ビットコイン人気を左右する米政府の準備金構想

仮想通貨への注目が更に高まっています。代表的存在であるビットコインは、昨年11月中旬頃から騰勢を強めました。背景にあったのは、トランプ米政権のもとで、ビットコインが米国政府の準備金※に組み入れられるとの期待です。トランプ氏は選挙期間中から「米国をビットコイン超大国にする」と繰り返し述べ、就任後すぐに仮想通貨を推進する大統領令に署名しました。政府がビットコインを準備金に組み入れることが資産としてのお墨付きとなり、需要が増すと期待されたわけです。
民間レベルでみると、既に一般的な投資対象になりつつあるようです。米国ではビットコインなどの暗号資産を組み込んだETF(上場投資信託)を解禁する動きが出てきています。今後、ビットコインを運用対象とみていく際に、何がポイントになるでしょうか。
【図表】は、ビットコイン価格と米マネタリーベース (米国当局が発行するマネーの量)の推移です。ドルの供給量が増える(減る)とドルの減価(増価)が連想されるため、ビットコイン価格が上昇(低下)する傾向にあることがわかります。人気化の底流には、既存の法定通貨の信認を巡る先行き不安があると思われます。米国をはじめとした各国の中央銀行は、新型コロナ禍(2020年頃)に大量供給したマネーを、コロナ前の水準まで戻す必要はないとの方針を示しています。こうした流れはビットコインにとって追い風と言えるでしょう。
もっとも、準備金構想を手掛かりにしたビットコイン人気には先行き不透明感があります。3月前半には、トランプ氏が署名した大統領令がビットコインの具体的な購入策を欠いているとの理由から、失望売りが出る場面がありました。また、州レベルではビットコインを準備金として保有する法案が提出されていますが、2月に複数の州で否決されました。ビットコインには資産などの裏付けがないうえ、日々の値動きが不安定で投機性も高く、長期投資や公的機関の保有には適さないとの判断があったようです。そもそもトランプ氏自身も、2021年に「ビットコインはドルへの詐欺」と述べるなど、かつては推進派ではありませんでした。準備金構想の背景には、①仮想通貨への規制を強めたバイデン政権との違いを示すパフォーマンス、②業界からの巨額献金、があるとの見方が多いようです。
トランプ氏が「なぜ、いまビットコインなのか?」を説得的に語れるかが、今後の仮想通貨の成長や準備金構想の成否を左右する1つのポイントでしょう。そのようにして、ビットコインが現在抱えている不安定性や投機性といった問題が解消され、資産価値が安定的に高まっていくようであれば、分散投資の中の一資産として考えるときが来るかもしれません。
※準備金は、金融機関が中央銀行に預けるお金で、主に決済や支払い準備のために使われます。また、マネタリーベースの一部であり、金融機関が持つ流動性を確保する役割を果たします。

(2018年1月末~2025年2月末、月次)
(出所)Bloombergのデータを基に三井住友トラスト・アセットマネジメント作成
<作成:三井住友トラスト・アセットマネジメント>