金融庁が2月13日に公表した「NISA口座の利用状況調査(2024年12月末時点(速報値))」によると、2024年の新NISA(少額投資非課税制度、以下NISA)での買付額は成長投資枠が12兆4,627億円、つみたて投資枠が4兆9,857億円(図1)でした。

約17兆円を超える買付のあったNISAですが、国内株式市場にどの程度影響したのでしょうか。1月公表の日本証券業協会「NISA口座の開設・利用状況(証券会社10社、2024年12月末時点)」では、NISAでの2024年中の国内株式の買付割合は38%でした。また、同協会が2月に公表したアンケート「新NISA開始1年後の利用動向に関する調査結果」を見ると、1銘柄も売却していない人は成長投資枠で75.3%、つみたて投資枠では83.2%でした。これらの数字を用いて試算すると、NISAで国内株式が約5兆円買い越されている可能性が示されました。

国内株式にはETF(上場投資信託)、REIT(不動産投資信託)を含む

(出所)日本証券業協会「NISA口座の開設・利用状況(証券会社10社・2024年12月末時点)」を基に三井住友トラスト・アセットマネジメント作成

(2024年 年間買付額内訳)のグラフ

(2024年 年間買付額内訳)

(出所)金融庁「NISA口座の利用状況調査(令和6年12月末時点)」を基に三井住友トラスト・アセットマネジメント作成

(2024年 年間新規買付額、速報値)のグラフ

(2024年 年間新規買付額、速報値)

【図1 NISAにおける買付動向】

約5兆円とはどの程度の規模なのでしょうか。日本取引所グループの投資部門別株式売買状況(2024年)の委託内訳では、個人が約2兆円、証券会社が約0.2兆円の売り越しとなっています(図2)。これらの売り越し額と比較しても約5兆円の買い越しは、2024年の国内株式市場の支えになっていたと言えそうです。

【図2 2024年中の投資部門別株式売買状況】のグラフ 【図2 2024年中の投資部門別株式売買状況】

(出所)JPX(日本取引所グループ)「投資部門別売買状況(2024年)」を基に三井住友トラスト・アセットマネジメント作成

今後もNISAを利用した投資は増加しそうです。日本証券業協会の前出の調査でも、2024年1~12月のNISA口座の開設件数は約343万口座の増加でした。また、新旧併せたNISAでの累計買付額は2025年2月末時点で56.5兆円を突破し、政府の目標である「2027年までに56兆円」という目標を前倒しで達成しました。株式による資産形成は国民生活に投資が着実に根付いてきており、国内株式市場を支える強固な材料になることが期待されます。

3月末以降は、トランプ米大統領の関税政策を巡り、金融市場は一段と値動きの荒い展開となっています。今回のような株価が急落する局面では、毎月一定の金額で購入する投資手法(ドルコスト平均法)を使うことで、平均購入単価を抑えることができるとされています。DCやNISAのつみたて投資枠の利用や、資産の分散投資によるリスクの軽減なども安定的な資産運用を実現するうえで選択肢となりそうです。

ドルコスト平均法: 価格が変動する金融商品を定期的に一定の金額で購入する投資手法。価格が低下した場面では多く、価格が上昇した場面では少なく購入するため平均購入単価を抑え、価格変動リスクを軽減、資産を増やす効果が期待できる。

<作成:三井住友トラスト・アセットマネジメント>

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