2025/08/14

近年、首都圏の住宅価格の高騰、金利上昇が続く中で、住宅ローン利用の変化に関する話題がメディアなどで取り上げられる機会が増えています。特に、共働き世帯によるペアローンの活用や、長期返済による毎月の返済負担軽減といった工夫が注目されています。(詳しくは、金利上昇がもたらす住宅ローン利用の変化−転換局面にある家計の選択−新規ウィンドウで開くをご覧ください。)

しかし、こうした動きは、マンションの価格高騰が報道で大きく取り上げられている首都圏だけの現象なのでしょうか?

ミライ研が実施したアンケート調査では、3大都市圏(首都圏、近畿圏、中京圏)とそれ以外(その他)の4つのエリアに分け、過去5年以内(2020年~2025年)に住宅ローンの借り入れを開始された方を対象に分析しました。

地域別の住宅ローンの利用実態を読み解きながら、これから住宅の購入を検討する方にとってヒントになる部分があれば幸いです。

20代・30代の住宅購入が過半、戸建て選択が7割超!

まず、住宅を購入している世代について見てみると、どの地域でも20代・30代が過半数を占めており、若年層の住宅購入が主流となっていることがわかります。特に近畿圏では20代の購入割合が約4割と、他地域よりも早期に住宅を取得する傾向が見られました(図表1)。

また、住居形態については、首都圏では高騰する分譲マンションの価格が注目され、マンション人気が高いと思われがちですが、実際にはマンションより「戸建て」を選ぶ人が多く、首都圏で約7割、その他の地域では8割以上が戸建てを選択しています(図表2)。

図表1 住宅購入者の年代 住宅購入者の年代のグラフ

5.0%未満はグラフ内表記省略

表内年代は、アンケート回答時の年齢

図表2 購入した住居形態 購入した住居形態のグラフ

5.0%未満はグラフ内表記省略

首都圏ではペアローンの利用が3割!変動金利は3大都市圏で特に人気

住宅ローンの借入形態において注目すべきは、ペアローンの利用率です。首都圏では約3割と最も高い割合でしたが、中京圏やその他の地域でも約2割が利用しており、ペアローンの活用は首都圏だけではなく全国的に広がっていることがわかります(図表3)。

この背景として、共働き世帯の増加や住宅価格の上昇に伴う借入額の増加に対応するために、夫婦で協力してローンを組むという選択が広がっていることが考えられます。

図表3 住宅ローン借入形態 住宅ローン借入形態のグラフ

「わからない、覚えていない」除く

金利形態については、3大都市圏では変動金利選択が7割超の一方で、3大都市圏以外のその他エリアでは約6割と、3大都市圏に比べて変動金利の選択が少ない傾向が見られました(図表4)。

図表4 住宅ローン金利形態 住宅ローン金利形態のグラフ

回答者:住宅ローンを現在利用している方

5.0%未満はグラフ内表記省略

「その他・わからない」除く

どのエリアでも5人に1人は返済比率が世帯年収の4割以上、返済期間は長期化傾向

返済比率※1については、どのエリアも世帯年収の3割以下が主流ですが、およそ5人に1人が世帯年収の4割以上の返済比率となり、返済負担が大きい世帯も少なくないようです(図表5)。

※1返済比率:年収に対する年間の住宅ローン返済額の比率

返済期間については、どのエリアでも「35年以上」が4割超となっており、返済期間の長期化は全国的な傾向となっているようです(図表6)。加えて3大都市圏以外のその他エリアでは「36年以上」の返済期間も1割超と、3大都市圏よりも高い結果となりました。

図表5 住宅ローン返済比率 住宅ローン返済比率のグラフ

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「わからない」除く

図表6 住宅ローン返済期間 住宅ローン返済期間のグラフ

5.0%未満はグラフ内表記省略

各エリアの特徴解説

調査結果を地域別に整理すると、以下のような特徴が見えてきます。

首都圏

住宅価格が高く、ペアローン利用率が約3割と最も高い。36年以上の超長期ローンの利用は意外に少なめ。他エリアと比較して、マンション選択割合が3割と最も高く、変動金利の選択割合も高い。

近畿圏

20代での住宅購入割合が約4割と他エリアよりも早期に住宅を購入する傾向が見られ、ペアローン利用率が最も低い。返済期間は他エリアよりも短く設定する人が多い半面、世帯年収に対する返済比率はやや高くなっている。

中京圏

全エリアで唯一、新築マンションよりも中古マンションの選択率が高い。住宅購入の年代は20代・30代で約7割、ペアローン利用率や返済比率は全国平均に近い水準。

その他地域

三大都市圏と比較して、20代での住宅購入割合は低め。戸建ての割合が高く、固定金利を組み入れている割合が最も高い。36年以上の超長期ローン利用割合が他エリアと比較して高く、返済期間を長く設定して返済負担を抑える傾向がある。

ペアローン利用増加、返済期間の長期化は全国的な傾向

住宅価格の上昇や金利の変動が続く中で、住宅ローンの組成内容はますます複雑になってきています。今回の調査からは、ペアローンの利用増加や返済期間の長期化は首都圏だけではなく全国的な傾向であり、地域に関係なく、生活者が自分たちのライフスタイルや家計に合わせて柔軟に選択している姿が浮かび上がりました。

これから住宅ローンを検討する方にとっても、すでに借り入れをしている方にとっても、今一度「自分たちにとって最適な返済計画とは何か」を見つめ直すことが一層重要になってくるのではないでしょうか。

ミライ研 三井住友トラスト・資産のミライ研究所

「三井住友トラスト・資産のミライ研究所」は、人生100年時代に適応した資産形成や資産活用に関する調査・研究を中立的な立場で発信することを目的として、2019年に三井住友信託銀行内に設置した組織です。人生100年時代を安心して明るく過ごすために、資産形成・資産活用に関する情報をホームページや書籍を通してお届けしています。

執筆者紹介

桝本 希(ますもと のぞみ)

三井住友トラスト・資産のミライ研究所 研究員

2015年に三井住友信託銀行入社。奈良西大寺支店にて個人のお客さまの資産運用・資産承継に係るコンサルティング業務に従事。2019年よりIT業務推進部にてマーケット事業で利用するシステムの開発・保守業務を担当し、2022年より現職。現職では幅広い世代に対して資産形成、資産活用に関する調査研究並びにホームページやYouTubeを通して情報発信を行っている。

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