先行きの「市場予想」に意味はあるのか?

今年度も残りわずかとなりました。この時期になると、「来年度末の株価水準、為替水準はどうなる?」といった記事が紙面やネットを賑わせますが、どのように感じていらっしゃいますか?
「なぜ、山にのぼるのか。そこに山があるから!」とは、英国の伝説的登山家、ジョージ・マロリー※の名言です。運用会社は「先行きの市場の行方」という『高い山』を前に、「挑戦意欲を搔き立てられ」、「ワクワクしながら」予想を行っているわけでは必ずしもありません。ただ、「先行き予想を聞いてみたい」との顧客ニーズは常に存在しています。市場は各種材料を巡る事前の市場参加者の予想(期待値)と結果の乖離で変動することがあるため、一般的な予想をあらかじめ整理しておくことが重要だと考えられているのでしょう。
株価の予想でまず思い浮かぶのは、「企業業績」と「市場金利」ですが、内外の景気やインフレ、金融政策や財政政策の動向に加え、昨今では米トランプ政権の政策、ウクライナや中東などの地政学リスク、米中の政治対立なども影響します。また、株式市場は単独で動くわけではなく、債券や為替、商品など他の市場とも相互に影響し合います。
※1924年、3度目のエベレスト登頂に挑んだが行方不明に。75年後の1999年に遺体が発見された。同氏が初の登頂成功者か否か、未だ議論がある模様
では、市場予想はどのように見ておくべきなのでしょうか? 各社の予想結果(1年後の株価など)だけに目を奪われるのではなく、その背景にある景気や政策などの見方や、重視しているポイントなどを見極めることに意味があります。また、市場は往々にして予想外の事態が発生すると大きく変動します。そうした際に狼狽しないよう、市場コンセンサス(各社の予想平均)から外れれば、どんな事態が生じる可能性が高いのか、事前に腹積もりをしておくと良いかもしれません。
さて、2025年度はどうなりそうでしょうか? やはり米トランプ新政権の「一挙手一投足」が「注目イベント」といっても過言ではないでしょう。トランプ氏が掲げる大規模減税の延長や規制緩和は、景気や業績を下支えし、企業活動や投資を活発化させるともみられ、株式市場にとって明らかにプラスです。一方、財政赤字の拡大に加え、関税引き上げや移民規制強化によるインフレ再加速が懸念されます。長期金利の上昇やFRB(米連邦準備制度理事会)の利下げ方針の転換を招くようだと株価の重荷となりそうです。問題は、「ディール(取引)」を好む同氏の政策判断は、事前予想が難しいことです。予見可能性の低さは一般に変動率の上昇につながります。株式市場の変動性が高まる中、いよいよインデックスを上回る収益を目指す好機と判断してアクティブファンドの出番とみるのか、トランプ政権=市場にフレンドリーとみて押し目買い(一時的な相場下落局面を捉えて買いを入れる投資スタンス)に徹するのか、判断は分かれそうです。
<作成:三井住友トラスト・アセットマネジメント>