2025/03/13

人生100年時代では、多様な生き方を背景に住まいに求めるものも時期によって変化することが増えてくることが見込まれます。その変化するニーズに合わせて、自宅のリフォームや住み替えといった住まいの見直しを検討されるケースも少なくないでしょう。そこで今回は、快適な住まいのミライ実現に向けて参考になるような情報をお届けできたらと思います。

実際に住み替えを検討する人はどれくらい?

ライフイベントや周辺環境などを考えて「長期的に住み続けることは可能か?」といった視点で住まいを考えてみるのも一つの方法です。最近では、将来の利便性を求めて商業施設や病院などが集まっている駅の近くに住み替えるケースや、世帯構成の変化を機に住まいをコンパクト化(ダウンサイジング)して住み替えるケースも増えています。

実際にどれくらいの方が住み替えを検討しているのでしょうか?ミライ研の世間1万人を対象にしたアンケート調査では、「今後3年以内に住み替えを検討していますか」という質問に対し、「住み替えを予定している」と回答された方は【図表1】の通りとなりました。20代では約半数、30代で約3割と、若年層ほど住み替えを予定している割合が高いことに加え、40代で約2割、50代・60代で約1割が3年以内に住み替えを考えているという結果になりました。

【図表1】年代別 今後3年以内の住み替え検討状況 【図表1】年代別 今後3年以内の住み替え検討状況のグラフ

*回答者:現在「持ち家(自己所有)」、「賃貸」の居住者

(出所)三井住友トラスト・資産のミライ研究所「住まいと資産形成に関する意識と実態調査」(2024年)よりミライ研作成

また、内閣府の60代以上を対象にした調査によると、環境や年齢、体の変化に伴って、住まいに関する考え方が変化している様子もうかがえます【図表2】。

【図表2】年代別 身体機能が低下した場合の住宅 【図表2】年代別 身体機能が低下した場合の住宅のグラフ

(出所)内閣府「第9回高齢者の生活と意識に関する国際比較調査」より当社作成

*4.0%以下は省略

住み続けるための選択肢としてのリフォーム

今の自宅に長く住み続けたい場合には、自宅をより快適に過ごすために「リフォーム」を検討してみるのも一つかと思われます。実際に住み慣れた住環境を維持しつつ、メンテナンスしながら住むという選択は、住宅価格高騰が続く状況では主力な選択肢となり得るでしょう。住宅リフォーム市場についても、その規模は2023年に7兆円を超え過去最大となっているようです【図表3】。

【図表3】住宅リフォーム市場の規模(2011年~2023年) 【図表3】住宅リフォーム市場の規模(2011年~2023年)のグラフ

(出所)公益財団法人住宅リフォーム・紛争処理支援センター「住宅リフォーム市場」(2019年~2023年)よりミライ研作成

また、住み始めてからリフォームを行うタイミングは一般的に築10年を超えたあたりから多くなっており、築25年以上では全体の半数近くを占めている様子がわかります【図表4】。だいたい築10年から15年で最初の大規模修繕、25年以上経過した辺りで再度修繕を行うといったイメージでしょうか。とはいえ住宅設備によってリフォームの目安とされる期間は異なるため、耐用年数を鑑みて適切な時期にリフォームすることが大切な住まいを、長く快適に維持していくためにも重要となります。

【図表4】リフォーム検討・実施時における住宅の築年数割合 【図表4】リフォーム検討・実施時における住宅の築年数割合のグラフ

(出所)一般社団法人住宅リフォーム推進協議会「住宅リフォームに関する消費者(検討者・実施者)実態調査」(2023年)よりミライ研作成

押さえておきたい住み替え・リフォームのメリットと考慮しておくべきこと

住み替えもリフォームも、そこまで頻繁に行うものでもないため「この先どんな選択をしたらいいのかイマイチわからない」といった部分もあるかと思います。どちらの方が良い・優先される、というものではありませんが住み替え・リフォームそれぞれにも、メリットと考慮しておかないといけない部分がありますので、以下を判断材料に、ご自身が快適な住まいを実現されるために、どんなことを求めていきたいか整理していただけたらと思います。

住み替え・リフォームのメリットと考慮しておくべきこと
住み替え リフォーム
メリット
  • 世帯構成に合わせたサイズに住み替えすることで、住居コストを最適化できる

  • 駅や商業施設の近くに住み替えることで生活利便性が高くなる
    (車が不要になる場合、よりコスト減)

  • (持ち家の場合)住み替え先の物件によっては住宅ローン控除の再適用が可能になる
    (詳細は別途ご確認ください)

  • リフォーム箇所や規模によっては、住み替えに比べて低コストで実現できる

  • 自宅の資産価値の維持・向上につながる

  • 住み慣れた地を離れることなく住み続けることができる

  • 断熱・省エネリフォームなどには各種助成金が利用可能
    (詳細は別途ご確認ください)

考慮しておくべきこと
  • 住み替えに伴う不動産仲介費用や引っ越し費用など、初期コストがかかる

  • 住み慣れた場所を離れる場合は地縁の再構築が必要になる

  • 人気な物件ほど買う・借りるどちらでも高額になりやすい

  • 当初想定していたリフォーム費用より高くなる場合がある*1

  • 自宅の構造や立地の制約上、理想的なリフォームプランが実現できない場合がある

  • リフォーム箇所や規模によっては一時的な仮住まいが必要な場合がある

*1:一般社団法人住宅リフォーム推進協議会「住宅リフォームに関する消費者(検討者・実施者)実態調査」(2023年)によると、リフォーム実施者の約3割が当初の予算を上回ったと回答

まとめ

住み替えやリフォームは、長期・多様化するライフステージにおいて重要な選択肢となります。どちらの選択であっても、それぞれの特色を理解し、ご自身やご家族のライフスタイルの変化や将来の計画に合った最適な方法を選ぶことが大切です。「住み替えを行って新たな住環境を楽しむ」、「リフォームを行って住み慣れた家をさらに快適にする」、どちらの選択であっても豊かな生活を実現するための一歩となることと思います。

これからの住まいのミライを見据えて、ぜひご自身に合った住まいの形を見つけていただけることを応援しています。

ミライ研 三井住友トラスト・資産のミライ研究所

「三井住友トラスト・資産のミライ研究所」は、人生100年時代に適応した資産形成や資産活用に関する調査・研究を中立的な立場で発信することを目的として、2019年に三井住友信託銀行内に設置した組織です。人生100年時代を安心して明るく過ごすために、資産形成・資産活用に関する情報をホームページや書籍を通してお届けしています。

執筆者紹介

桝本 希(ますもと のぞみ)

三井住友トラスト・資産のミライ研究所 研究員

2015年に三井住友信託銀行入社。奈良西大寺支店にて個人のお客さまの資産運用・資産承継に係るコンサルティング業務に従事。2019年よりIT業務推進部にてマーケット事業で利用するシステムの開発・保守業務を担当し、2022年より現職。現職では幅広い世代に対して資産形成、資産活用に関する調査研究並びにホームページやYouTubeを通して情報発信を行っている。

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