住み替えはタイミングが重要!ベストな時期と決め方、注意点を解説
目次
住み替えを上手に行うには、行動するタイミングを見極めることが重要です。
また、売却と購入の順番によっては、一時的な仮住まい費用や二重ローンの負担が発生する場合があるため、慎重に判断しましょう。
この記事では、住み替えのベストタイミングの考え方や決め方のポイント、注意すべき事項について詳しく解説します。
住み替えを検討するきっかけ
住み替えを検討する理由は、家庭やライフステージによってさまざまです。
国土交通省の「令和5年 住生活総合調査」では、住み替えのきっかけとして、以下のような理由が挙げられています。
- 世帯からの独立(結婚、離婚、単身赴任などを含む):13.2%
- 転勤や退職(定年などを含む):6.9%
- 就職や転職:6.5%
- 自宅を所有するため:5.8%
- 子どもの誕生・成長・進学:4.2%
- 住宅の質を向上させるため:3.8%
- 立ち退き要求、契約期限切れのため:2.6%
- 家族等との同居:2.3%
- 住居費負担の見直し:2.1%
- 世帯員数の減少(子どもの独立や同居人の死別・離別等):1.3%
- 家族等との隣居・近居:1.3%
- 住宅のまわりの環境を向上させるため:1.0%
- 家の相続:1.0%
- 高齢期の住みやすさ:1.0%
- その他:3.2%
出典:国土交通省「令和5年 住生活総合調査」
結婚や単身赴任、転勤などのライフイベントを機に住み替えを検討する方が多い一方で、「住宅の質を向上させるため」「住居費負担を見直すため」といった理由を挙げる方も少なくありません。
また、近年は不動産価格の上昇も、住み替えを後押しする要因の一つです。
特に都市部では地価の上昇が続いており、国土交通省が公表した「全国の地価動向は全用途平均で4年連続上昇~令和7年地価公示~」では、全国平均で4年連続の上昇が確認されています。
そのため、「高く売れるうちに売却して新居を購入したい」「築年数が経過する前に自宅の資産価値を維持したい」と考える方も多いようです。
他にも、子どもの独立や定年退職をきっかけに住み替えを検討したり、住宅ローン完済後、老後を見据えて住宅費の負担を抑えられる住まいを選ぶケースもあります。
住み替えのきっかけは単なる転居だけでなく、資産の見直しや暮らしの再設計など、ライフプラン全体の転機でもあります。
将来を見据えて、どのようなタイミングで住み替えるかを整理しておくことが、後悔しない住まい選びの第一歩となるでしょう。
住み替えを検討する際に整理すべき事項
不動産価格が上昇している昨今、「売るなら今しかない」と感じている方も多いのではないでしょうか。
しかし、実際に住んでいる家が希望通りの価格で売れるのか、理想の新居が見つかるのかは状況次第です。
焦って決断をすると、思わぬコストや生活の不便さを招くこともあるため、慎重な判断が求められます。
まずは以下の4つのポイントを整理して、住み替えに適したタイミングかどうかを見極めましょう。
| ①ライフスタイルの変化 |
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|---|---|
| ②将来設計 |
|
| ③資金面 |
|
| ④タイミング |
|
例えば、将来設計を考えたときに「今の家は駅から遠く、老後の生活に不安がある」と感じる場合は、住み替えが得策となるかもしれません。
反対に、「子どもが小学生で転校させたくない」「今の地域の人間関係を大切にしたい」などの事情がある場合は、住み替えではなく、リフォームや増築を検討するほうが良いかもしれません。
住み替えにおすすめのタイミング
続いては、住み替えを有利に進められるおすすめのタイミングを5つ紹介します。
地価が上昇傾向の時期
地価が上昇している時期は、一般的に住まいを高く売却できるチャンスと言えます。
売却価格が上がれば、新居の購入資金に余裕が生まれ、頭金やリフォーム費用などにも回すことができます。
前述のとおり、全国の地価は用途別平均で2022年から4年連続の上昇を記録しています。
ただし、不動産価格の上昇局面は長期的に続くとは限りません。
金利の上昇や景気の後退により、一転して下落に転じることもあります。
そのため、今後数年のうちに住み替えを検討しているという場合は、地価が高いと思えるときに売却を進めるのがおすすめです。
住宅ローン金利が低い時期
住宅ローン金利が低い時期は、購入コストを抑えられるチャンスです。
金利が低いと返済総額が減るため、同じ予算でもより良い条件の住宅を選ぶことができます。
日本銀行は2024年3月にマイナス金利政策を解除し、同年7月には政策金利を0.25%へ、さらに2025年1月には0.5%へと引き上げました。
これは17年ぶりの利上げであり、金利が上昇基調に転じたことを示しています。
今後も物価上昇や金融政策の動向次第では、さらなる利上げが行われる可能性があります。
金利が上がれば住宅ローンの負担は確実に増えるため、住み替えを予定している場合はタイミングを見極めることが重要です。
住宅ローン控除が終了したとき
住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)は、一定期間にわたり年末のローン残高の0.7%を所得税などから控除できる制度です。
控除期間は条件により10年か13年で、控除が終わるタイミングで住み替えを行えば、新たな住宅ローンで再び特別控除を受けられるため、資産形成に余裕が生まれるでしょう。
ただし、住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)の適用には床面積や所得制限などの条件があります。控除を受けられるかどうかは、事前に確認しましょう。
保有期間が5年経過したとき
家の売却益に課される「譲渡所得税」の税率は、保有期間によって大きく異なり、5年を超えると優遇されます。
| 区分 | 所得税 | 住民税 |
|---|---|---|
| 長期譲渡所得 (所有期間が5年を超える場合) |
15% | 5% |
| 短期譲渡所得 (所有期間が5年以下の場合) |
30% | 9% |
出典:国税庁「土地や建物を売ったとき」
例えば、家の売却益が2,000万円だった場合、5年未満では約780万円の譲渡所得税がかかりますが、5年を超えると約400万円前後に抑えられます。
そのため、住み替え時の費用をできるだけ抑えたい場合は、所有期間が5年を経過してから売却するほうが良いでしょう。
建物は築浅(5~10年以内)がベスト
建物は築年数が浅いほど資産価値が高く、一般的に、築5~10年以内の住宅が「築浅物件」とされ、設備の劣化も少ないため高値で売却しやすいです。
一方で、築20年以上経過すると、建物の評価が大きく下がり、リフォーム費用を差し引かれて査定されることもあります。
そのため、その後住み替えることを前提にマイホームを購入する場合は、物件が築浅であるうちに売却することもポイントとして意識して資産計画を立てるのがおすすめです。
家の住み替えは「売却先行」「購入先行」の決め方も大事
家の住み替えは、「売却」と「購入」どちらを先に行うかによって、資金計画や引越しのタイミング、精神的な余裕が大きく変わります。
住み替えの進め方には、主に以下の2種類があります。
| 売却先行 | 今住んでいる家を売却してから、新しい家を購入する |
|---|---|
| 購入先行 | 先に新しい住まいを購入してから、今の家を売却する |
それぞれのメリット・デメリットを理解して、ライフプランや資金状況に合った方法を選びましょう。
売却先行のメリット・デメリット
売却先行は、今住んでいる家を先に売り、その売却金額を元手に新しい家を購入する方法です。
売却金額が確定してから新居の購入に移るため、資金計画が立てやすいのがメリットと言えるでしょう。
ただし、新居が見つかるまでの間は仮住まいを借りる必要があり、敷金・礼金や引越し費用が2回分発生することになります。
また、仮住まいの期間が長くなると、荷物の一時保管や転校・転勤のスケジュール調整が必要になる点にも注意が必要です。
| メリット | デメリット |
|---|---|
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売却先行がおすすめの人
- 資金計画を重視する人
- ローン残高が大きい人
- 売却価格に妥協したくない人
- 新居の購入を急ぐ必要がない人
購入先行のメリット・デメリット
購入先行は、新しい住まいを先に購入し、引越し後に現在の家を売却する方法です。
引越しまでのスケジュールを自分のペースで決めやすく、ライフイベントや家族の希望に合わせて動きやすいのがメリットです。
また、住んでいた家は空き家の状態で内覧対応ができるため、見栄えが良くなり、スムーズに売却が進む傾向にあります。
一方で、現在の家がすぐに売れない場合は、住宅ローンを二重で支払うリスクがあります。新居を購入する際、金融機関の住宅ローン審査が厳しくなる点にも注意が必要です。
| メリット | デメリット |
|---|---|
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購入先行がおすすめの人
- 自己資金に余裕がある人
- 引越しをスムーズに済ませたい人
- ライフイベントに合わせたタイミングで引越ししたい人
- 理想の住まいへの引越しを優先させたい人
住み替えを考えるときの注意点
住み替えは、売却と購入の両方を進める必要があることから、想定外の出費やスケジュールの遅れが発生しやすいです。
スムーズな住み替えを行うためにも、以下の4つのポイントを意識しましょう。
住宅ローン残債を確認する
まず確認したいのが、住宅ローン残債です。
売却価格よりローン残債が多い「オーバーローン」の場合、売却益だけではローンを完済できません。
その場合、一部を自己資金から返済したり、つなぎ融資を利用して残債を清算したりするなど、対策を検討する必要があるでしょう。
ローンを完済できなければ、抵当権を抹消できないため、売却できなくなってしまいます。
無理のない資金計画を立てる
住み替えには、売却・購入・引越しの3段階で費用が発生します。
不動産会社への仲介手数料や登記費用、住宅ローン事務手数料のほか、売却先行の場合は仮住まいの費用や二度の引越し費用がかかり、費用負担が大きくなるでしょう。
さらに、ハウスクリーニング費用や荷物の一時保管費用など、想定外の出費が発生することもあるため、無理のない資金計画を立てることが重要です。
まずは複数の不動産会社に査定を依頼し、売却額の目安を把握した上で、新居の購入予算を設定しましょう。
不動産会社の実績を確認する
住み替えをスムーズに進めるには、売却と購入をワンストップでサポートしてくれる不動産会社を選ぶことがポイントです。
販売実績や取り扱いエリア、口コミ評価を確認し、スケジュール管理能力や価格交渉力があるかを見極めましょう。
複数社を比較検討し、査定価格や販売期間の目安、担当者の対応力を基準に選ぶのがおすすめです。
余裕を持ったスケジュールを立てる
住み替えは、想定以上に時間がかかることが多いです。
売却活動には平均で3~6カ月、新居の購入や引越しの準備にも数カ月はかかるでしょう。
売却と購入のタイミングがずれると、仮住まいの手配やローン支払いの調整が必要になるため、注意が必要です。
転勤や子どもの進学など、ライフイベントに合わせて住み替えをする場合は、半年前から準備を始めるのが理想的です。
スケジュールに余裕を持たせて計画すると、急なトラブルにも柔軟に対応できるでしょう。
住み替えや売却は計画的に進めよう
マイホームの売却を伴う住み替えでは、「いつ売るか」「いつ買うか」というタイミングの見極めが重要です。
地価や金利、住宅需要などの市場動向によって、売却価格や新居の購入条件は大きく変わります。
また、売却と購入を同時に進める場合は、スケジュール調整や資金繰りが複雑になりやすいため、専門家のサポートを受けながら進めると安心です。
住み替えや売却のタイミングに迷った際には、不動産市場に詳しいプロへ相談してはいかがでしょうか。
三井住友信託銀行では、売却価格の査定から新居購入までを一貫してサポートしており、お客さま一人ひとりのライフプランに合わせた最適な住み替え計画をご提案しています。
住み替えをご検討の方は、ぜひお気軽にご相談ください。
※この記事は2025年10月末時点の情報に基づいています
監修者紹介
監修者 金子 賢司
資格 CFP®資格
プロフィール
東証一部上場企業(現在は東証スタンダード)で10年間サラリーマンを務める中、業務中の交通事故をきっかけに企業の福利厚生に興味を持ち、社会保障の勉強を始める。以降ファイナンシャル・プランナーとして活動し、個人・法人のお金に関する相談、北海道のテレビ番組のコメンテーター、年間約100件のセミナー講師なども務める。趣味はフィットネス。健康とお金、豊かなライフスタイルを実践・発信している。