の会社や関係会社でないこと

離職した会社やその関連会社(子会社・親会社・グループ会社など)に再就職する場合は、再就職手当は支給されません。

また、人事や資金、取引などで深い関係がある場合にも再就職手当の対象外と判断されることもあるため、事前に確認しておくと安心です。

⑦失業前から採用が内定していた会社でないこと

再就職手当は、あくまで「失業後の求職活動の結果として就職が決まった場合」に支給されます。

そのため、離職前や雇用保険の受給資格決定前にすでに採用が内定していた会社への就職は対象外です。

例え入社日が離職後であっても、事前内定が確認されれば再就職手当の対象外となります。

また、申請時には採用経緯や応募日を証明する書類の提出を求められることがあります。

転職先が決まってから退職した場合、失業給付金は受け取れる?

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転職先がすでに決まっている状態で退職した場合、失業の状態とみなされないため、原則として失業給付金を受け取ることはできません。

ただし、以下のような場合は例外的に受給対象となる可能性があります。

  • 内定後、再就職先の都合で入社日が大幅に遅れた場合
  • 内定が企業側の事情で取り消された場合

このような場合、一時的に「失業状態」となるため、条件を満たせば失業給付金の受給対象になります。

該当する場合は、離職票や内定通知書、取消通知などの証明書類を持参し、速やかにハローワークに相談して必要な手続きを行いましょう。

再就職手当・失業給付金の注意点

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失業給付金と再就職手当はいずれも雇用保険制度に基づく公的給付制度ですが、目的や受給要件、支給されるタイミングは異なります。

これらの違いを理解しておかなければ、申請のタイミングを誤ったり、受給できるはずの給付を逃してしまったりする可能性があるため、注意しましょう。

失業給付金 再就職手当
目的 失業期間中の生活を支えるため 早期の再就職を促進するため
受給要件
  • 働く意思と能力があり、求職活動をしているのに就職できない「失業状態」にある
  • 雇用保険の被保険者期間が一定以上ある(自己都合退職は過去2年で12カ月以上、会社都合退職は過去1年で6カ月以上)
  • 失業等給付の「基本手当」の所定給付日数が3分の1以上残っている
  • 再就職先で1年を超える継続雇用が見込まれる
  • 就職日前3年以内に再就職手当や常用就職支度手当を受給していない
  • 離職前の会社や関係会社への再就職ではない など
支給されるタイミング
  • 初回は7日間の待期期間+原則1カ月の給付制限期間(自己都合退職の場合)を経て、初回失業認定日から1週間程度で振り込まれる
  • その後も原則として4週に1回、就労の有無・求職活動の実績の確認が行われ、失業認定を受ける必要がある
再就職後にハローワークで手続き後、1.5〜2カ月後に振り込まれる

失業給付金は失業期間中に継続的に受け取れる給付金であり、再就職手当は早期の再就職を条件にまとめて受け取れる手当です。

いつ、どのタイミングでどちらを申請できるのかは、事前にしっかりと把握しておきましょう。

受給要件を満たしていても、申請時期や手続き方法を誤ると支給されないケースがあります。必要書類や手続き方法についても、ハローワークで確認しておくと安心です。

同時に受給はできない

失業給付金と再就職手当を、同時に受け取ることはできません。

再就職手当を受給すると、その分の日数は失業給付金から差し引かれますが、支給残日数がある場合、受給期間内に再び失業状態になれば、残りの失業給付金を受け取ることができます。

不正受給はペナルティが課される

失業給付金や再就職手当を不正に受給した場合、以下のような厳しいペナルティがあります。

不正受給のペナルティ 概要
給付停止 不正行為後、一切の支給が停止
全額返還 不正受給した分は全額返還命令
納付命令(3倍返し) 悪質な場合、返還額とは別に、不正受給額の2倍以下の金額の納付命令

典型的な不正受給例としては、すでに就職しているにもかかわらず失業状態と偽って申告する、実際に行っていない求職活動を「失業認定申告書」に記載して活動実績を装う、といったケースが挙げられます。

特に、再就職が決まった場合は速やかにハローワークへ報告することが重要です。

入社日や雇用契約内容を申告せずに失業給付金を受け取った場合、故意でなくても不正受給と判断されることがあります。

再就職手当・失業給付金を上手に活用しよう

スーツを着た女性・男性たちの後ろ姿

失業給付金と再就職手当は、いずれも離職後の生活を支え、安定した再就職を後押しするために受けられる給付金です。

ただし、目的や受給要件、支給時期が異なり、同時に受給することはできません。

制度を上手に活用するには、ご自身の退職理由や残りの給付日数などを正確に把握し、ハローワークで必要な申請手続きを行うことが大切です。

必要書類や申請手続きに不備があった場合、本来受け取れるはずの給付金を逃してしまう可能性もあるため、注意が必要です。

失業給付金と再就職手当の違いを正しく理解し、計画的に申請・受給することで、生活の安定を図り、スムーズなキャリア再スタートにつなげましょう。

この記事は2025年8月末時点の情報に基づいています

監修者紹介

監修者 金子 賢司

資格 CFP®資格

金子賢司氏の写真

​​プロフィール
​​東証一部上場企業(現在は東証スタンダード)で10年間サラリーマンを務める中、業務中の交通事故をきっかけに企業の福利厚生に興味を持ち、社会保障の勉強を始める。以降ファイナンシャル・プランナーとして活動し、個人・法人のお金に関する相談、北海道のテレビ番組のコメンテーター、年間約100件のセミナー講師なども務める。趣味はフィットネス。健康とお金、豊かなライフスタイルを実践・発信している。​

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