団信(団体信用生命保険)とはどんな制度?団信と生命保険を上手に併用するポイント

目次
住宅ローンを契約する際、よく耳にする「団信(団体信用生命保険)」は、返済中に契約者が死亡したり、高度障害を負ったりした場合に、残りのローンを完済できる制度です。
すでに生命保険に加入している場合、団信との使い分けや保障内容の重複が気になる方も多いのではないでしょうか。
この記事では、団信の仕組みや特徴、生命保険との違いを解説した上で、効果的に併用する方法や見直しのポイントを紹介します。
団信(団体信用生命保険)とは?

団信(団体信用生命保険)とは、住宅ローンの契約者が返済期間中に死亡したり、高度障害状態になって返済が困難になったりした場合、残りの住宅ローン残高を保障する制度です。
契約者本人の負担だけでなく、遺された家族に負担が残らないようにする役割があります。住宅ローンの契約時には団信に加入するのが一般的です。
団信の加入には審査があるため、告知の内容により、保険会社が加入をお断りする場合があります。
また、住宅ローンの借換時にも新規の借り入れと同様に団信ご加入のための審査が必要になるため、希望通りに借り換えられない可能性も考慮しましょう。
一般的な団信に加えて、ガンや心筋梗塞、脳卒中などの三大疾病を含む八大疾病に備える疾病保障特約などを選ぶことも可能です。
住宅ローン契約時の融資条件
民間金融機関が提供する多くの住宅ローンでは、団信への加入が融資の必須条件となっています。
団信に加入できなければ、ローン契約自体が成立しないことも少なくありません。
これは、金融機関が契約者の死亡や高度障害による返済不能リスクを避けるための措置です。
団信の保険料は、ほとんどの場合ローン金利に含まれており、別途支払う必要はありません。
ただし、特約保障などを付けて保障内容を手厚くする場合には、金利が0.1%〜0.4%程度上乗せされることが一般的です。
フラット35の場合
住宅金融支援機構と民間金融機関が提携して提供する全期間固定金利型の住宅ローン「フラット35」は、健康上の理由その他の事情で団信に加入されない場合も利用可能です。
団信に加入しない場合は金利がやや低くなりますが、契約者が死亡または高度障害となると、残ったローンは家族が返済する必要があります。
そのため、団信を外す場合は、収入保障保険や定期保険など、他の生命保険で代替する計画を立てておくことが大切です。
団信(団体信用生命保険)の保障内容

ここまでで紹介したように、一般的な団信(団体信用生命保険)の保障内容は、「住宅ローンの契約者が死亡または高度障害状態になった場合に、残りのローン残高が全て完済される」というものです。
さらに近年は、契約者のニーズに応じて保障を拡大できるタイプも増えています。
団信特約の有無や保障範囲、金利上乗せ幅は金融機関によって異なります。また、契約者の年齢・健康状態によっても加入可否が変わります。
加入前に複数の金融機関の条件を比較し、自分にとって必要な保障がどれなのかをしっかりと見極めましょう。
健康状態に不安がある場合は、告知内容が簡素化された団信を用意している金融機関もあります。
団信(団体信用生命保険)と生命保険の違いとは?

続いては、「団信(団体信用生命保険)」と一般的な「生命保険」の違いを説明します。
団信 (団体信用生命保険) |
一般的な生命保険 | |
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目的 |
|
|
契約者 | 金融機関 | 被保険者本人または家族 |
保険金の受取人 | 金融機関 | 被保険者本人または保険金受取人に指定された方 |
保障期間 | 住宅ローン完済まで | 契約時に設定 |
加入条件 |
|
|
保険料 | 住宅ローン金利に含まれるか上乗せ | 保険会社・年齢・プランにより異なる |
団信は、あくまで「住宅ローン返済の確実化」が目的のため、保障の範囲は限定的です。
一方で、一般的な生命保険は住宅ローン以外の生活費、教育費、医療費など幅広い支出に備えられます。
そのため、自身で加入している生命保険の保障範囲をしっかりと把握し、保障の漏れや不足部分がないようにしておきましょう。
団信(団体信用生命保険)と生命保険の保障の重複はNG?

団信(団体信用生命保険)や疾病保障特約は、住宅ローン契約時にしか加入できないものです。
特に、ガンや心筋梗塞、脳卒中などをカバーする疾病保障をセットする場合、すでに加入している生命保険と保障内容が重複することも珍しくありません。
そのため、団信加入は生命保険の内容や保険金額を見直す良いタイミングと言えるでしょう。
ただし、団信の保障はあくまで住宅ローンの返済期間中に限定されるため、完済後の生活費や医療費などをカバーするものではありません。
従来の生命保険を解約していた場合、住宅ローン完済後は、再び生命保険に加入する必要が生じるかもしれませんが、完済後に再加入しようとすると、年齢の上昇や健康状態の変化により保険料が大幅に上がる可能性があります。
また、病気や手術などにより、住宅ローン完済後、保険に加入できなくなるリスクも考慮しておく必要があるでしょう。
完済後の保障ニーズと保険料負担のバランスを事前に検討しておくことが重要です。
住宅ローンは仕事の給料を返済に充てることが一般的なため、病気や入院で働けなくなった場合、返済が滞るリスクが高くなります。
保障が重複すると保険料負担は増えますが、返済期間に手厚い保障があることは家計と家族の安心につながります。
保障の重複は必ずしもNGではなく、むしろ必要な時期に保障が充実する点はメリットとも言えるでしょう。
無駄な支出を避けつつ、全体のバランスを考えて団信と生命保険を上手に併用するなど、自分に合った保障を設計することが重要です。
団信(団体信用生命保険)と生命保険はどっちがおすすめ?

団信(団体信用生命保険)と生命保険のどちらがおすすめかは、個々のライフステージや家計状況、家族構成などによって異なります。
多くの住宅ローンでは団信への加入が必須となるため、基本的には団信をベースに考え、「団信でカバーできないリスクを一般的な生命保険で補う」という併用の仕方が現実的です。
ここでは、ライフステージや抱える不安に応じた保険の選び方を紹介します。
家族に負担をかけたくない方
住宅ローン返済中に契約者が死亡または高度障害状態になった場合、団信に加入していれば残債を完済できます。
家族は住まいを手放す必要がなく、返済負担が生じることもありません。
特に、住宅が家族の生活の拠点である場合や、小さい子どもがいる家庭では、団信加入が大きな安心材料になるでしょう。
持病がある方
持病や既往症がある場合、健康状態を理由に団信への加入が制限されることがあります。
その場合、一般的な生命保険・医療保険を検討してみましょう。
ただし、団信と同様、健康状態で加入が難しい可能性があるため、加入条件が緩やかな団信も選択肢の一つとなります。
貯蓄に不安がある方
貯蓄が十分でない場合、住宅ローン以外の生活費や教育費への備えも必要です。
団信で住宅ローン返済のリスクを抑えつつ、一般的な生命保険や学資保険、医療保険を併用して家計全体を守ることが望ましいでしょう。
例えば、子どもの教育費に備える学資保険や、病気やケガに備える医療保険など、将来のライフイベントやリスクに応じた保障をバランス良く整えることが大切です。
病気やケガで収入が減少した場合でも生活を維持できるよう、収入保障保険を追加する方法も有効です。
団信(団体信用生命保険)の仕組みを理解して生命保険の見直しを!

団信(団体信用生命保険)は、もしものときに備える重要な制度であり、特約を付ければ、ガンや心筋梗塞、脳卒中といった重大疾病や長期の就業不能など、より幅広いリスクにも備えられます。
ただし、団信はあくまで「住宅ローンの返済」を目的とした限定的な保障であり、生活費・教育費・老後資金など、ローン以外の支出をカバーするものではありません。
そのため、一般的な生命保険や医療保険と併用し、家計全体を守る保障設計が必要です。
団信加入のタイミングは、保険の内容を見直す絶好の機会と言えます。
保障内容が重複していないか、逆に不足していないかを確認し、ライフステージと家計に合った保険設計を心がけましょう。
※この記事は2025年8月末時点の情報に基づいています
監修者紹介
監修者 金子 賢司
資格 CFP®資格

プロフィール
東証一部上場企業(現在は東証スタンダード)で10年間サラリーマンを務める中、業務中の交通事故をきっかけに企業の福利厚生に興味を持ち、社会保障の勉強を始める。以降ファイナンシャル・プランナーとして活動し、個人・法人のお金に関する相談、北海道のテレビ番組のコメンテーター、年間約100件のセミナー講師なども務める。趣味はフィットネス。健康とお金、豊かなライフスタイルを実践・発信している。
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