米新政権が年明けスタート!

11月の米国大統領選挙は事前の世論調査では「歴史的な大接戦」とされていましたが、実際には共和党のトランプ前大統領が7つの激戦州全てで勝利、総得票数でも民主党のハリス氏を上回る「完勝」となりました。本選挙は「勝ちに不思議の勝ちあり。負けに不思議の負けなし」との格言を地で行く結果と言えそうです。
4つの刑事裁判を抱える上、人種差別的な失言などの不適切な言動を繰り返すトランプ氏の勝利は「不思議」にみえますが、米国民の最大の関心がバイデン政権下での歴史的な物価高や不法移民の急増にある中、現副大統領であるハリス氏への支持が無党派層を中心に広がらなかったことは「当然」との印象があります。ハリス氏は副大統領として目立った実績がない上、政策面で具体的な説明は乏しく、トランプ氏の「対策があるというなら、いますぐ実行するべきでは?」との批判を打ち返せませんでした。
年明け早々には第2次トランプ政権がスタートします。議会の上下院で共和党が多数を確保している上、現状の共和党は伝統的な保守・穏健派が衰退し、ほぼ「トランプ党」と化しています。トランプ氏は大統領令などの行政権力を自由に行使できる上、同氏が望む法案の実現性も高いとみられます。
2025年の金融市場は、トランプ政権の政策動向が最大の注目ポイントとなりそうです。トランプ氏が掲げる所得税減税の延長、法人税の引き下げなどが景気、業績を押し上げ、各種の規制緩和が企業活動や投資、M&Aを活発化させることは、株式市場にとって明らかにプラスです。一方、関税の引き上げや移民規制の強化による労働不足はインフレ加速につながるほか、減税等による財政赤字の更なる拡大が懸念されます。長期金利の上昇やFRB(米連邦準備制度理事会)の利下げ方針転換を招くようだと株価の重荷となりそうです。
同氏の政策が株高、金利高につながるとの見方をされる方が多いですが、この2つが両立し続けることは困難であり、政策の実現性(どこまで本気でやるのか)やタイミングが鍵となりそうです。問題は同氏が好む「ディール」(取引)とは相手を見ながら、その都度判断で行うものであり、事前の政策の予見が難しいことです。予見可能性が低いということは一般に変動率(ボラティリティ)の上昇につながりやすく、株価や金利の振れ幅が大きくなります。特に為替市場については、同氏がドル高・ドル安何れを志向しているか不明瞭な上、政策がインフレ刺激色が強い一方で「利下げを好む」傾向がありそうなことから、一段と方向性をつかみにくいと思われます。
以上のことから、2025年は、政治・経済両面で「米国一人勝ち」の状況が続くとみられる中で、米国株式は引き続き上値余地をためす展開が期待でき、大幅な米ドル安は考えにくそうです。一方、値動きや物色動向が目まぐるしく変わる場面が増えるかもしれません。上昇期待は高いが振れ幅が大きいということであれば、引き続き、時間分散投資は有効となりそうです。また、市場動向に応じた機動的な対応を目指す「アクティブ・ファンド」の出番が来たといった強気の見方も出るかもしれません。
<作成:三井住友トラスト・アセットマネジメント>