大ベストセラー『LIFE SHIFT』の著者リンダ・グラットン教授との意見交換会を開催!

左から、三井住友トラスト・ホールディングス取締役執行役社長 高倉 透、ロンドン・ビジネススクール リンダ・グラットン教授、三井住友信託銀行取締役社長 大山 一也

大ベストセラー『LIFE SHIFT』の著者で、「人生100年時代」のキーワードを世界に広めたロンドン・ビジネススクールのリンダ・グラットン教授をお招きし、当社トップとの意見交換会を開催。

人生100年時代における資産形成や長く働き続けるための生涯学習、当社が取り組む認知症に備えた資産管理の重要性等について、多くの示唆や助言をいただきました。

高倉社長(以下、高倉):三井住友トラスト・グループは、『人生100年応援部』を設置し、資産を増やすことやリスク対策だけに留まらない、お客さまの豊かな未来づくりのお手伝いをしています。私は社内でリンダ・グラットン教授の著書を積極的に紹介しており、ビジネス上の親和性に加えて、人生への投資、リ・クリエーション(再創造)、大量消費社会からの脱却など、人としての生き方、考え方に非常に共感を覚えています。今回の意見交換を通じて、人生100年時代の資産形成・資産管理や、企業と人の在り方について、新たな示唆を得られることを楽しみにしております。本日はよろしくお願いいたします。

リンダ・グラットン教授(以下、グラットン):ありがとうございます。このような機会をとても光栄に思います。なんと言っても『人生100年応援部』という部の名称がとても素晴らしい!金融機関は、社会が変革していく準備をするために様々な役割を担っていかなければなりません。

100年を生きるための資産形成

大山社長(以下、大山):我々はライフスタイルに応じたサービスを提供しています。人々のライフスタイルが、『教育を受けて、仕事をして、引退する』という画一的な3ステージ型から、これらが入り組んだ多種多様なマルチステージ型に移行していく中で、金融機関に求められることや課題はなんだとお考えでしょうか?

グラットン:イギリスでは、退職したときに自分の貯蓄額を見て皆が驚きます。「もっとお金があったはずなのに!なんでこんなにお金がないんだろう?」と(笑)。100年生きるとなると、今の貯蓄だけでは足りないということに気づきます。

そこで対話型のプログラムを提供し、どのような年代の人も自分たちの今ある手元資金、貯金額、投資金額などを確認できて実際に年金がどのくらい受け取れるのかということをシミュレーションできるようなモデルを導入しています。

特に、退職の少し手前の50代前半は、人生100年時代のカテゴリーの中でも最も重要な年齢層であり、資産について早くから考えておく必要があります。私たちは資産形成の推進に向けた多くのプロジェクトで試行錯誤しているのですが、イギリス政府に対し、国民が自らの資産に向き合う場を与えてほしいとお願いしています。御社は50代の人々へ何かアプローチされていますか?

高倉:例えば、企業年金の受託先向けに、50代になった従業員を対象とした老後の備えに関する研修やセミナーなどの機会をご提供しています。日本全体で見ると従業員へのセミナー等の情報提供は企業ごとにまちまちで、ご夫婦での出席を奨励しているような企業もあれば、これから導入を検討していくという段階の企業も多くあります。

大山:我々は業務として企業年金にも取り組んでいますので、個人の年金がどれくらいもらえるかなど、年金の知識もご提供しながら、資産に関するアドバイスをしています。人生100年時代に突入し、若い頃からの資産形成の必要性が高まっていますが、住宅購入や退職、終活などの人生の転機にあたっては、資金面での不安も高まりストレスを抱えている方も多くいらっしゃいます。当社は、各種サービスや金融教育を通じて、こうした不安やストレスを取り除き、満たされた状態となっていただく「ファイナンシャル ウェルビーイング」を実現していくことが重要であると訴えています。

グラットン:人生の転機にフォーカスするということは非常に重要です。

長く働き続けるための生涯学習

グラットン:どのようにすればもっと貯蓄を促せるのか、心理学者にも検討してもらったのですが、イギリスでは貯蓄が足りないと気づいてもなお行動に移さない人々も多数おり、「貯蓄をしなさい」と言うよりも、「長く仕事をしてもらう」ことの方が効果的な面があります。長く仕事をし続けるには学び続けること、いわゆる”生涯学習”が大切であり、例えばイギリスでは、50歳になった人のためのワークショップなどを実施し、推奨しています。

人々が長く働き続けるためには、健康やスキル、人間関係といった無形の資産の蓄積が必要ですが、御社はどのようにお考えですか?

大山:当社は従業員に対する考え方のコンセプトを「ヒューマンリソース」から「ヒューマンキャピタル」に変更しました。今までの従業員向けの教育は、当社にとって役に立つスキルを身に付けてもらう発想でしたが、現在は、当社を退職したとしても、しっかりと生きていけるようなスキル・知識を身に付けてもらう視点で、デジタル系のリスキリングなどにも取り組んでいます。また、従業員が入社したタイミングから金融教育を実施して、早期の資産形成を推奨しています。

会社を良くしていかないと良い人材が集まらず、定着もしないと考えており、社会全体にこうした考え方が広まっていけば、皆が主体的にキャリアに向き合えると思っています。

グラットン:お客さまに何かを提供するだけではなく、自分たち自身が最善の方法を実行していかなければなりませんね。ヒューマンキャピタルへの変革は素晴らしいことであり、このマルチステージ型の人生100年を生きていくうえでも有効です。

認知症への備えの重要性

グラットン御社の取り組みの中で特に感銘を受けたのは、受託者責任として認知症に備えた資産管理の選択肢を提供していることです。ヨーロッパでは、金融機関も本当の意味で認知症の影響を捉えていません。御社のように、資産を家族の視点から捉え、認知症になると本人が良い意思決定を行うことが難しくなるということをしっかり家族のリスクとして把握していくことは重要だと感じました。

事務局:我々が手掛けている業務の中には、認知症への備えを促すことや遺言を書く支援などがあり、これらは家族関係の修復や、家族への愛のある言葉の伝達などに繋がり、グラットン教授が大切にされている無形の資産の蓄積としての役割を果たす面もあるのではないかと思っています。

グラットン:認知症のデータを拝見していますと、80歳以上の方々の多くが認知症になる可能性があると読み取れます。社会としてそれに備える必要があると思います。特に御社のような金融機関はこれから重要な役割を担うことになると思います。そういう意味でとても革新的なソリューションだと思います。そしてポイントは、その家族の方々と関わることです。認知症のお客さまがいたら、1人で選択・決断することはできませんので、家族全員がサポートしなければいけません。認知症のお客さまと家族との関係をサポートすることにとても重要性を感じました。

最後に

グラットン:本日は私も皆さまから多くのことを学ばせていただきました。人生100年時代の課題を考え、様々な施策を手掛けていらっしゃることはとても素晴らしいと思います。ご招待いただきまして誠にありがとうございました。

Lynda Gratton (リンダ・グラットン)

  • ロンドン・ビジネススクール経営学教授。「年間最優秀教師」を受賞。担当する「フューチャー・オブ・ワーク」は同校で最も人気のある選択科目の1つ。
  • 世界で最も権威のある経営思想家ランキング「Thinkers50」においてトップ15に選出、日本政府の「人生100年時代構想会議」のアドバイザーに就任。
    ダボス会議を運営する世界経済フォーラム「新しい教育と仕事のアジェンダに関する評議会」の共同議長。
  • 『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)』(アンドリュー・スコットとの共著)など11冊の著書は世界で100万部以上を売り上げ、20カ国語以上に翻訳されている。『16歳からのライフ・シフト』が2023年8月に刊行。

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