「マイホームといえば、新築一戸建て!」と、夢見る人は多いのではないでしょうか。ただ、せっかく自分好みの家を建てても、「こんなにお金がかかるとは思わなかった」と慌てるような事態にはなりたくないものです。快適な家で安心して暮らすためには、無理のない資金計画が大切になります。

この記事では、新築一戸建ての相場や、購入時に必要な諸費用、その後の維持費などについて紹介します。資金計画を立てる時に役立ててください。

「一戸建て」と「マンション」、「新築」と「中古」はどっちがいい?

マイホームと一言で言っても、一戸建てとマンションがあります。また、新築と中古という選択肢もあります。それぞれのメリット・デメリットを踏まえて、自分に合った住宅を検討しましょう。

<一戸建て・マンション、新築・中古の特徴>
メリット デメリット
一戸建て
  • 居住面積が広い物件が多い
  • 専用の庭や駐車場が持てる
  • 注文住宅なら間取り等が自由に決められる
  • 改築時の自由度が高い
  • 郊外にある物件が多い
  • 修繕、管理の計画は自分が主体的に行う必要がある
  • 2階建て以上だと階段がある
マンション
  • 駅に近い物件が多い
  • 共同部分の掃除などは管理会社に委託するため手間がかからない
  • 管理人がいてセキュリティが高い
  • 居住面積が広い物件は少ない
  • 駐輪場や駐車場が有料
  • 規約によってはペットが禁止
  • 一定の管理費、修繕費が必須
新築
  • 新品でキレイ
  • 設備が最新
  • 中古に比べて住宅ローン控除の節税額が大きくなりやすい
  • 中古に比べると維持に必要な修繕費が安い
  • 中古に比べて価格が高い
  • 建築前だと、実物を見ないで購入を決断することになる
中古
  • 新築に比べて価格が安い
  • 物件数が多い
  • 現物を見て購入できる
  • 新築に比べて維持に必要な修繕費が高い

理想のマイホームは、十人十色です。手間の少なさや通勤のしやすさを重視するなら、管理が充実した駅近のマンションが合うかもしれません。一方、落ち着いた住宅街にある広々とした一戸建てで、自分だけの庭や駐車場を自由に使って暮らすという生活も素敵です。また、きれいな最新のキッチンやお風呂が付いた新築は魅力的です。

しかし、理想のマイホームにかかる「お金」のことを考えると、不安がよぎるものです。なかでも新築一戸建ては、中古に比べると金額が高く、買い方次第で総額が大きく変わるため、注意が必要です。そこでここからは、新築一戸建てにかかる費用に絞って解説していきます。

新築一戸建ては「建売住宅」と「注文住宅」の2種類

新築一戸建ては、大きく分けると「建売住宅」と「注文住宅」の2種類に分けられます。

建売住宅とは、不動産業者や建築会社が計画し、あらかじめ土地と建物がセットで販売されている住宅です。完成済みの物件なら、見学に行って実際の状態を確認しながら購入を決断できます。最短1カ月ほどで引き渡しが可能なこともある点がメリットです。

建築途中や施工前の物件であれば、間取りや設備などを要望に合わせて多少変更できることもあります。

一方、注文住宅とは、まず土地を購入するなどして準備し、そこに自分の希望に合わせて建築会社やハウスメーカーに家を建ててもらう住宅のことをいいます。何度も打ち合わせて建築内容を決めていくため、土地選びから始める場合は引き渡しまで1年以上かかることも珍しくありません。建物の質や設備のグレードが高くなる傾向があり、建売住宅に比べて金額は高くなりやすいですが、自分好みの快適なマイホームにできます。

<建売住宅と注文住宅の特徴>
メリット デメリット
建売住宅
  • 注文住宅に比べると相場が安い
  • 購入から住み始めるまでの期間が注文住宅に比べて短い
  • 自由な設計はできない(完成前だと設備内容などを変更できることがある)
注文住宅
  • 好きな建築会社、ハウスメーカーで建てられる
  • 間取りや設備を自分の好みに合わせて自由に選べる
  • 入居まで時間がかかる
  • 建売住宅に比べると設備の質などが高い分、価格も高い傾向になる

新築一戸建ての費用の決まり方

新築一戸建ての費用は、土地代と建物代で構成されています。土地代は、エリアや建物が立てやすい形の土地か、土地面積がどれだけ広いかといった要素で価格が決まります。建物代は、建物の広さはどうか、ハウスメーカーの建築費の坪単価、キッチンやお風呂などの設備のグレード、庭(外構)の豪華さなどで価格が大きく変わります。

<価格に大きく影響する要因>
土地 エリア、広さ(土地面積)、土地の形
建物 広さ(建物面積)、ハウスメーカー(建築費の坪単価)、設備のグレード、外構

坪単価=1坪・約3.3㎡当たりの価格

そのため、それぞれの要素が良いものになるほど高額になります。反対に、妥協できる箇所が多ければ、手頃な価格で新築一戸建てを手に入れることができます。

建売住宅と注文住宅の相場は?

建売住宅の相場

「2021年度フラット35利用者調査」データによると、建売住宅の平均的な購入価額は次の通りです。なお、建物面積の平均である約100㎡は、3LDKの2階建て住宅など、家族で住めるくらいの広さとなります。

<建売住宅の所要資金>
エリア 所要資金(=購入価額)
全国 3,605万円
首都圏 4,133万円
近畿圏 3,578万円
東海圏 3,139万円
その他地域 2,905万円
(参考)住宅面積の全国平均 101.8㎡

資料:住宅金融支援機構「2021年度フラット35利用者調査」より作成

全国平均だと「3,605万円」ですが、地域により大きく差があります。みんなが買っている建売住宅の相場は、約3,000万円~4,000万円台前半と捉えることができます。ただ、実際には立地が良く資産性が高い物件、建物が高品質の物件、ある程度広さが確保された物件等は平均を上回ることが想定されます。長所がはっきりしている物件は、平均を超えていても不思議ではないということです。

注文住宅の相場

「2021年度フラット35利用者調査」データによると、土地付き注文住宅の平均的な購入価額は次の通りです。

<土地付注文住宅の所要資金>
エリア 所要資金(=購入価額)
全国 4,455万円
首都圏 5,133万円
近畿圏 4,658万円
東海圏 4,379万円
その他地域 3,980万円
(参考)住宅面積の全国平均 111.4㎡

予定建設費と土地取得費を合計した金額

資料:住宅金融支援機構「2021年度フラット35利用者調査」より作成

みんなが建てている注文住宅(土地含む)の相場は、約4,000万円~5,000万円台前半です。建売住宅と比べると、1,000万円近く高くなる傾向があります。もちろん、注文住宅についても好立地や高い住宅性能等の長所があれば、平均を超える価格になることはめずらしくありません。

住宅価格の相場は上昇傾向にある

先述した調査内容は2021年のデータです。近年、建築材料費の価格上昇などがあり、住宅価格も高くなっている傾向があるので、過去のデータよりも実際の物件価格が高額になる可能性は十分にあります。

また、2024年以降に入居する場合、節税効果の大きい住宅ローン控除を受けるためには、基本的には一定の省エネ水準を満たす住宅である必要があります。また、2025年4月以降はすべての新築住宅に省エネ基準を満たす義務が発生します。

一定の省エネ水準を満たすためには建築資材等も高めになるため、これから新築一戸建ての購入をする場合は、相場よりも高い費用がかかってもおかしくないと考えておきましょう。

新築一戸建てにかかる諸費用の相場は?

新築一戸建てを購入するときは、土地や建物の価格以外にも、さまざまな費用がかかります。タイミングごとに必要となる費用の種類と相場を紹介します。

<新築一戸建てにかかる諸費用や維持費の種類>
発生タイミング 発生する費用の種類
物件購入の申込時 申込金、手付金
引き渡し時 印紙税、登記費用、住宅ローンの諸費用、火災保険料・地震保険料、仲介手数料
引き渡し後 不動産取得税、引っ越し費用、家具・家電購入費
住宅保有にかかる維持費 固定資産税・都市計画税、火災保険料・地震保険料、修繕費

申し込み~引き渡し後までの費用を合計すると、物件価格の3~10%前後になると言われています。例えば4,000万円の新築一戸建てなら、120万円~400万円ほどが諸費用の目安となります。

さらに購入後も、住宅を保有している限り、維持費がかかります。たとえば、4000万円相当の木造住宅の維持費の合計額は、購入から30年間で、固定資産税・都市計画税、火災保険料・地震保険料、修繕費用の積立などを合わせると約1,000万円前後(月額換算にすると毎月3万円前後)になることもあります。

もちろん、これらの維持費は、地域及び住宅の広さ・性能・価格によって差がありますので、不動産業者や建築会社に目安を確認しておくと良いでしょう。

住宅は購入した後も多額のお金がかかるので、購入前に資金計画をしっかり考えておくことが大切です。具体的にどのような費用が発生するのか、1つ1つ解説します。

物件購入の申込時にかかる費用

申込金

建売住宅の購入を申し込むときは、「申込金」「申込証拠金」「予約金」などの名前で支払いが発生することがあります。相場は、高くても10万円までが多いようです。申込金が必要ない物件もあります。

手付金

土地や建物の売買契約、または建築請負契約を結ぶ際には、「手付金」が必要です。手付金は、支払い代金の一部を先払いするイメージで、最終的には物件の購入費や建築費に充てられます。ただし、もし途中で買主の都合で契約をキャンセルする場合には戻ってきません。

建売住宅の場合、売主に対して売買契約を結ぶ際に支払います。手付金の相場は、「物件価格の5~10%」です。例えば4,000万円の新築一戸建てなら、200万円~400万円ほどです。

申込時にかかる費用は、基本的には住宅ローンの融資実行の前になるため、現金で準備をしなければいけません。そのため、マイホームを自己資金ゼロで、全額住宅ローンで買おうと考えている人や、注文住宅で土地購入時と建物建築時など2回に分けて借り入れが必要になる人などは、注意が必要です。「住宅ローンを分割して借り入れることができるか」「つなぎ融資が可能か」といった点を確認し、対応してくれる金融機関を選びましょう。

引き渡し時にかかる費用

印紙税

印紙税とは、契約書等を作成したときに発生する税金です。不動産の売買や住宅の建築を依頼する契約、住宅ローンを借りる契約などは、印紙税が発生します。

印紙税は、取引価格が高くなるほど高くなる仕組みになっています。例えば、不動産売買契約書は現在(2023年)は税率が軽減されていますが、記載された金額が1,000万円超~1億円以下であれば、契約書ごとに1万円~3万円が目安です。

住宅ローンの契約書では、借入額が1,000万円超5,000万円以下の場合は2万円、5,000万円超1億円以下の場合は6万円です。

登記費用(登録免許税・司法書士への報酬)

新築一戸建てを手に入れると、不動産を所有していることを登記簿に登録する必要があります。その際、登録免許税や司法書士への報酬といった登記費用がかかります。

登録免許税は、固定資産税評価額に一定の税率をかけて求められます。あわせて、登記を代行してもらう司法書士などへ手数料を支払います。

金額は物件の資産価値や登記の内容によって大きく異なるのであくまでも目安となりますが、新築一戸建ての場合は合計で30万円~80万円ほどが目安となります。

住宅ローンの諸費用

住宅ローンの借り入れには、「保証料」や「保証取扱手数料」、「融資手数料」がかかります。住宅ローン利用者が保証会社に保証を委託するための費用が「保証料」であり、その事務手数料が「保証取扱手数料」です。これらを保証会社に支払う代わりに、金融機関に支払うのが「融資手数料」です。

金額は保証会社・金融機関によって異なりますが、保証料型、融資手数料型両方を取り扱う金融機関と、どちらか一方のみを取り扱う金融機関とがあります。どちらが良いかは借入期間や返済プランによりますので、悩む場合は金融機関に相談してみるのもよいでしょう。

<住宅ローンの諸費用>
保証料 一括支払型の場合:借入金額、借入期間に応じた金額
金利上乗せ型の場合;金利に年0.2%上乗せなど
融資手数料 借入金額の2.2%(税込)など

火災保険料・地震保険料

住宅ローンを借りて新築一戸建てを購入する場合、基本的には火災保険の加入が必須となります。地震保険については、加入するかどうかを任意で選ぶことができます。保険料は5年分を一括で支払うことで割安になるため、購入時に5年分支払う人が多いです。

火災保険と地震保険の保険料は、住宅の広さや構造、エリアによって異なるため一概には言えません。目安としては、火災保険のみに加入する場合は5年間分で10万円~20万円。火災保険と地震保険をセットで加入した場合は5年間分で35万円~45万円ほどをイメージしておきましょう。

仲介手数料

注文住宅で土地を購入したときや、建売住宅を購入したときには、売買を仲介してくれた不動産業者に「仲介手数料」を支払います。仲介手数料は取引額に応じて上限額が設けられています。

取引額が400万円超であれば、仲介手数料の上限額は「取引額の3%+6万円+消費税」です。例えば、4,000万円の建売住宅の場合、仲介手数料の目安は約140万円となります。

引き渡し後にかかる一時的な費用

不動産取得税

土地や住宅を手に入れた人は、不動産取得税を都道府県に支払う必要があります。不動産を取得した日から半年〜1年の時期に納税通知書が届いたタイミングで、コンビニやクレジットカードなどで支払います。

不動産取得税の税率は、基本的には「土地・建物の課税標準額 × 4%」です。もし課税標準額が合計3,000万円であれば、120万円です。

ただし、マイホームを取得した場合の様々な軽減措置を適用できれば、かなり軽減できます。不動産を取得したら、不動産業者の担当者や都道府県税事務所に確認しながら必要書類を提出しましょう。

引っ越し費用、家具・家電購入費

引き渡しには、引っ越し費用がかかります。移動距離や家財の量はもちろん、時期によっても大きく金額が変わります。同じ市内などの近距離を家族で引っ越しする場合は、おおよそ10万円前後が目安です。3月末や年末年始などの繁忙期や、200キロを超える遠距離の引っ越しなどだと、プラスで5万円~20万円ほどかかると見込んでおきましょう。

また、新しい家に合わせて、カーテンや照明器具、エアコンなどの家具・家電の購入も必要となります。合計で20万円~50万円くらいを見込んでおくと良いでしょう。

住宅保有にかかる維持費

固定資産税・都市計画税

固定資産税は、土地や建物を所有している人に課される税金です。都市計画税は、原則として市街化区域内に土地や建物がある場合にかかります。

<固定資産税・都市計画税の計算式>
種類 計算式
固定資産税 固定資産税評価額×1.4%
都市計画税 固定資産税評価額×0.3%

税率は地域によって異なることがあります。

全国相場である4,000万円前後の一戸建て住宅の場合、10万円~15万円くらいが目安となります。毎年4月〜6月頃に納税通知書が届きます。ただし、現在(2023年)だと住宅用地や新築住宅は特例措置があるため、購入から3年~5年ほどは安くなることが多いです。

火災保険料・地震保険料

火災保険料と地震保険料は、住宅を保有し続ける限り支払いが発生します。保険期間が5年間の契約を一括払いで支払う場合は、購入時と同額程度(10万円~45万円前後)が5年に一度発生することになります。

修繕費

買ったときはピカピカな新築住宅でも、5年や10年、20年と経つうちに、修繕が必要となってきます。一戸建ての修繕費は、30年間で400万円~800万円が目安と言われています。1年平均にすると約13万円~27万円です。

定期的なメンテナンスは、快適な住まいを維持できるだけでなく、家の資産価値を保つメリットもあります。必要になってからお金を準備するのでは落ち着いて修繕ができませんので、住宅購入後は毎月1~2万円の修繕費を積み立てる計画を立てた上で、住宅を購入しましょう。

長く付き合える不動産業者や金融機関を選ぼう

マイホーム探しの際は、地元や大手の不動産業者、ハウスメーカーなど、さまざまな不動産業者と出会うことになります。大きな買い物ですから、信頼できる業者を選ぶことが大切です。例えば、購入時から具体的に長期的なメンテナンスを視野にいれた提案をしてくれる業者もあります。このように、買った後の維持や修繕についても相談に応じてくれる業者は頼りになるでしょう。

人生は長く、今回購入する家に必ずしも住み続けるとは限りません。住み替えの可能性を考えるなら、マイホームの資産価値が維持(あるいは向上)しているかどうかは重要なポイントになります。

今後、活性化が期待されている中古住宅市場で高値で売却できるような物件であれば、購入前後にかかる費用も無駄にはなりません。

住宅購入は人生の一大イベント。考えることや決めるべきことも多いです。長く付き合っていける不動産業者や金融機関を見つけて、安心で充実したマイホーム生活を手に入れましょう。

執筆者紹介

張替 愛(はりかえ あい)

ファイナンシャル・プランナー(AFP®)

20代前半から資産形成に取り組んできた経験を活かし、保険や投資商品を販売せずに年間100件近くマネー相談を行う。コラムや書籍の執筆・監修、取材、講座などの実績は計300件以上。専門分野はライフプラン設計(教育費・住宅購入・老後資金)、資産運用、保険、海外赴任のある家庭の資産形成、ママのキャリアなど。2児の母でもある。

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