生成AIに市場予想は可能か?

市場動向に関するコメントについて、「過去の振り返り」と「今後の見通し」、何れの作成がより難しいと思われますか?「過去=事実だから、特段のスキルや経験が無くても振り返りは可能!」とか、「今後=将来の予測は難しいはず。プロでないと見通しの作成は無理?」といった印象も持たれる方が多そうです。

「過去の振り返り」=事実のまとめと言っても、そう簡単ではありません。1週間といった短期間であれば、「上がったか、下がったか」が重要なポイントとなります。しかし、1カ月や四半期の振り返りとなると、単なる上げ下げだけでは、資産運用に関する情報としては不十分です。例えば四半期の動向について、「●月は・・・で上昇しましたが、▲月は・・・と下落しました。一方、■月は・・・で再び上昇に転じました」といったコメントでは、「結局のところ、どっちなの?」といった疑問符ばかりが頭に浮かびそうです。振り返りの期間が長くなるほど、上げ下げの背景にある景気や物価、政策や需給動向などの変化を整理、分析し、「今期は、○○○○だった!」といった総括が重要です。

一方で「見通し」はどうでしょうか?ただ単に「上がると思います」、「下がると思います」では見通しとは言えません。そもそも将来のことは何人にも正確に言い当てることは不可能ですが、今後起こりそうなことを思い浮かべるとすれば、まずは足元までの状況を正確に把握することが前提となることに異論は少ないでしょう。こう考えると、優れた「見通し」には、優れた「振り返り」が存在するということかもしれません。

では、生成AIに市場の振り返りや見通しの作成は可能でしょうか?筆者はAIの専門家ではなく、あくまで印象ですが、「振り返り」の作成には大いに役立ちそうです。例えば過去1年間の振り返りとなると、人間では3カ月前、半年前の記憶が怪しくなるところ、AIは市場動向の流れを時系列に簡潔かつ正確に流暢な文章でまとめてくれそうです。これをベースに人間が市場動向の背後にある「変化」などを深掘りすることで時間を節約しつつ、優れた「振り返り」を作成できそうです。

一方、「見通し」の作成はどうでしょうか?最新型の生成AIは話し言葉で質問や指示を入力するだけで、自然な文章で答えてくれる点に最大の特徴があります。この仕組みを単純化して解説すると、過去の膨大なデータを基として、質問に対し最もフィットする(ある意味、もっともらしく聞こえる?)文章を探し出し、再構成して回答するといったものです。これは上記で説明した運用担当者が過去を振り返りつつ、今後の見通しを考えることと基本的には同じプロセスと言えそうです。無論、株式など先行きの金融市場の予想が難しいのは、必ずしも過去のパターンや経験則どおりにはならないと言えるからです。そのため、AIの予想が今後、人間よりも正しく先行きを予想できるかどうか、現時点では何とも言えないと思われます。ただし、一般的な予想は運用会社のレポートを待たずとも、個人投資家が生成AIを用いて簡単に入手できる日は意外と早く来るかもしれません。

  • 生成AI:Generative AI。「Generative」とは「生み出せる、作り出せる」といった意味であり、学習した大量のデータを基に人間が行うような文章、画像の作成が可能なAI(人工知能)を指す。

<作成:三井住友トラスト・アセットマネジメント>

ページ最上部へ戻る